子どもが欲しがっている様子を見ると、つい先回りして「これが欲しいの?」と言ってしまう。そんな関わり方を少し変えるだけで、子どもの自発的なことばを引き出せる「タイムディレイ法」をご紹介します。
目次
こんなお子さんにおすすめです
- 指差しや視線だけで要求が通ってしまい、ことばを使う機会が少ない
- 言える単語はあるのに、自分から言おうとしない
- 大人が先回りして代弁してしまう場面が多い
- ことばの数は増えているが、自発的に使う場面が少ない
これは本人の意欲の問題ではなく、「言わなくても伝わってしまう」環境の中で、ことばを使う必要性そのものが生まれにくくなっていることが背景にある場合があります。
この療育でできるようになること
子どもが何かを求めている場面で、すぐに言葉やヒントを与えず、数秒「間」を置いて待つことで、子ども自身がことばや発声で表現する機会を作る方法です。特別な教材は不要で、日常のやり取りの中にそのまま取り入れられます。
タイムディレイ法 実践ステップ

Step1:子どもが何かを求めている場面を見つける
おやつが欲しい、おもちゃで遊びたいなど、子どもが何かを求めている瞬間を見つけます。この方法は、こうした「本人の動機がある場面」で特に効果を発揮します。
Step2:すぐに答えず、期待の表情で数秒待つ
いつもならすぐに渡したり言葉をかけたりするところを、「あれ?」という期待した表情を見せながら、2〜3秒ほど間を置きます。
Step3:何か反応があれば、ことばを添えて応える
声、視線、指差しなど、どんな小さな反応でも、「りんご、だね」のようにことばを添えてすぐに応えます。発語そのものを求めすぎないことがポイントです。
Step4:反応がなければ、一段階だけヒントを出す
待っても反応がない場合は、「りん…?」と一部だけ言う、選択肢を見せるなど、負担にならない程度のヒントを一つだけ出してから応じます。
実践時の注意点
- 待つ時間は数秒程度にとどめる:長すぎる沈黙は本人を不安にさせてしまいます
- 毎回行う必要はない:日常のやり取りの中で、無理なくできる場面から少しずつ取り入れます
- 不安そうな表情が見えたら、待たずに先にヒントを出してあげてください
なぜこの方法が効果的なのか
応用行動分析の研究分野では、自閉スペクトラム症のある子どもを対象に、要求に応じる前のタイミングを少しずつ遅らせる「タイムディレイ」の手続きを用いたところ、自発的な発話が増加したことが報告されています。この効果は、練習した場面だけでなく、別の場面や状況にも広がることが確認されています。
つまり、「待つ」という一見シンプルな関わりの変化が、子ども自身の自発的なことばを引き出すきっかけになることには、行動分析学の研究に基づく裏付けがあります。先回りして代弁することは、短期的には子どもを助ける行動ですが、長期的には「言わなくても伝わる」という学習を強めてしまう可能性があるため、意識的に間を作ることが大切です。
タイムディレイ法に関するよくある質問
Q. 何秒くらい待てばいいですか?
目安は2〜3秒程度です。長すぎるとプレッシャーになりやすいため、「待っている」という表情や雰囲気を大切にしながら、短い間から始めてください。
Q. 吃音がある子にも使えますか?
基本的な考え方は共通しますが、吃音がある場合は「話すこと自体へのプレッシャー」に特に配慮が必要です。吃音のあるお子さんへの関わり方については、専門的な記事もあわせてご覧ください。
Q. 毎回待たれると子どもが嫌がりませんか?
毎回行う必要はありません。子どもの機嫌や状況を見ながら、無理なくできる場面から少しずつ試してください。
Q. ことばがまだ出ていない子にも使えますか?
使えます。その場合は「ことば」でなくても、声や視線、指差しなど、どんな小さな表現でも「伝えようとした」行動として受け止めてあげてください。
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