3歳児クラスの「加配」ってどんなサポートをしているの?現場の幼稚園教諭・保育士が伝えるリアルな1日と安心の工夫

「園での生活の中で、いつもみんなの輪から離れて一人で過ごしている」
「お集まりの時間に、じっと椅子に座っているのが苦手でどこかへ行ってしまう」
「お友達の輪にうまく入れず、どう遊んでいいか分からない様子が見られる」

幼稚園や保育園に通う我が子の姿を見て、このような心配や気がかりを抱えている保護者の方は少なくありません

集団生活の中で、個別に特別な声かけをしたり、より丁寧なサポートが必要なお子さんに寄り添ったりする保育士・教諭のことを、園の現場では「加配(かはい)」と呼んでいます。

「うちの子に加配がついたら、みんなと違う目で見られてしまうのではないか」「具体的にどんなことをしてくれているのだろう」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし加配とは、子どもを無理に集団に当てはめるための存在ではなく、子どもが園生活を心から安心して楽しむための土台を作る存在です

今回は、3歳児クラスの加配担当としてのリアルなエピソードを交えながら、加配が普段どのような関わりをしているのか、その実際のサポート内容と家庭へのメッセージをお伝えします

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この記事でわかること

この記事でわかること
  • 園生活における「加配」の役割と、利用するための自治体への申請プロセス
  • 初めての幼児クラスで「次の行動がわからない不安」を解消した写真カードの活用例
  • 一対一のコミュニケーションを深め、確かな信頼関係を築くための寄り添い方
  • クラス全体の活動(製作や運動)で本人のペースを守る「充電時間」の考え方
  • 言葉がなくても表情や行動から「小さな成功体験」を読み解き、共有する大切さ
  • 保護者と園がチームとなり、パズルを完成させるようにお子さんを見守る連携の意義

そもそも「加配(かはい)」とは何か?

園の生活において、発達に凸凹(デコボコ)や特性があったり、集団行動に少し戸惑いが見られたりするお子さんに対して、通常の担任保育士に加えて、個別に行動のサポートや見守りを行うために配置される専門の保育士を「加配」と呼びます。

加配のサポートを利用するためには、一般的に以下のようなステップと申請手続きが必要となります

加配制度の利用に向けた一般的なプロセス

  1. 園からの提案、または保護者からの相談
    日々の園生活の中で、担任の先生から「個別について見守りがあると安心かもしれません」と提案を受けたり、保護者の側から困りごとを相談したりします。
  2. 専門機関での相談・診断
    児童発達支援センターや発達外来などの専門機関を受診し、相談や診断、または意見書などの発行を受けます。
  3. 自治体への申請・認定
    園を通じて、または保護者が直接、お住まいの自治体(市区町村の福祉窓口など)へ加配の申請を行い、必要性が認められることで加配保育士の配置費用が園に補助される仕組みです。

加配は、決して子どもを「特別扱いして隔離する」ためのものではありません。むしろ、集団の中でその子がその子らしく、安全かつ安心して過ごせる環境を確保するための、非常に心強い支援制度なのです。

初めての幼児クラスで「見通し」を立てる安心のアイテム

3歳児クラス(年少クラス)になると、それまでの乳児クラスとはお部屋の雰囲気も、先生の顔ぶれも大きく変わります。新しい生活のスタートには、どんな子どもであってもドキドキや不安がつきものです

ある3歳児クラスの女の子、Aちゃんのリアルなエピソードをご紹介します

言葉の代わりに「写真カード」がもたらした安心

新年度が始まって数日、Aちゃんは「お部屋から外(園庭)に出る行為」を強く嫌がるようになりました。大人が困っているときは、実は子ども自身が一番「どうしていいか分からなくて困っている」ときです

加配の先生がAちゃんの目線に立ってじっくり観察を続け、その時の表情や行動、反応などのピースをパズルのように書き出して集めてみたところ、ある仮説にたどり着きました「Aちゃんは、今からどこに連れていかれるのか、次に何をするのか、先の見通しが立たないから怖くて部屋を出られないのではないか?」

そこで先生は、次に何をするのかがひと目でわかるよう、給食の様子や園庭の風景をタブレットで撮影し、「写真カード」としてAちゃんに見せてみることにしました。 今まで写真カードを使ったことはありませんでしたが、試しに見せてみると、Aちゃんはカードにじっと顔を近づけて確認し、しばらくしてあげた顔は、パッと弾けるような満面の笑顔でした。「次は大好きな給食なんだ」「次はお外で遊ぶんだ」という見通しが立ったことで、それ以降はすんなりとお部屋を出られるようになったのです

このように、大人が魔法を使えなくても、子どもの背景にある不安を想像し、言葉以外のツール(視覚的支援)で「安心の見通し」を作ってあげることこそが、加配の行う大切なアプローチの一つです

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主活動は「本人ペース」で進める。無理をさせない『充電時間』の考え方

幼児クラスになると、お絵描きや工作(製作)、運動遊びなど、クラス全体で一斉に行う「主活動」の時間が格段に増えていきます。しかし、子どもにとってその活動が難しく感じられるときや、その日の体調、気分の波によって「どうしても今はやりたくない、つらい」というときだって当然あります

加配スタッフが大切にしているのは、「それって、今絶対にやらなくてはいけないことだろうか?」と立ち止まって考える視点です

子どもの状態園での対応・加配のサポート期待できる効果
みんなと同じ活動ができない・やらないとき「充電時間」と捉え、無理に参加させず、本人が安心できるお気に入りのブロックやプッシュポップ、お手玉などでその場で遊んでいてOKとする。周りの迷惑にならない空間を確保してあげることで、子どもは責められることなく、安心して自分の心を満たすことができる
安心を確保しながら様子を見ているとき遊びながらも、子どもはチラチラとクラスのみんなの楽しそうな様子を観察している「楽しそう!やってみたい!」と自分からモチベーションが湧き上がるタイミングを待つことができる
自分から輪に入ろうとしたとき立ち上がって輪に入ったり、道具を出してとアピールしてきた瞬間を逃さず、さりげなく活動のサポートに入る自発的な「やりたい!」のタイミングだからこそ、学びや成功体験としての効果が倍増する

かつては「つらいことも乗り越えてやり遂げるべき」というスパルタ的な時代もありましたが、現代の発達支援においては、「子どもが活動に参加しなくても、安心して過ごせる遊び、空間、時間を確保してあげること」こそが、将来の自発性を育むために最も大切であると考えられています。

実践|家庭と園で共有したい「ちいさな発見とちいさな変化」

加配の先生とお子さんの間で一対一の丁寧なコミュニケーションが重なっていくと、たとえ言葉による明確な会話が難しくても、少しずつお互いの思いが伝わるようになっていきます。それはまるで、生まれたての赤ちゃんの泣き声や表情から「おむつかな」「ミルクかな」「寂しいのかな」と分かっていくプロセスにとてもよく似ています

園生活の中で、子どもたちは毎日、教科書には載っていないような「ちいさな成功体験」を無数に積み重ねています。

  • 手洗いの際、大人が手を添えなくても、自分からハンドソープをプッシュして泡が出せた
  • 「いただきます」のご挨拶のときに、みんなに合わせて上手に手を合わせられた
  • 自分の靴を、時間をかけながらも最後まで自分で履くことができた
  • 喉が渇いたとき、水筒からお茶を自分でこぼさずに飲めるようになった

もちろん、日によってうまくできないときがあって当然です。まだまだ大人による手厚い支援が必要な場面はたくさんありますが、こうした日常の中の本当にちいさな発見や変化を、本人をたくさん褒めることはもちろん、保育士同士、そして何より保護者の方としっかりと共有していくことが大切です

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さいごに|現場の幼稚園教諭・保育士が伝えるリアルな1日と安心の工夫

「うちの子、みんなと同じ行動ができなくて本当に心配……」 その心配を一人で抱え込む必要はありません。集団の中で、我が子の特性やペースを実際に見つめ、個別に気にかけてくれる「加配」という大人が味方についてくれているということは、とても素敵で心強いことです

園の先生方はみんな子どもが大好きで、「なんとかしてこの子の力になってあげたい」「お父さん、お母さんと一緒に、この喜びも不安も共有したい」と心から思っています

子育ては、決して親だけで完結させるものではありません。何百ピースもある複雑なパズルであっても、保護者と園のスタッフが手を取り合い、一人ひとりが「この行動はこういう意味だったんだね」とピースを一枚ずつ持ち寄って埋めていけば、必ず美しい完成形へと近づけることができます

よかったことも、大変だったことも、何でも園に共有してください。自分を理解しようとしてくれる大人が周りにたくさんいる環境こそが、お子さんにとっての最高の栄養となり、園生活を豊かに彩る一歩になるはずです

Q&A|よくある質問

Q1. 我が子に加配の先生がつくことになった場合、クラスの他のお友達から「どうして〇〇ちゃんだけいつも先生が隣にいるの?」と変に怪しまれたり、からかわれたりすることはありませんか?

A. 3歳児クラスなどの幼児期において、お友達からネガティブにからかわれるようなことはまずありませんので安心してください。子どもたちは非常に純粋で、加配の先生を「クラスみんなの優しいお助け先生」として自然に受け入れています。 加配の先生は、対象のお子さんだけを四六時中マークして他の子を排除するような動きはしません。基本は対象のお子さんの隣で見守りつつ、周りのお友達が「先生、これ手伝って!」「一緒にブロックしよう!」と言ってきたら、みんなの遊びにも交わりながら全体の環境を調整します。子どもたちの間では「〇〇ちゃんの隣には、よく楽しい先生が一緒にいるな、僕たちも混ぜてもらおう!」というポジティブな空間になることが多く、むしろお友達関係を豊かに繋ぐ架け橋のような役割を果たしています

Q2. 主活動に無理に参加させず「充電時間」を作って好きな遊びをさせてくれるのはありがたいのですが、ずっとそのまま甘やかしていると、年中クラスや年長クラスに上がったとき、ますます集団行動についていけなくなるのではないかと心配です。

A. 「無理やりやらせて活動そのものを嫌いにしてしまうこと」こそが、将来の集団行動からの離脱を招く一番のリスクです。今は焦らず、心のエネルギーを蓄える(充電する)ことが最優先です。 幼児期における集団行動の土台は、「その場が安心できる楽しい場所である」という自己肯定感です。コラムにあるように、無理強いをせず本人のペースを守ってあげると、子どもは安心して「充電」をしながら、周りの様子をよく観察するようになります。そして、心がエネルギーで満たされたとき、自分から「やってみたい!」と動き出す瞬間が必ず訪れます。この自発的な成功体験を3歳児クラスでたくさん経験しておくことこそが、年中・年長クラスに上がったときに、自分の意志で少しずつ我慢をしたり、みんなのルールに合わせたりする強い心(情緒の発達)へと確実に繋がっていきます

Q3. 加配をつけてもらうための「自治体への申請」について、園から提案されたのですが、一度加配をつけると、小学校に上がるときに自動的に「特別支援学級」や「支援学校」に行かなければならなくなるなどのペナルティや制限はありますか?

A. 加配制度の利用と、小学校の進路選択は完全に独立した仕組み(別物)ですので、将来を縛られるような制限やペナルティは一切ありません。 保育園や幼稚園での加配は、あくまで「現在の集団生活を円滑に送るための、園生活限定のサポート制度」です。小学校の進路(通常学級か、通級か、支援学級か)を選ぶ際は、年長クラスの時期に改めて「就学相談」という別のプロセスを経て、保護者様の意向を最優先に決定されます。「加配をつけていたから、通常学級に入れない」ということは絶対にありません。むしろ、幼児期に加配の先生の手を上手に借りて、たくさんの「できた!」や「安心感」を積み重ねておくことの方が、小学校へのスムーズな就学に向けて大きなプラスのアドバンテージとなります

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【注意事項】

本記事は、児童発達支援管理責任者、心理カウンセラー、言語聴覚士をはじめとする専門家個人の知見や経験、学術的背景に基づいて執筆・監修されたものです。子どもの特性や発達の状況、支援との相性には大きな個人差があり、すべての子どもに同様の効果や変化を保証するものではありません。また、本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断や医療行為、個別の療育指導に代わるものではありません。実際に支援方法や対応を判断される際は、必要に応じてお子様を普段から知る主治医や専門家、支援機関などにご相談の上、ご自身の判断のもとで参考情報としてご活用いただきますようお願いいたします。

井上優子

執筆者

幼稚園教諭・保育士
井上 優子

【プロフィール】
幼稚園教諭15年、保育園13年のキャリアを持つ保育士です。現在は、一人ひとりの子どもたちとより深く真摯に向き合うため、発達支援を学びながら加配担当として日々奮闘しています。

【保有資格】
幼稚園教諭一種免許状、保育士、児童発達支援士、メンタルヘルス支援士

一般社団法人 人間力認定協会 事務局長 望月宏彰

この記事の監修

一般社団法人 人間力認定協会
監修責任者:事務局長 望月宏彰

当協会は、延べ5万人が学ぶ「児童発達支援士」等の資格認定をはじめ、専門家による調査報告書の提供、講演会、絵画コンクールの開催など、発達支援の普及と向上に向けた多角的な活動を行う専門機関です。「日本の資格・検定」アワードにおいて、2022年に「児童発達支援士」、2026年に「メンタルヘルス支援士」が受賞しており、業界から高い評価をいただいています。 本コラムは、協会の支援方針および倫理規定に基づき、正確な情報発信であるかを監修・確認しています。

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