兄弟児への影響|きょうだいが我慢しやすい家庭で起きることと“見えにくい孤立”

お兄ちゃんは大変なんだから我慢してね
「下の子は手がかからないから大丈夫」
「きょうだい児のことまで気が回らない…」

発達障害のある子どもがいる家庭では、“きょうだい児”が無意識のうちに我慢を重ねているケースがあります。

特に、

  • 癇癪対応
  • 行きしぶり
  • 通院
  • 学校対応
  • 生活リズムの調整

などで家庭全体が忙しくなると、“困りごとが目立つ子”へ支援が集中しやすくなります。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。

ただ、その中で、

  • 「迷惑をかけちゃダメ」
  • 「自分は後回しでいい」
  • 「我慢しなきゃ」

と感じながら過ごしているきょうだい児もいるのです。

私は協会の事務局長として、延べ5万人以上の保護者・支援者が学ぶ場の運営に関わる中で、“きょうだい児の苦しさ”についても数多くの声を聞いてきました。

実際の一次情報を見ていくと、“問題を起こさない子”ほど見過ごされやすい現実や、「良い子」でい続けようとする苦しさが見えてきます。

この記事では、協会が保有する一次情報(支援士インタビュー)をもとに、兄弟児への影響や、家庭の中で起きやすいこと、支援の際に大切にしたい視点について整理していきます。

>「ちゃんと育てなきゃ」が苦しい保護者へ|完璧主義と燃え尽きの背景にある“見えないプレッシャー”

本記事で紹介している一次情報について

本記事では、当協会が認定する児童発達支援士資格または、発達障害コミュニケーションサポーター資格に合格され、認定支援士に登録された方から寄せられた声を紹介しています。一次情報の詳細は下記のとおりです。

項目詳細
回答者児童発達支援士または発達障害コミュニケーションサポーター合格者
属性保護者、療育施設スタッフ、保育士、教員など
有効回答数255件
情報取得日2022年7月~2026年5月
質問1児童発達支援士の資格を取ろうと思ったきっかけは?
質問2発達障がい児支援をしていて最も辛かったことは何ですか?
質問3発達障害に関する知識を習得したことで、何か変化はありましたか?
質問4ご自身と似た境遇で悩んでいる方に何かアドバイスはありますか?
質問5発達障がい児の支援を行う上で大切だと感じていることは何ですか?

兄弟児に見られた声

兄弟児に見られた声

実際に寄せられた声からは、“良い子でいようとする苦しさ”が見えてきました。

① 「我慢するのが当たり前」になっていた

「お兄ちゃんなんだから我慢してと言われていた」

「自分の希望を言わなくなっていた」

「後回しが当たり前になっていた」

発達障害のある子どもの支援では、“今すぐ対応が必要な困りごと”が多くなりやすい傾向があります。

そのため、きょうだい児側が「自分は我慢しなきゃ」と感じやすくなるケースがあります。

② 「良い子」でいようとしていた

「迷惑をかけないようにしていた」

「親を困らせないように我慢していた」

「本音を言わなくなっていた」

きょうだい児の中には、“空気を読んで頑張りすぎる子”もいます。

特に、

  • 保護者が疲れている
  • 家庭がピリピリしている
  • 癇癪対応が続いている

といった状況では、「これ以上迷惑をかけちゃダメ」と感じやすくなることがあります。

③ 寂しさや孤立感を抱えていた

「自分だけ見てもらえていないと感じていた」

「話を聞いてもらえないと言っていた」

「家に居場所がないように感じていた」

発達障害のある子どもへの対応に時間が取られることで、きょうだい児が“寂しさ”を抱えているケースもあります。

ただ、問題行動として表面化しにくいため、周囲が気づきにくいことも少なくありません。

④ 「兄弟なんだから理解して」が負担になっていた

「家族なんだから仕方ないと言われていた」

「理解しなきゃいけないと思っていた」

「嫌と言えなかった」

もちろん、“理解し合うこと”は大切です。

ただ、きょうだい児側だけが我慢を続ける状態になると、少しずつストレスや孤立感が積み重なっていくことがあります。

>周囲に理解されない保護者の苦しさ|祖父母・学校・夫婦間で起きやすい“支援のズレ”とは

兄弟児に多かった“我慢”の共通点

家庭内で起きやすかったこと兄弟児に起きやすかったこと
「お兄ちゃんなんだから」と我慢を求められる自分の気持ちを後回しにしやすくなる
困りごとの大きい子へ支援が集中する「自分は我慢する側」と感じやすくなる
家庭全体が常に慌ただしい空気を読んで“良い子”でいようとする
保護者が疲弊している本音や寂しさを言えなくなりやすい
「兄弟だから理解して」が続く孤立感やストレスを抱え込みやすくなる

きょうだい児が我慢しやすい背景とは

ここからは、兄弟児が“我慢役”になりやすい背景について整理していきます。

① 「困っている子」が優先されやすい

  • 癇癪対応
  • 学校対応
  • 通院
  • 睡眠トラブル
  • 行きしぶり

など、発達障害のある子どもの支援では、“今すぐ対応が必要な課題”が多くなることがあります。

そのため、比較的落ち着いているきょうだい児が、“後回し”になりやすい状況が生まれることがあります。

これは保護者の愛情不足というより、“対応に追われ続ける現実”として起きやすいのです。

② 「良い子」で家庭を支えようとする子もいる

きょうだい児の中には、

  • 空気を読む
  • 我慢する
  • 親を助けようとする

といった行動が強く出る子もいます。

一見すると“手がかからない子”に見えるのですが、実際にはかなり無理をしているケースも考えられます。

特に、「寂しい」と言えないまま我慢を続けている場合、後から強い孤立感につながることもあります。

③ 「きょうだいだから理解して」が続きやすい

発達障害のある子どもの支援では、

  • 「お兄ちゃんなんだから」
  • 「少し待ってね」
  • 「今は我慢して」

という声かけが増えやすい傾向があります。

もちろん、現実的にそうならざるを得ない場面もあります。

ただ、それが長期間続くことで、“自分の気持ちは後回しでいい”という感覚につながるケースもあるのです。

④ 「問題を起こさない子」ほど見落とされやすい

きょうだい児の中には、

  • 我慢して黙る
  • 気を遣う
  • 一人で抱え込む

タイプの子もいます。

そのため、周囲が「大丈夫そう」と感じてしまい、“本当は苦しい状態”に気づきにくいことがあります。

だからこそ、“困っていないように見える子”にも目を向ける視点が重要です。

家庭で大切にしたい関わり方

① 「我慢してくれていること」に気づく

きょうだい児は、“何も言わないから大丈夫”とは限りません。

まずは、

  • 待ってくれている
  • 空気を読んでいる
  • 我慢している

という部分に気づくことが大切です。

② 「あなたも大切」と伝える

  • 一対一の時間を作る
  • 話を聞く
  • 気持ちを否定しない

こうした関わりが、“自分も大切にされている”という安心感につながります。

③ 「良い子」でいなくていい空気を作る

きょうだい児の中には、「迷惑をかけちゃダメ」と頑張りすぎる子もいます。

だからこそ、

  • 甘えていい
  • 怒ってもいい
  • 寂しいと言っていい

という空気を作ることが重要です。

④ 保護者だけで抱え込まない

発達障害児の子育てでは、保護者自身も疲弊しやすくなります。

そのため、

  • 学校
  • 支援機関
  • 家族
  • 周囲の大人

などと連携しながら、“家庭全体を支える視点”を持つことが大切です。

>発達障害児の子育てで“限界”を感じる保護者へ|孤立・疲弊・罪悪感との向き合い方

家庭での関わりを整えるために役立つ学び

子どもの困りごとは、発達特性だけでなく、環境・関わり方・本人の感じ方や経験など、さまざまな要因が複雑に関係しています。

そのため、「どう対応すればいいのか分からない」「毎日怒ってしまい自己嫌悪になる」と感じたときは、保護者や支援者だけで抱え込まず、発達支援に関する知識や考え方を少しずつ学んでいくことも大切です。

実際には、

・発達障害や感覚特性に関する書籍を読む
・療育施設や支援機関に相談する
・保護者会や経験者の声を参考にする
・専門資格や研修で体系的に学ぶ

など、さまざまな学び方があります。

大切なのは、「子どもを無理に変える方法」を探すことではなく、子どもの特性や困りごとの背景を理解し、少しでも生活しやすくなる視点を持つことです。

一般社団法人 人間力認定協会の「児童発達支援士」でも、

・発達特性の理解
・行動の背景を読み解く視点
・環境調整(構造化)の基本
・保護者支援やコミュニケーション

など、家庭や支援現場で活かしやすい内容を体系的に学ぶことができます。

「完璧な支援」を目指す必要はありません。
まずは、“なぜこの行動が起きるのか”を知ることが、支援を穏やかに変えていく第一歩になります。

児童発達支援士バナー

Q&A|兄弟児への影響に関するよくある質問

Q1:きょうだい児ばかり我慢している気がします

発達障害のある子どもの支援では、“困っている子”へ対応が集中しやすい傾向があります。その中で、きょうだい児が無意識に我慢役になっているケースがあります。

Q2:「お兄ちゃんなんだから」は言わない方がいいですか?

状況によって必要な場面もあります。ただ、それが続きすぎると、「自分は我慢する存在」と感じやすくなることがあります。

Q3:きょうだい児が本音を言いません

保護者に気を遣い、“良い子”でいようとしている可能性があります。まずは安心して気持ちを話せる空気づくりが大切です。

Q4:兄弟げんかが増えています

発達特性による距離感や感情調整の難しさ、家庭内ストレスなどが影響している場合があります。“どちらが悪い”だけで整理しない視点が重要です。

Q5:保護者として何を意識すればいいですか?

“困っていないように見える子”にも目を向けることが大切です。小さな我慢や寂しさに気づいていく視点が重要になります。

まとめ|「我慢できる子」ほど見落とされやすいことがある

発達障害のある子どもがいる家庭では、きょうだい児が、

  • 空気を読む
  • 我慢する
  • 良い子でいようとする

状態になっているケースがあります。

ただ、“問題を起こさない”からこそ、その苦しさが見落とされやすいこともあるのです。

だからこそ、

  • 我慢に気づく
  • 「あなたも大切」と伝える
  • 感情を出せる空気を作る
  • 家庭全体を支える視点を持つ

こうした関わりがとても重要になります。

“困っている子”だけではなく、“我慢している子”にも目を向けることが、家庭全体を支える支援につながっていくのです。

>カサンドラ症候群の総まとめ|保護者・支援者の声と理解のための知識を一挙整理

【注意事項】

この記事で紹介している内容は、児童発達支援士の受講者アンケートなどに寄せられた保護者・支援者の実際の声をもとにまとめています。
子どもの特性や発達の状況、支援との相性、感じ方には個人差があり、すべての子どもに同じ変化や結果が見られるわけではありません。
支援方法や対応について判断する際は、必要に応じて医師・専門家・支援機関などと相談しながら進めてください。この記事は、保護者や支援者が理解や選択の参考にするための情報としてご活用ください。

一般社団法人 人間力認定協会 理事・事務局長 望月宏彰

執筆者

一般社団法人 人間力認定協会 事務局長
望月 宏彰

【プロフィール】
一般社団法人 人間力認定協会 理事・事務局長の望月 宏彰です。3児の父。「児童発達支援士」など各種資格を通じて延べ5万人以上の支援をサポート。「日本の資格・検定」アワードにて「児童発達支援士(2022年)」および「メンタルヘルス支援士(2026年)」の受賞実績を有しています。 当サイトでは、最新の療育情報や現場で役立つ支援に関する知識、施設選びに役立つ透明性の高い情報を配信しています。

関連コラム