小さな変化を見逃さない!加配保育士が実践する「支援の記録」と成長の捉え方

子どもと関わっていると、

「今日はいつもと少し様子が違うな」
「この前はできなかったのに、今日はできた」
「どうしてこの場面になると困ってしまうのだろう?」

そんな小さな変化や疑問に出会うことがあります。

けれど、毎日の保育や子育ての中では、その一つひとつを覚えておくのは簡単ではありません。

そこで役立つのが、子どもの様子や大人の関わりを記録しておくことです。

記録というと、「きちんと書かなければ」「専門的な内容を書かなければ」と思う方もいるかもしれません。

でも、私はそれほど難しく考えなくていいと思っています。

うれしかったことを書いてもいい。
うまくいかなかったことを書いてもいい。
気になったことを、そのまま残してもいい。

記録のよいところは、使い方によって、同じ出来事をいろいろな角度から見直せることです。

そして、子どもの姿だけでなく、私たち大人の関わり方も一歩引いて見直すきっかけになります。

この記事では、私が加配保育士として子どもたちと関わる中で工夫してきた、「支援の記録」の考え方や実践例をご紹介します。

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記録は「きれいに書くこと」が目的ではありません

まずおすすめしたいのが、私は「子どもなんでも記録」と考えている方法です。

貯金をするように、日々気づいたことを少しずつ残していきます。

形式にこだわる必要はありません。

日記を書くのが好きな方なら日記のように書いてもいいですし、お気に入りのノートに思いついたことを書いても構いません。

「毎日書かなければ」と思うと続けること自体が負担になってしまいます。

大切なのは、気になったことを外に出しておくことです。

保育園でも、気になることがあれば職員がメモを残し、その日の様子を複数の目で共有しています。

日々の記録では、こんなところを見てみる

日々の記録では、こんなところを見てみる

何を書けばいいのかわからない場合は、次のような視点から子どもの様子を見てみると、記録しやすくなります。

見るポイント記録する内容の例
見たままの様子表情、行動、喜怒哀楽、前後に何があったか
気になる場面いつ、どこで、どんなときに起こるのか
好き・得意好きな遊び、集中できること、得意な活動
苦手・嫌い苦手な活動、避けようとする場面
本人なりの工夫困ったときに自分でしていること
大人の関わり声かけや援助によって変化があったか
友達との関係一緒に遊ぶ様子、トラブルが起きる場面
日々の変化前回との違い、小さな成長

原稿でも、「活動が変わるときに立ちすくむ」「新しい活動のときに同じことが起きる」「特定の活動で表情が曇る」といった、行動だけでなく、その前後や起こりやすい場面を見ることが挙げられています。

たとえば、

「次の活動になると立ちすくんでいる」

だけで終わらせるのではなく、

「新しい活動が始まるときに、同じことが起きることが多い」

と記録しておけば、そこから、

「活動が嫌なのかな?」

だけではなく、

「次に何をするのかわからないことが不安なのかな?」

という別の見方が生まれるかもしれません。

記録を残しておくことで、その行動が今回だけなのか、繰り返しているものなのかも見えやすくなります。

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「困ったこと」だけではなく、できていることも書く

記録をしていると、どうしても気になる行動や困ったことに目が向きやすくなります。

でも、できれば、

「この子は何が好きなのだろう?」

「どんなことなら得意なのだろう?」

「本人なりにどんな工夫をしているのだろう?」

という部分も一緒に残してみてください。

困った場面だけを書き続けると、その子について考えるときにも「できないこと」ばかりが浮かんでしまうことがあります。

一方で、好きなことや得意なことを残しておくと、それが支援のヒントになることがあります。

また、記録を書くときに気をつけたいのが、愚痴や文句にならないよう、できるだけ冷静に書くことです。

「困った子だった」

ではなく、

「○○の場面になると、大きな声を出すことがあった」

というように、まずは見たことをそのまま書いてみます。

そうすることで、あとから読み返したときにも、そのときの状況を考えやすくなります。

気になる課題は「A・C・B」で整理してみる

日々の「なんでも記録」を続けていると、

「何度か試しているけれど、何となくうまくいかない」

という場面が出てくることがあります。

そんなときは、一度少し整理して考えてみます。

私は、

A:気になること・困っていること
B:支援方法・工夫・手立て
C:どうなってほしいか・結果

という3つに分けて考えています。

ただし、考える順番は A → C → B がおすすめです。

順番考えること内容
A今、何に困っている?現在の様子を書き、なぜ起きているのかを考える
Cどうなってほしい?目標や願い、実践した結果として見えてきた変化
Bそのために何ができる?声かけ、環境調整、距離の取り方、役割分担など

最初から「どう支援するか」を考えるのではありません。

まず、

「今どんなことが起きているのか」

そして、

「どうなってほしいのか」

を考えてから、

「では、どんな関わりができるだろう?」

と考えていきます。

この順番にすると、支援そのものが目的になるのではなく、その子にとって何が必要なのかを考えやすくなります。

実践例|Xくんの場合

実際に記録を使って関わった例をご紹介します。

Xくんには、レゴを見ながら作ったり、自分でイメージして形にしたりすることが得意という一面がありました。

電車が好きで、一番になることや、周りの人が反応してくれる楽しいことも好きでした。

また、急かされなければ服を丁寧にたためる子でもありました。

一方で、勝負に負けたり、うまくできなかったりすると、泣いたり怒ったりして気持ちを立て直すまで時間がかかることがありました。

縄跳びや鉄棒、跳び箱など、いくつもの動きを組み合わせる活動にも苦手さが見られました。

「Xくんはできない」と自分で話すなど、自信のなさが感じられる場面もありました。

そこで、日々の様子を記録しながら、いくつかの関わりを試していきました。

たとえば、注意するときは長く説明せず、内容を端的に伝える。

本人が話したいときには、まず話を聞く。

活動の時間や内容を事前に知らせ、見通しを持てるようにする。

「○回やってみよう」と具体的な目標を作る。

できていないことを注意するだけではなく、

「○○をしてくれる?」

「○○してから、○○してくれる?」

と、前向きな声かけに変えてみる。

また、当番活動などを通して活躍できる機会をつくり、「できた」という経験につながるようにもしました。

記録を続けることで見えてきた変化

こうした関わりを繰り返していく中で、Xくんにも少しずつ変化が見られました。

勝負に負けたり、一番になれなかったりしても、以前のように泣いたりぐずったりすることが減っていきました。

ひらがなや図形などでも、納得できるまで何度もやり直していた姿から、少しずつ自信がつき、小さなことで落ち込むことが減っていきました。

得意な部分を認めてもらう経験が増えたことで、「こうなりたい」という意欲も見られるようになりました。

そして、担任や保護者と日々の様子を共有し、「どうしたらいいか」を一緒に考えながら、チームで見守ることもできました。

この経験からも、記録は単に、

「できた・できなかった」

を書き残すものではないと感じています。

その子がどんなところで困っているのか。

どんな関わりをしたのか。

何が少し変わったのか。

その積み重ねを見るためのものなのだと思います。

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記録は、頭の中にあるものを外に出す作業

記録で大切なのは、

今見えていること(現在)と、これから見たいこと(未来)を文字にしてみること

だと思います。

頭の中だけですべてを整理しようとすると、いっぱいになってしまうことがあります。

そんなときは、少しだけ外に出してみてください。

ノートに書いてもいい。

スマートフォンの音声入力を使ってもいい。

一人で書くのが難しければ、誰かに話して、それを書いてもらってもいい。

記録の方法に決まりはありません。

大切なのは、「正しい記録を書くこと」ではなく、記録を通して、

「この子はどう感じていたのかな」

「この関わりはどうだったかな」

「次は何を試してみようかな」

と考えられることです。

自分なりの記録の方法を見つけることが、子どもにとっても、関わる大人にとっても、少し幸せな方向へ進むきっかけになればと思います。

Q&A|よくある質問

Q1.子どもの記録は毎日つけたほうがいいですか?

毎日必ず書かなければならないものではありません。形式にも決まりはありません。気になったことや、残しておきたい変化があったときに、無理のない方法で少しずつ記録してみてください。

Q2.記録には何を書けばいいですか?

子どもの表情や行動、その前後に起きたこと、好きなこと・苦手なこと、友達との関係、大人がどのように関わったかなどを書いておくと、あとから振り返ったときにヒントを見つけやすくなります。

Q3.気になる行動を書くと、悪いことばかりになってしまいます。

困ったことだけでなく、得意なことや好きなこと、本人なりに工夫していることも一緒に記録してみてください。また、「困った子だった」ではなく、実際にどんな行動があったのかを冷静に書くことも大切です。

Q4.何度関わり方を変えてもうまくいかないときはどうすればいいですか?

「今困っていること(A)」→「どうなってほしいか(C)」→「そのためにできる関わり(B)」の順に整理してみると、別の支援方法が見えてくることがあります。

Q5.文章を書くのが苦手でも記録できますか?

もちろんです。スマートフォンの音声入力を使ったり、誰かに話した内容を書いてもらったりしても構いません。自分に合った続けやすい方法を見つけることが大切です。

井上優子

執筆者

幼稚園教諭・保育士
井上 優子

【プロフィール】
幼稚園教諭15年、保育園13年のキャリアを持つ保育士です。現在は、一人ひとりの子どもたちとより深く真摯に向き合うため、発達支援を学びながら加配担当として日々奮闘しています。

【保有資格】
幼稚園教諭二種免許状、保育士、児童発達支援士、メンタルヘルス支援士

一般社団法人 人間力認定協会 事務局長 望月宏彰

この記事の監修

一般社団法人 人間力認定協会
監修責任者:事務局長 望月宏彰

当協会は、延べ5万人が学ぶ「児童発達支援士」等の資格認定をはじめ、専門家による調査報告書の提供、講演会、絵画コンクールの開催など、発達支援の普及と向上に向けた多角的な活動を行う専門機関です。「日本の資格・検定」アワードにおいて、2022年に「児童発達支援士」、2026年に「メンタルヘルス支援士」が受賞しており、業界から高い評価をいただいています。 本コラムは、協会の支援方針および倫理規定に基づき、正確な情報発信であるかを監修・確認しています。なお、本文中でご紹介している「児童発達支援士」は、当協会が提供する資格講座です。

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