トラブルが多い子への関わり方|謝れない・納得できない背景にある発達特性と支援の視点

「自分が悪くても言い返してしまう

発達障害のある子どもの中には、友達トラブルや学校での衝突が繰り返し起きやすい子がいます。

その結果、

  • 「反省していない」
  • 「わざとやっている」
  • 「言い訳ばかり」
  • 「自分勝手」

と見られてしまうことも少なくありません。

ただ実際には、“謝りたくない”というより、

  • 自分の気持ちを整理できない
  • 納得できないまま叱られている
  • 「悪いことをした」という理解に時間がかかる
  • 強い不安や悔しさで頭がいっぱいになっている

といった背景が関係しているケースもあります。

私は協会の事務局長として、延べ5万人以上の保護者・支援者が学ぶ場の運営に関わる中で、対人トラブルを繰り返す子どもたちの声に数多く触れてきました。

実際に体験された方からの声を見ていくと、“問題行動”だけでは整理できない、「うまく伝えられない苦しさ」や「理解のズレ」が見えてきます。

この記事では、協会が保有する一次情報(支援士インタビュー)をもとに、トラブルが多い子どもの背景や、“謝れない・納得できない”場面で大切にしたい関わり方について整理していきます。

>「遊びたい」が強すぎる子への支援|切り替え・執着・友達トラブルの背景にある発達特性とは

本記事で紹介している一次情報について

本記事では、当協会が認定する児童発達支援士資格または、発達障害コミュニケーションサポーター資格に合格され、認定支援士に登録された方から寄せられた声を紹介しています。一次情報の詳細は下記のとおりです。

項目詳細
回答者児童発達支援士または発達障害コミュニケーションサポーター合格者
属性保護者、療育施設スタッフ、保育士、教員など
有効回答数255件
情報取得日2022年7月~2026年5月
質問1児童発達支援士の資格を取ろうと思ったきっかけは?
質問2発達障がい児支援をしていて最も辛かったことは何ですか?
質問3発達障害に関する知識を習得したことで、何か変化はありましたか?
質問4ご自身と似た境遇で悩んでいる方に何かアドバイスはありますか?
質問5発達障がい児の支援を行う上で大切だと感じていることは何ですか?

トラブルが多かった子どもたちの声

トラブルが多かった子どもたちの声

実際に寄せられた声からは、“わざと困らせている”とは言い切れない背景が見えてきました。

① 注意されると強く反発していた

「“でも!”とすぐ言い返していた」

「自分の言い分を止められなかった」

「怒られると余計にヒートアップしていた」

発達障害のある子どもの中には、注意された瞬間に強い不安や悔しさがあふれ、気持ちを整理できなくなる子もいます。

本人としては“反抗したい”というより、「わかってほしい」が強く出ているケースも少なくありません。

② 「謝りなさい」が逆効果になっていた

「無理に謝らせると固まっていた」

「納得していないまま謝っていた」

「謝ったあとも気持ちは荒れていた」

トラブル対応では、“謝ること”ばかりが優先されてしまう場面もあります。

ただ、本人の中で状況整理ができていないまま謝罪だけを求められると、「自分だけが悪い」と感じてしまい、さらに混乱するケースもあります。

③ 本人なりの“理由”があった

「先に嫌なことをされたと言っていた」

「ルールを守っていない相手に怒っていた」

「自分では正しいと思っていた」

周囲から見ると“トラブルを起こした側”でも、本人の中には本人なりの理由があることがあります。

特に発達障害のある子どもの中には、

  • ルールへのこだわり
  • 不公平への敏感さ
  • 感情の切り替えの難しさ

などが強く出る子もいます。

④ トラブル経験が自己否定感につながっていた

「また怒られたと言っていた」

「どうせ自分が悪いんでしょと言っていた」

「学校へ行きたくないと言うようになった」

トラブルが繰り返されると、「また失敗した」「また怒られた」という感覚が積み重なっていきます。

その結果、“問題行動”の裏で自己否定感が強くなっている子どもも少なくありません。

>小学校高学年で増える対人トラブル|ASD・ADHDの“見えにくい困りごと”と友達関係の変化

トラブルが多かった子どもたちに共通していた背景

トラブルとして見えやすかった行動背景にあった困りごと
注意されると強く言い返してしまう気持ちの整理が追いついていなかった
「謝りなさい」で固まったり反発したりする納得できないまま責められている感覚があった
自分の正しさを強く主張するルールや不公平への敏感さが強かった
同じようなトラブルを繰り返す「どう対応すればいいか」が整理できていなかった
「どうせ自分が悪い」と言うようになる失敗体験や叱責経験が積み重なっていた

「謝れない」「納得できない」背景とは

ここからは、発達障害のある子どもが“謝れない”“納得できない”状態になりやすい背景について整理していきます。

① 気持ちの整理に時間がかかることがある

  • 悔しい
  • 怖い
  • 納得できない
  • 混乱している

こうした感情が一気にあふれることで、“今何を言われているのか”を整理できなくなる子どももいます。

その状態で「謝りなさい」と言われても、頭の中が追いつかず、さらに反発が強くなるケースもあります。

まず必要なのは、“落ち着いて考えられる状態”を作ることなのです。

② 「自分だけ怒られている」と感じやすい

  • 相手も悪いと思っている
  • 先に嫌なことをされた
  • 不公平だと感じている

こうした気持ちが強いと、“納得できない状態”になりやすくなります。

特に発達障害のある子どもの中には、「ルールは全員同じであるべき」という感覚が強い子もいます。

そのため、“自分だけが怒られている”と感じると、不満や反発が大きくなることがあります。

③ 「謝る=負け」と感じているケースもある

トラブル経験が多い子どもの中には、「謝ったら全部自分が悪いことになる」と感じているケースもあります。

そのため、

  • 言い訳を続ける
  • 黙り込む
  • 逆ギレする

など、“自分を守る反応”が出る子どももいます。

これは反省していないというより、“これ以上傷つきたくない”という防衛反応として出ている場合も考えられます。

④ 「叱る」だけでは改善しにくい

  • 何が問題だったのか
  • 相手はどう感じたのか
  • 次はどうすれば良いのか

こうした部分を具体的に整理していく支援が重要です。

「なんでわからないの!」だけでは、本人も“何を直せばいいのか”が見えにくいのです。

だからこそ、“失敗から学べる形”に整理していく視点が必要になります。

学校や家庭で大切にしたい関わり方

① 感情が強い時は先に落ち着かせる

強く興奮している状態では、話を理解する余裕がなくなっていることがあります。

まずは、

  • 安全を確保する
  • 刺激を減らす
  • 少し時間を置く

といった対応が重要です。

② 「謝る」より“整理する”を優先する

トラブル対応では、「とにかく謝らせる」ことが優先される場面もあります。

ただ、

  • 何が起きたのか
  • どこでズレたのか
  • 相手はどう感じたのか

を整理していくことで、初めて理解につながる子どももいます。

③ 「悪い子」と決めつけない

トラブルが続くと、周囲も疲弊してしまいます。

ただ、本人なりに「わかってほしい」「ちゃんとしたい」と頑張っているケースも少なくありません。

“問題行動”だけを見るのではなく、その背景を見る視点が大切です。

④ 成功体験を積み重ねる

  • 落ち着いて話せた
  • 相手の話を聞けた
  • 自分の気持ちを言葉にできた

こうした“小さな成功”を積み重ねることで、少しずつ自己理解や対人スキルにつながっていきます。

>友達との距離感がわからない子への支援|しつこい・一方的・空気が読めない背景にある発達特性とは

家庭での関わりを整えるために役立つ学び

子どもの困りごとは、発達特性だけでなく、環境・関わり方・本人の感じ方や経験など、さまざまな要因が複雑に関係しています。

そのため、「どう対応すればいいのか分からない」「毎日怒ってしまい自己嫌悪になる」と感じたときは、保護者や支援者だけで抱え込まず、発達支援に関する知識や考え方を少しずつ学んでいくことも大切です。

実際には、

・発達障害や感覚特性に関する書籍を読む
・療育施設や支援機関に相談する
・保護者会や経験者の声を参考にする
・専門資格や研修で体系的に学ぶ

など、さまざまな学び方があります。

大切なのは、「子どもを無理に変える方法」を探すことではなく、子どもの特性や困りごとの背景を理解し、少しでも生活しやすくなる視点を持つことです。

一般社団法人 人間力認定協会の「児童発達支援士」でも、

・発達特性の理解
・行動の背景を読み解く視点
・環境調整(構造化)の基本
・保護者支援やコミュニケーション

など、家庭や支援現場で活かしやすい内容を体系的に学ぶことができます。

「完璧な支援」を目指す必要はありません。
まずは、“なぜこの行動が起きるのか”を知ることが、支援を穏やかに変えていく第一歩になります。

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Q&A|トラブルが多い子への関わり方に関するよくある質問

Q1:何度言っても謝ろうとしません

“謝りたくない”というより、感情が整理できていないケースもあります。まずは落ち着ける状態を作ることが重要です。

Q2:言い訳ばかりして反省していないように見えます

本人なりに「自分の気持ちをわかってほしい」と必死になっている場合があります。反省の前に、“納得できない気持ち”を抱えているケースも考えられます。

Q3:すぐ友達とトラブルになります

距離感・感情調整・言葉の伝え方など、複数の課題が重なっている場合があります。背景を整理していく視点が大切です。

Q4:怒らない方がいいのでしょうか?

危険行為や他害には止める対応が必要です。ただ、強い叱責だけでは改善につながりにくいケースもあります。

Q5:本人が「どうせ自分が悪い」と言います

失敗経験や叱責経験が積み重なることで、自己否定感が強くなっている可能性があります。まずは“安心して話せる関係”を作ることが重要です。

まとめ|“問題行動”の奥には「うまく整理できない苦しさ」が隠れていることもある

発達障害のある子どもの中には、「謝れない」「納得できない」と見える場面の裏で、

  • 気持ちを整理できない
  • 不公平感が強い
  • 不安や悔しさでいっぱい
  • “どうすればいいか”がわからない

という状態になっている子もいます。

だからこそ、

  • 「悪い子」と決めつけない
  • 感情が落ち着いてから整理する
  • 具体的に伝える
  • 小さな成功体験を積み重ねる

こうした視点がとても重要です。

“トラブルを起こす子”として見るのではなく、「うまく整理できず困っている子」という視点で関わることで、少しずつ見えてくるものもあります。

>癇癪・パニック・切り替えの難しさを総まとめ|原因・年齢を問わず使える支援方法・独自データ・相談先を専門家が解説

【注意事項】

この記事で紹介している内容は、児童発達支援士の受講者アンケートなどに寄せられた保護者・支援者の実際の声をもとにまとめています。
子どもの特性や発達の状況、支援との相性、感じ方には個人差があり、すべての子どもに同じ変化や結果が見られるわけではありません。
支援方法や対応について判断する際は、必要に応じて医師・専門家・支援機関などと相談しながら進めてください。この記事は、保護者や支援者が理解や選択の参考にするための情報としてご活用ください。

一般社団法人 人間力認定協会 理事・事務局長 望月宏彰

執筆者

一般社団法人 人間力認定協会 事務局長
望月 宏彰

【プロフィール】
一般社団法人 人間力認定協会 理事・事務局長の望月 宏彰です。3児の父。「児童発達支援士」など各種資格を通じて延べ5万人以上の支援をサポート。「日本の資格・検定」アワードにて「児童発達支援士(2022年)」および「メンタルヘルス支援士(2026年)」の受賞実績を有しています。 当サイトでは、最新の療育情報や現場で役立つ支援に関する知識、施設選びに役立つ透明性の高い情報を配信しています。

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