学習障害(LD)のある子どもにとって、高校・大学受験は、大きな壁として立ちはだかることがあります。しかし、その壁の乗り越え方は、一つではありません。
たとえば、
- 一般的な受験勉強が、極端に困難に感じられることがある
- 得意分野を伸ばす方向に進路を切り替えることで、道が開けることがある
- AO入試など、多様化する受験方式が、新しい選択肢になることがある
- 進路選択には、想定以上の教育費がかかることもある
といった現実があります。
学習障害のある子どもにとっての「良い進路」は、偏差値の高さではなく、その子の得意を活かせる場所であることが少なくありません。
この記事では、学習障害のある子の受験・進路選択について、当協会に寄せられた保護者の方々の体験談をもとに整理していきます。
目次
本記事で紹介している情報について
本記事は、進路選択に関する一般的な知識を中心に、当協会が収集した体験談(受験時の困った経験談)の中から、学習障害に関する記述を交えて構成しています。
>【発達障害】受験で起きやすい困りごと総まとめ|学習・メンタル・受験方式・進路選択を体系的に整理
| 項目 | 内容 |
| 情報の性質 | 進路選択に関する一般的な知識+当協会体験談アンケートより抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 参照した体験談 | 受験時の困った経験談の中から、学習障害に関する記述を抽出 |
| 注意点 | 進路や受験制度の詳細は、時期や地域によって変わるため、最新の情報は学校や教育委員会にご確認ください |
得意分野を伸ばす方向へ、進路を切り替える

一般的な学力を軸にした進路選択が難しい場合、本人の得意分野を活かす方向へ舵を切ることで、道が開けることがあります。
実際の体験談にも、そうした転換に関する声が見られました。
学習障害とADHDがある息子です。学習障害は高校生活において非常に困りました。塾からは見放され、どうにもならないので、親2人が定期テストの点を上げるために必死で教える日々を送りました。「得意なものには集中できる」という特性を生かそうと思い、描いたこともないデッサンを習わせたところ、その方向に一直線に向かいました。結果、第2希望の美大に進学しました。少しでも良い有名な学校に進学をと願うのは親として当たり前です。私も偏差値のことばかり考えて過ごしていました。でも、子供に何が合うのか、どんな事ならやれるのかを真剣に考え始めた時、全てがガラッと変わりました。
この声からは、学力偏重の進路選択に行き詰まったとき、本人の特性や興味に目を向けることで、新しい可能性が開けることが分かります。
- 「得意なことには集中できる」という特性を、進路選択に活かす視点がある
- 塾など、既存の学習支援の枠組みでは対応しきれないこともある
- 偏差値を基準にした進路選択から離れることで、見える選択肢が変わることがある
- 進路の転換には、時間・費用など、相応の準備が必要になる
得意分野を活かす進路選択は、学力の壁に行き詰まったときの、有効な選択肢の一つです。
>ミスマッチを防ぐ進路選び|発達障がい児の特性を生かす学校選択の考え方
多様化する受験方式を活用する
学力試験一辺倒ではない、多様な受験方式を活用することで、道が開けた例もあります。
実際の体験談にも、そうした活用に関する声が見られました。
内申2.9しかなく、学校推薦は取れず、一般受験で合格するレベルでもないため、AO受験に絞り、最大の難関である小論文対策を高3から始めました。中高生新聞のコラムを毎日簡潔にまとめることを指示し、添削しました。過去の論文問題を解かせ、繰り返し進めていくと、時事については頭に入ってきているので、秋の本番では何とか対応できたようで、合格できました。受験方法は昔と違い多種多様なので、その子に向く方法を探して対応策を考えることが大切です。
この声からは、内申点や一般受験という従来の枠組みにとらわれず、AO入試(総合型選抜)という別の道を選び、日々の積み重ねで対策した結果、合格につながった経緯が分かります。
- 内申点や一般受験だけが、進学の道ではない
- AO入試(総合型選抜)など、多様化する受験方式が新しい選択肢になっている
- 毎日少しずつの積み重ね(新聞コラムの要約など)が、対策として有効だった
- 「その子に向く方法」を探す視点が、進路選択の鍵になる
受験方式の多様化は、学習障害のある子どもにとって、これまでより幅広い選択肢を提供しています。
>発達障害の子どもに合う受験方式の選び方|推薦・AO・通信制・チャレンジスクールという多様な進路
進路選択には、想定以上の準備と費用がかかることも
得意分野を伸ばす進路や、特別な受験対策には、想定以上の時間と費用がかかることがあります。
- 画塾や専門的な指導など、通常の受験対策とは異なる費用が必要になることがある
- カウンセリングなど、心理面のサポートにも費用がかかる場合がある
- 早い段階から、教育費についての計画を立てておくことが助けになる
- 費用や時間の準備は、進路の選択肢を狭めないためにも大切な視点である
進路選択の可能性を広げるためにも、早めに情報収集と資金計画を進めておくことが、いざというときの支えになります。
学習障害のある子の受験をめぐる整理
| 視点 | 大切にしたいこと |
| 得意分野を伸ばす進路への転換 | 偏差値だけでなく、本人の特性や興味に目を向ける |
| 多様化する受験方式の活用 | AO入試など、その子に向いた方法を探す |
| 準備と費用 | 早めの情報収集と資金計画を進めておく |
児童発達支援士について
ここまで、学習障害のある子の受験・進路選択についてご紹介してきました。
こうした特性への理解を深めることと合わせて、保護者の方やご家族、現場で働く支援員の方々の間でも、発達障害への理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「児童発達支援士」は、発達特性の理解や、行動の背景を読み解く視点、家庭や支援現場で活かしやすい関わり方などを、体系的に学べる民間資格です。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、お子さまと日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|学習障害のある子の受験に関するよくある質問
Q1:一般的な受験勉強がうまくいかないとき、どうすればよいですか?
得意分野を活かせる進路(専門学校、美大、AO入試など)も選択肢の一つです。本人の興味や特性に目を向けてみることをおすすめします。
Q2:AO入試(総合型選抜)は、誰でも活用できますか?
学校や制度によって条件が異なります。詳細は志望校や在籍する学校の進路指導の窓口にご確認ください。
Q3:受験に向けて、学校にどんな配慮をお願いできますか?
試験時間の延長や、別室受験など、合理的配慮を申請できる場合があります。早めに学校や志望校に相談することをおすすめします。
Q4:進路変更に、費用はどのくらいかかりますか?
得意分野を伸ばす進路(専門的な指導など)は、通常の受験対策とは異なる費用がかかることがあります。早めの情報収集と資金計画をおすすめします。
Q5:偏差値にとらわれない進路選択は、不安に感じます。
多くの保護者が同じような不安を抱えます。しかし、本人の特性や興味に合った進路が、結果的に子どもの力を最大限に発揮できる道になることもあります。
まとめ|受験の壁は、一つの道だけで越えるものではない
学習障害のある子どもにとって、受験は大きな壁になることがありますが、その乗り越え方は一つではありません。
- 得意分野を伸ばす方向へ、進路を切り替えることで道が開けることがある
- 多様化する受験方式(AO入試など)が、新しい選択肢になっている
- 進路選択には、想定以上の準備と費用がかかることもある
偏差値だけにとらわれず、本人の特性や興味に目を向けることが、学習障害のある子どもにとって納得できる進路選択につながります。次回は、学習障害シリーズの最終回として、学習障害への理解が子どもの自己肯定感を守ることについて取り上げます。
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、進路選択に関する一般的な知識と、当協会が収集した体験談の一部をもとにまとめています。受験制度や進路の詳細は、時期や地域、学校によって異なります。最新の情報は、学校や教育委員会、志望先に直接ご確認ください。


