「読むのが苦手」「漢字が覚えられない」「計算だけ極端にできない」——そんな子どもの様子に、どう向き合えばよいのか悩む保護者や先生は少なくありません。
たとえば、
- 全体的な知的発達には遅れがないのに、特定の学習だけが極端に苦手
- 「サボっている」「やる気がない」と誤解されやすい
- 気づかれにくく、本人も「自分は頑張りが足りない」と思い込んでしまう
- どんな支援や工夫が有効なのか分からない
- 学校での合理的配慮を、どうお願いすればよいのか分からない
といった悩みです。
学習障害(LD)は、知的な遅れではなく、脳の情報処理の特性によって、特定の学習だけに困難が生じるものです。
この記事では、学習障害(LD)に関する一般的な知識に加えて、当協会に寄せられた保護者・支援者の方々の体験談も交えながら、学習障害の特徴とサインについて整理していきます。児童発達支援士コラムでは今回が学習障害シリーズの第1回となり、今後、ディスレクシアや合理的配慮、二次障害、進学などのテーマも扱っていく予定です。
>学習のつまずきが原因で起こる二次障害|保護者の声と理解のための知識を整理
目次
本記事で紹介している情報について
本記事は、学習障害(LD)に関する一般的な知識を中心に、当協会が収集した体験談(意見交換会アンケート、子どもの二次障害に関するエピソード)の中から、学習障害に触れた実際の声を交えて構成しています。
| 項目 | 内容 |
| 情報の性質 | LDに関する一般的な知識+当協会体験談アンケートより抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 参照した体験談 | 意見交換会アンケート(721名)、子どもの二次障害に関するエピソードの中から、学習障害に関する記述を抽出 |
| 注意点 | 診断や医学的な判断については、必ず医療機関にご相談ください |
学習障害(LD)とは

学習障害(LD:Learning Disabilities)とは、全体的な知的発達に遅れがないにもかかわらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった特定の能力の習得と使用に、著しい困難が見られる発達障害の一つです。
- 大きく分けて、読むことに困難がある「読字障害(ディスレクシア)」、書くことに困難がある「書字障害(ディスグラフィア)」、計算・数の概念に困難がある「算数障害(ディスカリキュリア)」などのタイプがある
- 一つのタイプだけでなく、複数が重なって現れることもある
- 知的障害とは異なり、知的な発達の遅れを伴わない
- ADHDやASDなど、他の発達障害と併存することも少なくない
学習障害は、努力や練習が足りないことが原因ではなく、脳が文字や数字の情報をどう処理するかという特性の違いが背景にあります。
>通級・支援級・特別支援学校の選び方と実際の変化を総まとめ|一次情報から見えるリアル
気づかれにくい障害だからこそ、丁寧な観察が必要
学習障害は、外見からは分かりにくく、周囲だけでなく本人も、その困難さに気づかないまま過ごしてしまうことがあります。
実際の体験談にも、そうした気づかれにくさに関する声が見られました。
書字表出に障害を伴うタイプの学習障害で、字形の想起に困難があります。気付かれにくい障害だと思います。漢字を想起することができないため漢字テストではいつも一人だけ0点を取り、自信を失い漢字に限らず学習が辛くなってしまいました。
この声からは、学習障害が「気づかれにくい」ことそのものが、子どもを追い詰めてしまう大きな要因になっていることが分かります。
- 学習障害は、知的能力全体の遅れがないため、見過ごされやすい
- 「特定の学習だけできない」ことが、努力不足や怠けと誤解されやすい
- 気づかれないまま繰り返し失敗を経験すると、自信を失いやすい
- 早期に気づき、適切な支援につなげることが、その後の学習意欲を左右する
学習障害への気づきは、テストの点数の悪さだけでなく、「なぜできないのか」という背景に目を向けることから始まります。
保護者・支援者からも、学習障害への学びを求める声が多い
学習障害についてもっと知りたい、支援したいという声は、保護者だけでなく、教員や塾講師、支援員など、さまざまな立場の人から寄せられています。
実際のアンケートにも、そうした学びへのニーズに関する声が多く見られました。
学習障害の子に対して有効な勉強方法を知りたいです。
ディスレクシアに関してより深く知りたい。どんな風に字が見えているか、鉛筆の感覚や紙質の好き嫌いなど。
教師をしており、クラスに理解の遅いお子さんや、読み書きが苦手なお子さんなどがいるため、ディスレクシアの子への具体的な支援方法を学びたいです。
学習塾を運営しています。個別学習のため、発達障害、学習障害のお子さんも多く、保護者さんから相談を受けることも多くあります。
これらの声からは、学習障害への理解や支援方法を求めているのは、家庭だけでなく、学校や学習塾など、子どもの学びに関わるさまざまな現場であることが分かります。
- 学習障害への関心は、保護者・教員・塾講師など、幅広い立場から寄せられている
- 「どう見えているか」という本人の感覚への関心も高い
- 学習塾など、学校以外の学びの場でも、学習障害への対応が求められている
- 学習障害は、特別な場面だけでなく、日常のさまざまな学びの場面に関わるテーマである
学習障害への理解を求める声の広がりは、この特性が、多くの子どもたちの学びに関わる身近なテーマであることを示しています。
>ミスマッチを防ぐ進路選び|発達障がい児の特性を生かす学校選択の考え方
学習障害のサインは、日常の中に現れる
学習障害のサインは、テストの点数だけでなく、日々の学習の様子の中にも現れます。
- 音読が極端に遅い、または読み間違いが多い(読字障害の可能性)
- 文字の形を思い出せない、鏡文字を書く、書き写しに時間がかかる(書字障害の可能性)
- 簡単な計算に時間がかかる、数の大小や繰り上がりの概念が身につきにくい(算数障害の可能性)
- 全体的な会話や理解力には問題がないのに、特定の教科だけ極端に苦手
これらのサインは、一つだけでは判断できず、複数の様子を継続的に観察することが大切です。気になる様子がある場合は、学校の先生やスクールカウンセラー、医療機関などに相談することをおすすめします。
学習障害の特徴とサインの整理
| タイプ | 主な困難 | 気づきのサイン |
| 読字障害(ディスレクシア) | 読むこと | 音読が遅い、読み間違いが多い |
| 書字障害(ディスグラフィア) | 書くこと | 文字の形を思い出せない、書き写しが遅い |
| 算数障害(ディスカリキュリア) | 計算・数の概念 | 簡単な計算に時間がかかる |
児童発達支援士について
ここまで、学習障害(LD)の特徴とサインについてご紹介してきました。
こうした特性への理解を深めることと合わせて、保護者の方やご家族、現場で働く支援員の方々の間でも、発達障害への理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「児童発達支援士」は、発達特性の理解や、行動の背景を読み解く視点、家庭や支援現場で活かしやすい関わり方などを、体系的に学べる民間資格です。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、お子さまと日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|学習障害(LD)に関するよくある質問
Q1:学習障害は、知的障害とは違うものですか?
はい、異なります。学習障害は、全体的な知的発達に遅れがなくても、読む・書く・計算するといった特定の能力にだけ、著しい困難が見られる特性です。
Q2:学習障害は、どうすれば分かりますか?
学校での学習の様子や、日常での読み書き・計算の様子を継続的に観察することが第一歩です。気になる場合は、学校の先生やスクールカウンセラー、医療機関に相談することをおすすめします。
Q3:学習障害の子には、どんな支援が有効ですか?
タイプによって異なりますが、視覚的な工夫、ICT機器の活用、個別のペースに合わせた学習方法などが有効な場合があります。具体的な支援方法は、今後のシリーズで詳しく紹介していきます。
Q4:「サボっている」と誤解されないためには、どうすればよいですか?
学習障害という特性について、学校や周囲に伝え、理解を求めることが大切です。専門機関の診断や、具体的な困りごとの記録が、伝える際の助けになります。
Q5:学習障害は、成長とともに改善しますか?
個人差がありますが、適切な支援や工夫によって、学びやすさが大きく変わることがあります。特性そのものがなくなるというより、その子に合った学び方を見つけることが大切です。
まとめ|学習障害は、気づきと理解から支援が始まる
学習障害(LD)は、知的な遅れではなく、脳の情報処理の特性によって、特定の学習だけに困難が生じるものです。
- 気づかれにくい障害だからこそ、丁寧な観察が必要
- 保護者・支援者からも、学習障害への学びを求める声が多い
- 学習障害のサインは、日常の学習の様子の中に現れる
「なぜできないのか」という背景に目を向け、早期に気づき、適切な支援につなげていくことが、学習障害のある子どもの学びやすさを大きく変えていきます。次回は、学習障害の代表的なタイプである「ディスレクシア(読み書き障害)」について、さらに詳しく取り上げます。
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、学習障害(LD)に関する一般的な知識と、当協会が収集した体験談の一部をもとにまとめています。診断や治療方針については、必ず医師や専門機関にご相談ください。子どもの特性や状況には個人差があり、すべての子どもに同じ結果が見られるわけではありません。


