友達同士のやり取りが生まれる「絵カード全員活用法」

絵カードは「話せない子のための道具」と思われがちですが、話せる子も含めて全員で使うことで、子ども同士のやり取りが自然に生まれることがあります。今回は、そんな「絵カード全員活用法」をご紹介します。

こんな場面におすすめです

  • 言葉で伝えられる子とそうでない子が、同じクラスやグループにいる
  • 話せる子が一方的に手伝ってあげるだけの関係になりがち
  • 絵カードを使っている子だけが「特別扱い」に見えてしまうことが気になる
  • 子ども同士で自然に関わり合う機会を増やしたい

絵カードの対象を一部の子に限定すると、かえって「使う子・使わない子」という線引きが生まれてしまうことがあります。全員で同じ方法を使うことで、この線引きをなくしていきます。

この療育でできるようになること

絵カードを、話せない子専用の支援ツールとしてではなく、話せる子も含めた全員の共通コミュニケーション手段として取り入れる方法です。同じ方法をみんなが使うことで、子ども同士が自然にカードの使い方を教え合ったり、まねし合ったりする関係が生まれていきます。

絵カード全員活用法 実践ステップ

実践ステップ

Step1:よく使う場面のカードを全員分用意する

「貸してください」「どうぞ」「ありがとう」など、日常でよく使うやり取りのカードを、話せる子・話せない子の区別なく全員分用意します。

Step2:同じ場面で全員に同じ使い方をしてもらう

おもちゃの貸し借りなど、カードを使う場面を決め、そこでは全員が同じようにカードを使うというルールにします。「この子だけ特別」という状況を作らないことがポイントです。

Step3:子ども同士のやり取りを見守る

大人がすぐに仲介せず、子ども同士でカードを渡し合う様子を見守ります。話せる子が「こうやるんだよ」と教える場面が生まれたら、それも大切なやり取りとして見守ります。

Step4:必要な時だけ、さりげなく手助けする

うまくいかない時だけ、大人がカードの渡し方を一緒にやって見せます。毎回先回りして手伝うのではなく、子ども同士で解決できる余地を残しておきます。

実践時の注意点

  • 話せる子の役割が「教える係」に固定化しすぎないよう、時々大人が間に入って役割を入れ替える
  • カードの数や複雑さは、場の年齢やメンバーに合わせて調整する
  • 「絵カードは必要ないのでは」という周囲の声があっても、全員で同じ方法を使うことの意味を共有しておく

なぜこの方法が効果的なのか

PECSに関する研究の多くは、話せない子と大人とのやり取りを対象にしてきましたが、近年は子ども同士のやり取りに焦点を当てた研究も進んでいます。海外の行動分析学の研究では、自閉スペクトラム症のある子どもが、絵カードを使って友達(大人ではなく)に直接おもちゃを要求できるよう指導したところ、休み時間や教室の中で友達への自発的な要求行動が増加したことが報告されています。

また、PECSの開発者による学校現場での研究でも、教員がPECSの使い方を学んで子ども達に広く関わった結果、自発的なコミュニケーションが短期間で大きく増加したことが確認されています。

つまり、絵カードを「特定の子だけの道具」にせず、周囲の子どもたちを含めた環境全体で共通して使うことには、研究の裏付けがあります。友達同士のやり取りが生まれやすくなるのは、偶然ではなく、こうした環境づくりの効果だといえます。

絵カード全員活用法に関するよくある質問

Q. 話せる子にとって絵カードは意味がないのでは?

個人のコミュニケーション能力としては不要に見えるかもしれませんが、全員が同じ方法を経験することで、話せない友達への理解や関わり方を自然に学ぶ機会になります。

Q. 家庭でも兄弟間で応用できますか?

できます。きょうだいで同じカードを使う場面を作ることで、同じような教え合い・まねし合いが家庭内でも生まれることがあります。

Q. カードを取り合ってトラブルになりませんか?

起こり得ます。最初は大人がそばで見守り、取り合いが起きた場面こそ「どうぞ」「貸してください」のカードを使う練習の機会として活用してください。

Q. 絵カードを使い始める年齢の目安はありますか?

特に決まった年齢はありません。集団での関わりが始まる未就学児から、学齢期の子どもまで幅広く応用できます。

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一般社団法人 人間力認定協会 理事・事務局長 望月宏彰

執筆者

一般社団法人 人間力認定協会 事務局長
望月 宏彰

【プロフィール】
一般社団法人 人間力認定協会 理事・事務局長の望月 宏彰です。3児の父。「児童発達支援士」など各種資格を通じて延べ5万人以上の支援をサポート。「日本の資格・検定」アワードにて「児童発達支援士(2022年)」および「メンタルヘルス支援士(2026年)」の受賞実績を有しています。 当サイトでは、最新の療育情報や現場で役立つ支援に関する知識、施設選びに役立つ透明性の高い情報を配信しています。なお、本記事は当協会が提供する「児童発達支援士」等の資格講座の受講者アンケート等をもとに、講座を運営する当協会自身が執筆したものです。

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