子どもが「できない」とき、どう関わる?家庭でできるサポートの考え方

「○歳 できない」
「発達 遅れ 家庭でできること」
「子ども できるようになる方法」

子どものことで気になることがあると、私たちはつい検索します。すると、「見守りましょう」「スモールステップで」「環境を整えて」「絵カードを使って」「専門機関に相談して」……いろいろな方法が出てきます。

気になる一方で、「まだ大丈夫かな」「気にしすぎかな」「もう少し様子を見てもいいのかな」と、少し立ち止まりたくなることもあります。そして、情報を集めれば集めるほど、ふと、「結局、うちの子には何をしたらいいんだろう?」と思うことはないでしょうか。

家ではできるのに、園ではできない。昨日はできたのに、今日はやらない。関わる大人によって、反応が違う。そう考えると、「できない」という結果だけを見ても、その子のことは、まだよくわかりません。

「できるようにする」ことだけが、サポートではありません。待つこと。手伝うこと。やることを減らすこと。方法を変えること。環境を変えること。今日はやらないと決めること。そんな選択肢もあります。

この記事では、「これをすれば必ずできるようになる」という方法を探すのではなく、「できない」を、もう少し違う角度から見てみることから始めてみます。

この記事でわかること

  • 「できない」を、身体・感情・環境・方法・体調という5つの視点から見る考え方
  • 子ども本人だけでなく、子どもと環境の「あいだ」を調整する方法
  • 「できる=良い」「できない=悪い」と単純に分けないための見方
  • 親にも余裕がないときに、完璧を目指しすぎないための考え方
  • 家庭・園・学校・医療・福祉で、見えている姿を持ち寄る意味

「できない」だけでは、まだ何も決まらない

子どもが何かをできないとき、私たちはその姿を見て、「やりたくないのかな」「甘えているのかな」「もう少し頑張ればできるんじゃないかな」と考えることがあります。

でも、「できない」という姿の背景には、いろいろなことが隠れているかもしれません。まずは、よく見られる5つの視点から「今日は、何がやりにくいのかな?」と考えてみましょう。

視点考えられることたとえば
①身体・発達手先の動き、姿勢、目と手の協応、力加減、順番の理解などがまだ難しいボタン/バランス/道具の使い方/手先の不安定さ
②心理・感情失敗への不安、緊張、恥ずかしさ、「今はやりたくない」という気持ち怒られるのが怖い/不安/恥ずかしい/やる気が出ない
③環境・設定周囲の音、人の多さ、時間、次に何をするかわからないことなど騒がしい/時間に追われる/人が多い/手順が不明
④方法・アプローチ伝え方や手順、課題の量、最初の一歩などが本人に合っていない言葉だけでは伝わりにくい/やることが多い/最初が難しい
⑤体調・エネルギー眠気、空腹、疲れ、暑さ、緊張など、その日の状態睡眠不足/空腹・疲れ/体調変化/緊張・気温

図1 「できない」を見る5つの視点

① 身体・発達

そもそも、その動作に必要な身体の使い方が、まだ難しいのかもしれません。手先を細かく動かすこと。力加減を調整すること。目と手を一緒に使うこと。姿勢を保つこと。左右を見分けること。順番を覚えておくこと。「やろうとしているけれど、うまくできない」ということもあります。

② 心理・感情

「失敗したくない」「怒られたくない」「恥ずかしい」「今はやりたくない」。そんな気持ちが、行動に影響していることもあります。大人でも、緊張していると、いつもなら簡単にできることが急に難しくなることがありますよね。

③ 環境・設定

周りが騒がしい。時間がない。次に何をすればいいのかわからない。人が多い。本人の力だけではなく、その場の条件が影響していることもあります。

④ 方法・アプローチ

「自分でやって」と言われると難しくても、「最初だけ一緒にやろう」なら、動き出せるかもしれません。全部を手伝う必要はなくても、最初の一部分だけ手伝うことで、その先に進めることもあります。

⑤ 体調・エネルギー

眠い。お腹が空いている。疲れている。暑い。いつもより緊張している。大人でも、疲れている日は集中しにくかったり、急かされるとうまくいかなかったりしますよね。

ただ、大人なら、「今日は疲れているから、少し休もう」「一人では難しいから、手伝ってもらおう」と、自分の状態を考えて、対処することができます。子どもは、まだ自分の状態をそこまで整理できないことがあります。

だからこそ、大人が少し立ち止まって、「今日は、何がやりにくいのかな?」と、一緒に見てみるのです。眠いのかもしれない。やり方がわからないのかもしれない。急かされることが負担なのかもしれない。もちろん、どれか一つとは限りません。

「眠い」+「急かされている」+「ボタンが難しい」。そんなふうに、いくつかのことが重なっている場合もあります。だから、理由を一つに決めなくても大丈夫です。

「もしかしたら、ここも関係しているのかもしれない」と、いくつかの可能性を残したまま見てみる。そして、一つだけ減らしてみる。少し早めに始めてみる。最初だけ一緒にやってみる。声をかける回数を減らしてみる。あるいは、「今日はやらない」という選択もあります。

「今日はやらない」は、諦めるということではありません。いったん休んで、また取り組めそうなときにやってみる。そのために、今は無理をしないという選び方です。

「できない」という結果は、まだ結論ではありません。どこを見て、何を少し変えてみるか。それによって、次に見えてくるものも変わってきます。

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子どもと環境の「あいだ」を見てみる

たとえば、朝の着替え。服を渡しても、なかなか着替えない。「早く着替えて」「もう時間ないよ」と声をかけても、動かない。こんなとき、つい、「着替えができない子」と考えたくなります。

でも、子どもだけではなく、子どもと、服や時間、声かけとの「あいだ」に目を向けてみると、服の前後がわかりにくい。ボタンが難しい。何から始めればいいかわからない。服の感触が嫌なのかもしれない。まだ眠くて、身体が動きにくいのかもしれない。いろいろな可能性が見えてきます。

見えてきた「やりにくさ」変えてみる条件
服を着る順番がわかりにくい着る順番に並べておく
服の前後がわかりにくい前後がわかるように置く・印をつける
最初の一歩が難しい最初の一枚だけ一緒にやる
ボタンが難しいボタンだけ手伝う
眠気や時間の余裕が影響していそう少し早めに始める

そんなふうに、条件を一つ変えてみる。すると、「できなかった子が、できるようになった」というより、「条件が変わると、できることが増えた」と見ることもできます。うまくいかない理由を、その子の力だけに求めず、環境や関わり方との組み合わせも見てみるということです。

ここでいう条件は、服の置き方や時間だけではありません。大人がどう関わるかも、その一つです。褒められるとうれしい子なら、褒める。競争が好きなら、ちょっと競争してみる。好きなものをきっかけにする。「お願い」と頼られると張り切る子なら、頼ってみる。

昨日は競争にしたら動いたのに、今日は動かない。それなら、今日は別のやり方を試してみてもいい。家庭でのサポートは、一つのやり方を続けることではありません。その日の、その場の、その子を見ながら、何を足すか。何を減らすか。何を変えるか。その都度、選び直していくこと。

「どうしたら、この子はできるようになるんだろう?」だけではなく、「何があれば、この子は動きやすくなるんだろう?」と考えてみる。それだけでも、見える景色は少し変わります。

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「できる」ことが、いつもいいこととは限らない

できることが増えるのは、うれしいことです。自分でできるようになることが、子どもの自信や生活の幅を広げてくれることもあります。

ただ、「できているように見える」ことと、「安心して過ごせている」ことは、同じではありません。

たとえば、できるからこそ、失敗できない。休めない。助けを求められない。周りからは「ちゃんとできている」ように見えても、その子はずっと頑張り続け、しんどさを外に出せずにいることがあります。

一方で、「できない」ことの中に、「手伝ってもらえる」「やり方を変えてもらえる」「無理をしない」「自分の状態を伝える」ということが含まれている場合もあります。

ここで、少し不思議な言い方をしてみます。

「できる」には、「ない」が隠れている。
「できない」には、「できる」が隠れている。

……ただの言葉遊びに聞こえるかもしれませんね(笑)。でも、「できない」と言えることも、自分の状態を伝え、誰かに助けを求めるための大切な力なのかもしれません。

だから、「できる=良い」「できない=悪い」と、簡単に分けることはできません。できるようになることを急ぐあまり、「できない自分ではダメ」と思うようになってしまったら、少し苦しくなります。

大切なのは、「できるようになること」と同じくらい、「できないときにも安心していられること」なのかもしれません。失敗してもいい。手伝ってもらってもいい。今日はできなくてもいい。そう思える場所があるからこそ、「ちょっとやってみようかな」という気持ちが生まれることもあります。

親にも「できない」ときがある

ここまで読んで、「でも、そんなにいつも待っていられません」と思った方もいるかもしれません。……それは、そうです。

朝は時間がない。子どもの支度を待ちながら、時計を見て、きょうだいにも声をかけ、仕事の時間も気にしている。洗濯も、ご飯も、片付けもある。家庭の中は、いつだって、いくつものことが同時進行です。

親だって疲れます。「子どもの気持ちを受け止めて」「少し待って」「本人ができるまで見守って」と言われても、「いや、今日はもう無理です」と言いたい日だってあります。

そして、そんな日に、「さっき、あんな言い方しちゃったな」「もう少し待ってあげればよかったかな」と思うこともあるでしょう。でも同時に、「いや、あのときは、こっちにもそんな余裕はなかった」と思うこともある。その両方があっていいと思います。

親だから、いつでも穏やかでいなければならない。親だから、正しい対応をしなければならない。そんなふうに考えてしまうと、今度は親の側に「間違えられない空気」ができてしまいます。

でも、子どもに「失敗しても大丈夫」と伝えるのと同じように、親にも失敗できる余白が必要です。言いすぎたら、あとから謝ればいい。うまく関われなかったら、次に少し変えてみればいい。今日は余裕がなければ、最低限で終わらせてもいい。

大切なのは、いつも完璧に関われることではなく、うまくいかなかったあとにも、また関係に戻れること。親子は、その日の、その場だけで関わっているわけではありません。今日うまくいかなかったとしても、次の日にまた話す時間も、一緒に笑う時間もあります。そのあとも、暮らしは続いていきます。

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見えているものを、持ち寄ってみる

家では、何度言っても着替えない。毎朝そんな姿を見ていると、「私の関わり方が悪いのかな」と思うことがあります。

ある日、お迎えのときに、園の先生に話してみる。「家では、なかなか着替えなくて」。すると、先生が、「園では、周りの子が着替え始めると、一緒に動き出すことがありますよ」と教えてくれた。

「そうなんですね。家では一人だから、始めるきっかけがわかりにくいのかな」。それまでの「私の関わり方が悪いのかな」という見方が、「始めるきっかけがあれば、動きやすいのかもしれない」に、少し変わります。

誰かに話すことは、足りないものや、できない理由を見つけることだけではありません。家庭で見えている姿。園や学校で見えている姿。医療や福祉の場で見えている姿。家庭だけで抱えず、園や学校、医療や福祉の専門職に相談することも、見方や選択肢を増やすための一つの方法です。

それぞれが見ているものを持ち寄ると、自分一人では思いつかなかった見方や方法が出てくることがあります。見方が増えた分、迷うこともあります。それでも、今すぐ一つに決めなくていい。いくつかの見方を、誰かと一緒に持っていられる。それも、誰かに話してみる意味の一つなのだと思います。

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Q&A|よくある質問

Q. 朝の支度で子どもが動かないとき、毎回「待つ」ことが必要でしょうか?

A. 毎回、本人ができるまで待つ必要はありません。大切なのは、「今日は何がやりにくいのかな?」と見て、その日に合う方法を選び直すことです。最初だけ一緒にやる、やることを減らす、少し早く始める、ボタンだけ手伝う、あるいは「今日はやらない」と決めることも選択肢です。

Q. 家ではできるのに、園や学校ではできないことがあります。能力の問題なのでしょうか?

A. 「できる・できない」は、本人の力だけで決まるとは限りません。周囲の音、人の多さ、時間、声かけ、始めるきっかけなど、環境や関わり方が変わると、できることも変わる場合があります。家庭と園・学校で見えている姿を持ち寄ると、動きやすい条件が見つかることがあります。

Q. 余裕がなくて、つい強く言ってしまいました。どうすればよいでしょうか?

A. いつも完璧に関われることよりも、うまくいかなかったあとに、また関係に戻れることが大切です。言いすぎたらあとから謝る、次の機会に少し関わり方を変えてみる。親にも余裕がない日はあります。親子の関係は、その一場面だけで決まるものではありません。

まとめ|「何をしたらいい?」の前に

この記事の冒頭で、「結局、うちの子には何をしたらいいんだろう?」という問いがありました。この記事にも、「これをすれば大丈夫」という一つの答えはありません。

でも、「できない」という姿に出会ったとき、「今日は、何がやりにくいのかな?」「何を少し変えたら、動きやすくなるだろう?」「誰かと一緒に見てみたら、何が見えるだろう?」と考えることはできます。

「できるようにする」ことだけが、サポートではありません。待つ。手伝う。やらない。環境や方法を変える。誰かと一緒に考える。選択肢は、一つではありません。

失敗してもいい。わからなくてもいい。すぐに答えを決めなくてもいい。

「できない」を見つけると、私たちはつい、足りないものを探し、埋めたくなります。でも、「できるようにすること」だけを急ぐと、その子なりのやり方や、「やってみたい」という気持ちを、見落としてしまうことがあるかもしれません。

だからこそ、いったん立ち止まり、「何がやりにくいのかな」と考えてみる。できることを増やすだけではなく、親も子も、少し心地よく過ごせる形を探していく。家庭でのサポートは、そんなところから始めてもいいのかもしれません。

沢井彰

執筆者

児童発達支援管理責任者
沢井 彰

【プロフィール】
株式会社381代表取締役。愛知県江南市で児童発達支援施設「Blue Bird」を運営。子ども一人ひとりの気持ちや声を大切に、チームで支援を考え続けています。支援を通して私たち自身も学び、子どもと家族、関わる人々の「よりよく生きる」を目指しています。

【保有資格】
児童発達支援管理責任者、サービス管理責任者、相談支援専門員、強度行動障害者支援者

一般社団法人 人間力認定協会 事務局長 望月宏彰

この記事の監修

一般社団法人 人間力認定協会
監修責任者:事務局長 望月宏彰

当協会は、延べ5万人が学ぶ「児童発達支援士」等の資格認定をはじめ、専門家による調査報告書の提供、講演会、絵画コンクールの開催など、発達支援の普及と向上に向けた多角的な活動を行う専門機関です。「日本の資格・検定」アワードにおいて、2022年に「児童発達支援士」、2026年に「メンタルヘルス支援士」が受賞しており、業界から高い評価をいただいています。 本コラムは、協会の支援方針および倫理規定に基づき、正確な情報発信であるかを監修・確認しています。なお、本文中でご紹介している「児童発達支援士」は、当協会が提供する資格講座です。

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