- 製作や集団活動のとき、自信がなさそうに固まってしまう
- 朝の活動前から部屋に寝転がり、何を聞いても反応がない
- 気持ちの切り替えができず、クラスみんなで園庭に出るタイミングから大幅に遅れてしまう
加配保育士として活動を始めた当初、4歳クラスのSくんとの関わりの中で、私は「焦り」と「困惑」でいっぱいでした。
1人担任の多い幼児クラスでは、「多くの子どもたちが進むペース」から遅れをとってはいけないという焦りがどうしても生じます。「なんとかして活動に参加させなきゃ」「連れて行かなければ」と焦って対応した結果、子ども自身は嫌な気持ちを引きずり、その後の活動でもパニックを繰り返してしまうという失敗も経験しました。
クラス活動の中で、支援の必要な子どものために何ができるのか。 今回は、葛藤や失敗のエピソードを交えながら、加配保育士とクラス担任、そして園全体が「ひとつのチーム」となって子どもを育てていくための工夫についてお伝えします。
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目次
この記事でわかること

- 加配保育士とクラス担任が円滑に連携するための「信頼関係づくり」のステップ
- 子どもがパニックや固まったときの「気持ちの代弁」と「前後の経緯」の共有方法
- 「できないこと」ではなく「できること・好きなこと(プラス面)」に着目する思考の切り替え
- 学んだ専門知識(脳のキャパオーバーやリセット時間)をチームに伝える技術
- 外部のプロを活用する「巡回相談」の仕組みとカンファレンスのメリット
- 園全体・子ども同士へ「理解の輪」を広げていくインクルーシブなアプローチ
工夫①|加配保育士と担任との信頼関係づくり
幼児クラスの運営では、一人の子どもの対応だけに時間を費やすことが難しいのが現状です。加配保育士は、子どもと担任を結ぶ「橋渡し」の存在である必要があります。
保育観や捉え方は人それぞれ異なるため、お互いが何を望み、子どもをどう捉えているかを理解し合う「コミュニケーション」が欠かせません。
担任との信頼関係を築くアプローチ
| 意識したポイント | 具体的なアクション・伝え方 |
| 日常の雑談から始める | 何気ない世間話から少しずつ会話の頻度を増やし、話しやすい空気を作る。 |
| あらかじめ要点を書き出す | 相談したいことを事前にメモに書き出し、自分の頭の中で情報を整理しておく。 |
| 落ち着いて話せるタイミングを聞く | 「◯◯くんの気になることを話せる時間はありますか?」「こんな対応を試してみたいのですが相談させてください」と声をかける。 |
| 担任の保育観を否定しない | クラス運営の苦労を汲み取り、否定的に聞こえないよう言葉選びに細心の注意を払う。 |
このプロセスは、ご家庭での夫婦間や、保護者と園との関係づくりでも全く同じです。お互いを理解し合えたとき、チームとしての支援が大きく動き出します。
工夫②|子どもの様子・気持ち・経緯を「代弁」して伝える
言葉で自分の気持ちをうまく表現できない子どもに代わり、観察から得た「子どもの情報・気持ち・変化の経緯」を担任へ正確に代弁して伝えることが大切です。
実践事例:Sくん(4歳)との取り組み
否定的な言葉で心が崩れやすいSくんに対して、みんなと活動に参加できたら「イェーイ1!」、もう一つできたら「イェーイ2!」とハイタッチで「その日できた数」を共有しました。
- 結果:
Sくんの気持ちが上向きになり、「できた」という自信が増えたことで他行動へも意欲が芽生えました。 - 担任への共有:
「できないこと」ではなく「できた自信を増やすことで意欲が湧く」という実際の様子を担任に見せ、経緯を共有したところ、担任も一緒に盛り上がってくれるようになり、お互いに良好で適切な距離感が生まれました。
やる気がなくて寝転がったり部屋を離れたりするとき、子どもは「心をリセット」しようとしています。無理な指示を出さず、「気持ちが落ち着いたね」「切り替えられたね」と認めた上で、そのプロセスを担任へ伝えて理解を深めてもらいました。
工夫③|「できないこと」ではなく「プラス面(好きなこと・得意なこと)」を伝える
一生懸命な先生ほど、「椅子に座れない」「話を聞いていない」「運動が苦手」といった「できない行動」が真っ先に目に入りがちです。しかし、できないことばかり見ていても何も生まれません。
そこで、思考を意識的に切り替え、「できること」「好きなこと」というプラス面に目を向けます。
プラス面を活かしたサポートの具体例
- Sくんのケース(漢字や図鑑が好き):
活動に参加できない時や午睡明けに起きられない時、「Sくんクイズ!人の血は2種類あるのは知っている?動脈とあとひとつは何だ?」「静脈だ!」といった会話をきっかけにし、気持ちをスムーズにリセットさせた。 - Aくんのケース(ひらがなが苦手・ゲームとペンギンが好き):
「うまく書けない」と自信を失っていたひらがな学習にゲーム要素を導入。「あいうえお表」を作り、1文字書けるごとに「ペンギンシール」を貼るルールにしたところ、「◯の文字にも貼りたい!」と楽しみながら最後まで取り組めるようになった。
>療育・支援の現場に見る、スモールステップの実践例|スモールステップ実践ガイド
工夫④|専門的に学んだメカニズムを「身近な例」に置き換えて伝える
「なぜこんな行動をするのか分からない」という疑問に対し、発達支援の専門知識(メカニズム)を学んだ上で、大人の日常に置き換えて説明すると理解が得られやすくなります。
実践事例:Aくん(突然部屋を飛び出してしまう)
前触れもなく部屋を飛び出したり、部屋の隅へ逃げたりしていたAくん。この行動の理由は「嫌なことや不安があった時、とっさに脳のキャパオーバーを起こし、心をリセットするための時間」でした。
担任への伝え方の工夫
「私たちがすごく悲しいことがあった時、すぐに話しかけられても気持ちを切り替えられないのと一緒の状態です」
このように大人の身近な体験に置き換えて伝えることで、担任も「Aくんのリセット時間」を温かく見守れるようになり、Aくん自身も落ち着いた後に自ら思いを話してくれるようになりました。
チーム力を高める「巡回相談」の活用
園全体でチーム支援を行う上で非常に有効なのが、専門家による「巡回相談」制度です。
発達支援のプロに実際の保育の様子を見てもらい、その後のカンファレンスで担任や加配保育士と情報共有を行います。
巡回相談で得られるメリット

- 先生方の関わり方が有効だったか、工夫が必要かの客観的評価
- 子どもの「伸ばしていくべき強み」の再発見
- 個別フォローだけでなく、クラス全体に有効な配慮(インクルーシブ保育)の獲得
- 「自分のやってきたアプローチは正しかった」という先生自身の安心感と共通認識の醸成
巡回相談を活用することで、園全体で子どもの特性に対する共通認識ができ、誰もが安心して過ごせる環境が整っていきます。
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まとめ|特性のある子どもの「理解の輪」を広げよう
発達支援とは、特定の大人が「何かをしてあげる」ことだけではありません。周りの人と子どもがお互いに理解し、工夫し合いながら一緒に過ごしていくことです。
子どもの好きなことや得意なことを周りの先生やクラスのお友達に伝えていくと、次第に「◯◯くんはLaQ(ラキュー)を作るのがうまいよね!」「◯◯ちゃんはこの遊びが好きだよね!」と、周りのみんなが自然とその子の個性を認め、仲良く遊べるようになっていきます。
ほんの少しの理解と信頼関係が、人の心を動かします。一人で抱え込まず、子どもを中心に温かい理解のチームを広げていきましょう。
Q&A|よくある質問
Q1. 加配保育士としてクラスに入っていますが、担任の先生の指導方針(厳しめの対応など)と自分の支援に対する考え方が合わず、ギクシャクしてしまいます。どう歩み寄ればいいでしょうか?
A. 担任の先生の「クラス全体をまとめなければならない苦労」にまず共感し、否定ではなく「小さな試行錯誤の提案」からアプローチしてみましょう。 1人担任の先生は「一人の対応に時間をかけられない」「全体を進行させなければ」という強い責任感と焦りを抱えています。まずその大変さを労い、信頼関係を作ることが最優先です。その上で「◯◯の場面で子どもが固まったとき、私がこちらでクイズを出して気持ちを切り替えさせてみてもいいですか?」など、担任の進行を助ける形の具体的な提案を小規模に試していき、良い変化の事実(エピソード)を共有していくのが最もスムーズな歩み寄り方です。
Q2. 保護者参観の際、我が子がみんなと同じ行動ができず、部屋の隅で寝転がってしまいました。担任や加配の先生に申し訳なく思ってしまうのですが、保護者としてどう受け止めればよいでしょうか?
A. 申し訳なさを抱え込む必要はありません。子どもは「参観日」という普段と違う雰囲気に必死に適応しようと、心のリセットを行っている最中です。 参観日は大勢の保護者の視線があり、子どもにとっても非常に緊張する特別な環境です。寝転がっている姿は一見何もしていないように見えますが、必死に刺激を遮断し、脳のキャパオーバーを防ごうとしている大切な防御反応です。連絡帳や送り迎えの際に「今日は緊張していたみたいですね。家でもこんな工夫をすると落ち着くことがあります」など、園の先生と情報交換を行うきっかけとして前向きに捉えてみてください。
Q3. 「巡回相談」は保護者から園に要望して実施してもらうことは可能ですか?
A. 自治体や園の運用方針によりますが、保護者からの相談をきっかけに巡回相談が設定されるケースは多々あります。 巡回相談は自治体の福祉・療育課などが園へ専門家(臨床心理士や作業療法士等)を派遣する制度です。園側も「どう支援すべきか」に悩んでいることが多いため、連絡帳や個人面談などで「園での様子で気になる点があれば、巡回相談などの専門家の意見も伺ってみたいのですが、そうした機会はありますか?」と提案してみることをおすすめします。園と家庭が共にプロの助言を得る良い機会になります。
【注意事項】
本記事は、児童発達支援管理責任者、心理カウンセラー、言語聴覚士をはじめとする専門家個人の知見や経験、学術的背景に基づいて執筆・監修されたものです。子どもの特性や発達の状況、支援との相性には大きな個人差があり、すべての子どもに同様の効果や変化を保証するものではありません。また、本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断や医療行為、個別の療育指導に代わるものではありません。実際に支援方法や対応を判断される際は、必要に応じてお子様を普段から知る主治医や専門家、支援機関などにご相談の上、ご自身の判断のもとで参考情報としてご活用いただきますようお願いいたします。



