家庭でできるABAの実践|ほめ方・無視の仕方・行動のきっかけを整える|発達支援における実践ポイント

ABA(応用行動分析)の理論を知っていても、家庭でどう実践すればよいのか分からないという声は少なくありません。実は、特別な道具や環境がなくても、日々の関わり方を少し工夫するだけで、家庭でも取り入れられる実践方法があります。

たとえば、

  • 環境を整えて、行動のきっかけ(先行事象)そのものを減らす方法がある
  • できたことをすぐに認め、褒めることで行動を強化する方法がある
  • 望ましくない行動には、意図的に反応を控える「計画的無視」という方法がある
  • 特別な道具がなくても、日常の中で実践できる工夫が多くある

といった実例です。

家庭でのABA実践は、難しい理論を完璧に使いこなすことではなく、「行動の前」「行動の後」に、少し意識を向けてみることから始まります。

この記事では、家庭でできるABAの実践について、当協会に寄せられた保護者の方々の体験談をもとに、ほめ方・無視の仕方・行動のきっかけを整える工夫を紹介していきます。

>ABA(応用行動分析)とは?発達支援での基本的な考え方|発達支援における実践ポイント

本記事で紹介している情報について

本記事は、ABAの実践方法に関する一般的な知識を中心に、当協会が収集した体験談(意見交換会アンケート)の中から、家庭での実践例に関する記述を交えて構成しています。

項目内容
情報の性質ABAの実践方法に関する一般的な知識+当協会体験談アンケートより抜粋
データ取得者一般社団法人 人間力認定協会
参照した体験談意見交換会アンケート(721名)の中から、ABAの家庭実践に関する記述を抽出
注意点子どもの特性や状況には個人差があり、一つの方法がすべての子どもに合うとは限りません

環境を整えて、行動のきっかけ(先行事象)を減らす

ABAでは、行動が起きる「前」の状況(先行事象)に働きかけることも、大切な実践方法の一つです。困った行動そのものに対処するより、行動が起きにくい環境を先に整えておくという考え方です。

実際の体験談にも、そうした工夫に関する声が見られました。

衝動性が強く、怒りのエネルギーも強いお子さんで、椅子にまっすぐ座ることも難しかったのですが、イヤーマフで雑音遮断し、衝撃吸収座布団を活用したら、当初より随分落ち着きました。小さい成功体験を見逃さないようにして、成長を認める声かけや、アイメッセージを意識することで随分素直さも増し良い変化が見られました。

この声からは、行動そのものを直接変えようとするのではなく、雑音や座り心地といった、行動のきっかけになりうる環境要因を先に調整することで、落ち着きにつながったことが分かります。

  • 音、座り心地など、行動のきっかけになりうる環境要因を観察する
  • 環境を整えることは、叱ることよりも先に試せる、負担の少ない方法である
  • 環境調整と、声かけなどの関わり方を組み合わせることで、効果が高まることがある
  • 「アイメッセージ」(「私は〜と感じる」という伝え方)も、関わり方の工夫の一つ

行動が起きてから対応するのではなく、行動が起きにくい環境を先に整えておくことが、ABAの実践における大切な視点です。

できたことをすぐに認め、褒めることで行動を強化する

望ましい行動が起きたときに、それをすぐに認め、褒めることで、その行動が定着しやすくなります。

実際の体験談にも、そうした実践に関する声が見られました。

心理学の注目行動について。まさに子供は反応欲しさに行動しているところがあるので、増えて欲しい行動や良い時にしっかり認めた関わりをしていると、関係性の中に信頼が生まれて、伝えたいことが伝わりやすいな、と息子で実感しました。

長女に靴を揃える事を教え続けたら、今では習慣になってきました。あとはできたところを褒める練習もしております。まだまだ、怒る事も多いですが、なるべく自己肯定感を下げないようにしています。

これらの声からは、「増えてほしい行動」に意識的に注目し、認めていくことが、子どもとの信頼関係を育て、行動の定着にもつながっていくことが分かります。

  • 子どもは「反応がほしくて」行動していることが多いという視点が大切
  • 望ましい行動に注目し、しっかり認めることで、信頼関係が育つ
  • 「できたところを褒める」という意識を持ち続けることが、習慣づくりに役立つ
  • 完璧を目指さず、「怒ることもあるけれど、褒める練習も続ける」という姿勢でよい

できたことにすぐ気づいて認める関わりは、特別な準備がなくても、今日から始められるABAの実践方法です。

>生活習慣をスモールステップで身につける|着替え・片付け・靴を履く|スモールステップ実践ガイド

望ましくない行動には、意図的に反応を控える

すべての行動に反応するのではなく、望ましくない行動に対しては、あえて反応を控えるという方法もあります。

先ほどの体験談にも、こうした工夫に関する声が続けて見られました。

(意図的にその行動だけ無視するようにしていますが、他にも良い方法や事例があれば知りたいです。)

この声からは、注目してほしくてとる行動に対して、意図的に反応を控える「計画的無視」という方法を実践しつつも、他により良い方法がないか模索し続ける保護者の姿勢が見えてきます。

  • 「無視する」ことは、愛情を注がないことではなく、注目という「ごほうび」を与えない工夫である
  • 望ましい行動には注目し、望ましくない行動には反応を控えるというメリハリが大切
  • 一つの方法にとらわれず、より良い方法を模索し続ける姿勢も大切
  • 「これで合っているのか」と迷うことは、多くの保護者に共通する自然な感覚である

意図的に反応を控えることは、望ましい行動への注目とセットで行うことで、より効果的な実践になります。

家庭でできるABA実践の整理

家庭でできるABA実践の整理
実践方法具体的な工夫
環境を整える(先行事象への働きかけ)音や座り心地など、行動のきっかけになる要因を調整する
できたことをすぐに褒める(強化)望ましい行動に意識的に注目し、しっかり認める
意図的に反応を控える(計画的無視)望ましくない行動には、注目という「ごほうび」を与えない

児童発達支援士について

ここまで、家庭でできるABAの実践方法についてご紹介してきました。

こうした考え方への理解を深めることと合わせて、保護者の方やご家族、現場で働く支援員の方々の間でも、発達障害への理解を深めるための学びが広がっています。

当協会が認定する「児童発達支援士」は、発達特性の理解や、行動の背景を読み解く視点、家庭や支援現場で活かしやすい関わり方などを、体系的に学べる民間資格です。

資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、お子さまと日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。

[広告]児童発達支援士バナー

Q&A|家庭でできるABAの実践に関するよくある質問

Q1:環境を整えるとは、具体的に何をすればよいですか?

音や光、座る場所の座り心地など、子どもが落ち着きにくい要因を観察し、可能な範囲で調整することから始めてみてください。

Q2:褒めるタイミングは、いつがよいですか?

望ましい行動が起きた直後に褒めることが効果的とされています。できるだけ早いタイミングで、具体的に何が良かったかを伝えることをおすすめします。

Q3:「無視する」ことに抵抗があります。

無視は、愛情を注がないことではなく、望ましくない行動への注目を控える技法です。望ましい行動にはしっかり注目することとセットで行うことが大切です。

Q4:これらの方法を試しても、うまくいかないときはどうすればよいですか?

一つの方法にこだわらず、別の工夫を試してみることも大切です。療育施設や専門家に相談しながら、その子に合った方法を見つけていくことをおすすめします。

Q5:家庭での実践は、施設や学校と共有したほうがよいですか?

共有することをおすすめします。家庭・施設・学校で一貫した関わり方をすることで、子どもにとって分かりやすい環境になります。

まとめ|行動の「前」と「後」に、少し意識を向けてみる

家庭でできるABAの実践は、難しい理論を完璧に使いこなすことではなく、行動の前後に少し意識を向けてみることから始まります。

  • 環境を整えて、行動のきっかけ(先行事象)を減らす
  • できたことをすぐに認め、褒めることで行動を強化する
  • 望ましくない行動には、意図的に反応を控える

これらの工夫は、特別な道具がなくても、今日から家庭で試すことができます。次回は、ABAを取り入れている施設の見分け方について、ABCモデルやDTTといった専門用語も交えて紹介していきます。

【注意事項】

この記事で紹介している内容は、ABAの実践方法に関する一般的な知識と、当協会が収集した体験談の一部をもとにまとめています。子どもの特性や状況には個人差があり、一つの方法がすべての子どもに合うとは限りません。支援方法については、必要に応じて専門機関にご相談ください。

一般社団法人 人間力認定協会 理事・事務局長 望月宏彰

執筆者

一般社団法人 人間力認定協会 事務局長
望月 宏彰

【プロフィール】
一般社団法人 人間力認定協会 理事・事務局長の望月 宏彰です。3児の父。「児童発達支援士」など各種資格を通じて延べ5万人以上の支援をサポート。「日本の資格・検定」アワードにて「児童発達支援士(2022年)」および「メンタルヘルス支援士(2026年)」の受賞実績を有しています。 当サイトでは、最新の療育情報や現場で役立つ支援に関する知識、施設選びに役立つ透明性の高い情報を配信しています。なお、本記事は当協会が提供する「児童発達支援士」等の資格講座の受講者アンケート等をもとに、講座を運営する当協会自身が執筆したものです。

関連コラム