学習障害(LD)の子と向き合うシリーズ(全7本)も、今回が最終回です。これまで、特徴、ディスレクシア、合理的配慮、二次障害、家庭学習、受験と見てきましたが、その根底に共通して流れているのは「理解」というテーマです。
たとえば、
- 理解ある大人との出会いが、子どもの自己肯定感を守ることがある
- 小さな成功を認める仕組みが、自信を育てることがある
- 理解されない時間が続くと、心が少しずつ消耗していく
- 学習障害への理解は、学び方だけでなく、子どもの心そのものを守るものである
といった視点です。
学習障害への支援の最終的な目的は、「できること」を増やすことだけでなく、子どもが自分自身を肯定的に感じられるようにすることです。
この記事では、学習障害への理解が子どもの自己肯定感を守るという視点から、当協会に寄せられた保護者の方々の体験談をもとに、シリーズを締めくくっていきます。
>うちの子、他の子と違う?と悩む保護者さんへ|育児書通りにいかないときの発達のとらえ方と「線の視点」
目次
本記事で紹介している情報について
本記事は、自己肯定感に関する一般的な知識を中心に、当協会が収集した体験談(意見交換会アンケート)の中から、学習障害と自己肯定感に関する記述を交えて構成しています。
| 項目 | 内容 |
| 情報の性質 | 自己肯定感に関する一般的な知識+当協会体験談アンケートより抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 参照した体験談 | 意見交換会アンケート(721名)の中から、学習障害と自己肯定感に関する記述を抽出 |
| 注意点 | 子どもの特性や状況には個人差があり、すべての子どもに同じ結果が見られるわけではありません |
理解ある大人との出会いが、自己肯定感を守る
学習障害やグレーゾーンの特性があっても、周囲に理解ある大人がいることで、自己肯定感を大きく損なわずに過ごせた例があります。
実際の体験談にも、そうした出会いに関する声が見られました。
現在大学生の息子が最近、脳波などの検査を受けた結果、発達障がいのグレーゾーンだという事が分かりました。幸い息子は、社会で生活していく上での生きにくさを感じながらも、田舎に住んでいたため幼少期を少人数学級で過ごすことができ、そこで個性に合わせたご指導をして下さる先生方に巡り会えたお陰で、自己肯定感を著しく低下させることなく今まで過ごすことができています。
この声からは、診断がつく前の段階であっても、個性に合わせた関わりをしてくれる先生との出会いが、子どもの自己肯定感を守る大きな力になっていたことが分かります。
- 診断の有無にかかわらず、理解ある関わりが自己肯定感を支える
- 少人数の環境が、個々に合わせた指導を可能にすることがある
- 「巡り会えた」という言葉には、出会いの偶然性への感謝が込められている
- こうした出会いを増やすことが、社会全体の課題でもある
理解ある大人との出会いは、子どもの自己肯定感を守る、何よりの支援になります。
小さな成功を認める仕組みが、自信を育てる
日々の小さな頑張りを認め、可視化する仕組みが、子どもの自信を育てることがあります。
実際の体験談にも、そうした工夫の効果に関する声が見られました。
娘が小さい頃から、育児に関連した講座やセミナーなどに参加する機会があれば、参加していました。その中の講座で教えて頂いた「頑張りカード」を使った支援がとても娘には効果的でした。この頑張りカードというのは、勉強やピアノの練習、運動など、何か子供に頑張って欲しい事を1回子供が頑張るごとに1ポイントずつカードに判子を押し、20ポイント貯めたら、ご褒美の報酬を与えるというものです。
この声からは、結果だけでなく、頑張った過程そのものを可視化して認める仕組みが、子どもにとって分かりやすい自信の積み重ねになっていたことが分かります。
- 「できたかどうか」の結果だけでなく、「頑張ったこと」を認める視点が大切
- ポイント制など、頑張りを可視化する仕組みが、達成感を分かりやすくする
- 小さな成功体験の積み重ねが、大きな自信へとつながっていく
- 家庭でも、特別な道具がなくても取り入れられる工夫の一つである
小さな頑張りを見逃さず認めていく仕組みは、学習障害のある子どもにとって、自信を育てる大切な土台になります。
>SST(ソーシャルスキルトレーニング)はどんな子に役立つ?|支援者学習シリーズ
理解されない時間が続くと、心が消耗していく
一方で、理解されない状況が長く続くことは、子どもだけでなく保護者の心も消耗させていきます。
実際の体験談にも、そうした苦しさに関する声が見られました。
学習障害は、ADHDやアスペルガーなど行動的に分かりやすい子供達は学校側からもフォーカスされます。しかし、授業中に集中してなくてもうるさくしていなければ、「大丈夫まだ小さいし、そのうち変わるわよ」と言われました。4年間も学校へ相談したりインターネットや本を読みあさり、カウンセラーに相談したりする状態が続きました。
この声からは、行動面で目立たない学習障害が見過ごされやすく、その結果、保護者が長期間にわたって一人で悩み続けることになった様子が分かります。
- 「おとなしい」ことは「困っていない」ことと同じではない
- 見過ごされる期間が長いほど、保護者も子どもも消耗していく
- この声は、本シリーズ第1回で紹介した「気づかれにくさ」というテーマにも直結している
- 一人で抱え込まず、専門機関や同じ立場の人とつながることが大切
理解されない時間の長さは、子どもの自己肯定感だけでなく、保護者の心にも大きな負担をかけていきます。
学習障害と自己肯定感をめぐる整理
| 場面 | 大切にしたい視点 |
| 理解ある大人との出会い | 診断の有無にかかわらず、個性に合わせた関わりを大切にする |
| 小さな成功を認める仕組み | 結果だけでなく、頑張った過程を可視化して認める |
| 理解されない時間の長さ | 「おとなしい」ことを「困っていない」ことと同一視しない |
シリーズを振り返って

本シリーズでは、学習障害(LD)について、次のようなテーマを取り上げてきました。
- 学習障害(LD)とは?特徴とサインを知る
- ディスレクシア(読み書き障害)とは?気づきにくいサインと支援
- 学習障害の子が学校で受けられる「合理的配慮」の実例
- 学習障害への気づきの遅れが、二次障害につながることも
- 学習障害の子への家庭学習の工夫
- 学習障害のある子の受験|進路選択で大切にしたいこと
- 学習障害への理解が、子どもの自己肯定感を守る(本記事)
すべての記事に共通しているのは、学習障害は「気づかれにくい」からこそ、周囲の理解と早期の気づきが、子どもの人生に大きな影響を与えるということです。
児童発達支援士について
ここまで、学習障害シリーズ全7回をお届けしてきました。
こうした特性への理解を深めることと合わせて、保護者の方やご家族、現場で働く支援員の方々の間でも、発達障害への理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「児童発達支援士」は、発達特性の理解や、行動の背景を読み解く視点、家庭や支援現場で活かしやすい関わり方などを、体系的に学べる民間資格です。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、お子さまと日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|学習障害への理解と自己肯定感に関するよくある質問
Q1:診断がなくても、理解ある関わりは意味がありますか?
大きな意味があります。診断の有無にかかわらず、個性に合わせた理解ある関わりが、子どもの自己肯定感を守る力になります。
Q2:「頑張りカード」のような仕組みは、どの年齢の子にも使えますか?
年齢や発達段階に応じて工夫は必要ですが、頑張りを可視化して認める仕組みは、幅広い年齢で活用できる考え方です。
Q3:学校に理解されないとき、どうすればよいですか?
一人で抱え込まず、専門機関や、同じ立場の保護者とつながることが大切です。本シリーズ第3回(合理的配慮)や第4回(二次障害)もあわせてご覧ください。
Q4:自己肯定感を守るために、家庭でできることは何ですか?
結果だけでなく、頑張った過程を認める声かけや、その子の得意なことに目を向ける姿勢が助けになります。
Q5:学習障害について、もっと学ぶにはどうすればよいですか?
本シリーズの他の記事や、専門資格の学習を通じて、体系的に理解を深めることができます。当協会の「児童発達支援士」もその選択肢の一つです。
まとめ|理解は、学び方だけでなく心を守るもの
学習障害への支援の最終的な目的は、「できること」を増やすことだけでなく、子どもが自分自身を肯定的に感じられるようにすることです。
- 理解ある大人との出会いが、自己肯定感を守る
- 小さな成功を認める仕組みが、自信を育てる
- 理解されない時間が続くと、心が消耗していく
学習障害(LD)の子と向き合うシリーズを通じて紹介してきたように、気づき、配慮、家庭学習、進路選択、そして理解——そのすべてが、子どもの自己肯定感を守るためにつながっています。この記事が、学習障害のあるお子さまと向き合う保護者の方々にとって、少しでも支えになれば幸いです。
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、自己肯定感に関する一般的な知識と、当協会が収集した体験談の一部をもとにまとめています。子どもの特性や状況には個人差があり、すべての子どもに同じ結果が見られるわけではありません。学習方法や支援について迷う場合は、学校や専門機関にご相談ください。


