感覚過敏のある子どもにとって、苦手な感覚や場面との向き合い方は、一気に克服できるものではありません。無理に慣れさせようとするのではなく、スモールステップで少しずつ距離を縮めていく工夫が大切です。
たとえば、
- 選択肢や興味を通じて、少しずつ挑戦を促す方法がある
- 本人のタイミングを尊重しながら、環境を整えておく方法がある
- 負担を軽減する工夫を積み重ねることで、少しずつ慣れていくことがある
- 「克服する」より「付き合い方を見つける」という視点が大切
といった実例です。
感覚過敏へのスモールステップは、苦手をなくすことを目指すのではなく、本人が安心して挑戦できるペースを見つけることです。
この記事では、感覚過敏のある子と、スモールステップで距離を縮める工夫について、当協会に寄せられた保護者・支援者の方々の体験談をもとに整理していきます。
>集団生活・対人関係をスモールステップで広げる|1人から2人、そして集団へ|スモールステップ実践ガイド
目次
本記事で紹介している情報について
本記事は、感覚過敏への対応に関する一般的な知識を中心に、当協会が収集した体験談(感覚過敏・鈍麻に関するエピソード)の中から、スモールステップの実践例に関する記述を交えて構成しています。
| 項目 | 内容 |
| 情報の性質 | 感覚過敏への対応に関する一般的な知識+当協会体験談アンケートより抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 参照した体験談 | 感覚過敏・鈍麻に関するエピソードの中から、スモールステップの実践例に関する記述を抽出 |
| 注意点 | 子どもの特性や状況には個人差があり、一つの方法がすべての子どもに合うとは限りません |
選択肢や興味を通じて、少しずつ挑戦を促す
苦手な感覚に直接向き合わせるのではなく、本人の興味や好きなことを入り口にすることで、少しずつ挑戦を促すことができます。
実際の体験談にも、そうした工夫に関する声が見られました。
散歩先ではたんぽぽや綿毛、小さい花々があります。「ママにお花プレゼントしようか?」「何色が好きかな?」「一緒にお花見つけて花束作ろうか?」と選択を考えました。大好きなママへのプレゼントは自分での気持ちが湧いて、自ら花を見てつみ出したので、一緒に作ることで楽しさを発見できたと思いました。手を繋ぐのも「〇〇君誰とおててつなぐ?」と繰り返し伝える事で、自分からお友達を探して手が繋げられるようになりました。
この声からは、苦手な感覚(土や植物への抵抗感、手をつなぐことへの緊張)に直接向き合わせるのではなく、「ママへのプレゼント」という好きな動機を通じて、自然に挑戦できるようになった様子が分かります。
- 苦手なことへの挑戦は、本人の好きなことを入り口にすると促しやすい
- 「〇〇しようか?」という提案の形が、押し付けにならない工夫になる
- 繰り返し同じ問いかけをすることで、少しずつ自発的な行動に変わっていく
- 「やらせる」のではなく「やりたくなる」きっかけをつくる視点が大切
好きなことや興味を通じた働きかけは、苦手な感覚への挑戦を、無理のない形で後押しします。
本人のタイミングを尊重しながら、環境を整えておく
無理に着させたり触らせたりするのではなく、本人が自分のタイミングで挑戦できるよう、環境を整えておく方法もあります。
実際の体験談にも、そうした工夫に関する声が見られました。
長ズボンや襟付きのシャツなどを着ることを嫌がり、保育園の制服が着られず私服(半ズボン、襟なしの服)で登園していました。家の目に付くところに置いておき、自分のタイミングで着られるようにしていました。対策通り、「着てみよう」という気持ちになったようで、数ヶ月後に着られるようになりました。
この声からは、直接的に着せようとするのではなく、目に見える場所に置いておくことで、本人が自分の意志で「着てみよう」と思えるまで、じっくり待つ関わり方が功を奏したことが分かります。
- 無理に働きかけるより、選択肢を「見える場所に置いておく」だけの工夫もある
- 本人のタイミングを尊重することが、自発的な挑戦につながる
- 数ヶ月という時間がかかっても、焦らず待つ姿勢が大切
- 「今日はできなくても、いつかできるようになる」という長期的な視点を持つ
本人のタイミングを尊重する関わりは、じっくりと時間をかけて、確実な変化につながっていきます。
>スモールステップとは?発達支援における基本の考え方|スモールステップ実践ガイド
負担を軽減する工夫を積み重ね、少しずつ慣れていく
苦手な感覚そのものを完全になくすことは難しくても、負担を軽減する工夫を積み重ねることで、少しずつ慣れていくことがあります。
実際の体験談にも、そうした積み重ねに関する声が見られました。
療育などで素足で室内で過ごす時、テーブルでの作業時に椅子に座り足を床につけたり、その場での体操をするときにすごく嫌がりました。止まっている時に足が床につくのが嫌なので、100均で20cm四方くらいの床マットを購入し、足を置くときに敷いたら、安心して気が散らなくなり、療育に集中できました。少しずつ過敏も和らいできます。その子自身が何に一番困っているのか細かく観察することが大切です。
この声からは、100円ショップで買える身近な道具を使った小さな工夫が、子どもの安心感を大きく高め、少しずつ過敏さが和らいでいく土台になったことが分かります。
- 特別な道具でなくても、身近なもので負担を軽減する工夫ができる
- 「何が嫌なのか」を細かく観察することが、有効な工夫を見つける鍵になる
- 安心できる環境が整うことで、他の活動にも集中しやすくなる
- 小さな工夫の積み重ねが、感覚過敏の緩和にもつながっていく
負担を軽減する小さな工夫を積み重ねていくことが、感覚過敏との付き合い方を、少しずつ楽にしていきます。
>「困った行動」の奥にある感覚のSOS|遊びで育む感覚統合アプローチと家庭・保育でできる支援
感覚過敏のスモールステップ整理

| アプローチ | 実践のポイント |
| 興味を通じた挑戦の促し | 好きなことを入り口に、自発的な挑戦を引き出す |
| 本人のタイミングの尊重 | 選択肢を用意し、焦らず本人の意志を待つ |
| 負担軽減の工夫の積み重ね | 身近な道具で、何に困っているかを観察しながら調整する |
児童発達支援士について
ここまで、感覚過敏のある子と、スモールステップで距離を縮める工夫についてご紹介してきました。
こうした考え方への理解を深めることと合わせて、保護者の方やご家族、現場で働く支援員の方々の間でも、発達障害への理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「児童発達支援士」は、発達特性の理解や、行動の背景を読み解く視点、家庭や支援現場で活かしやすい関わり方などを、体系的に学べる民間資格です。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、お子さまと日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|感覚過敏のスモールステップに関するよくある質問
Q1:苦手な感覚に、無理に慣れさせたほうがよいですか?
無理に慣れさせようとすると、かえって強い拒否反応につながることがあります。本人のペースを尊重しながら、少しずつ挑戦を促す関わりをおすすめします。
Q2:本人のタイミングを待つとは、具体的にどうすればよいですか?
選択肢を目に見える場所に置いておくなど、本人が自分の意志で挑戦できる環境を整えておくことが一つの方法です。焦らず、数ヶ月単位で見守る姿勢が大切です。
Q3:感覚過敏を軽減する工夫は、どこで学べますか?
作業療法士や、感覚統合の専門知識を持つ支援者に相談することで、その子に合った工夫のヒントが得られることがあります。
Q4:好きなことを入り口にする方法は、どんな場面で使えますか?
苦手な場所や活動への参加を促す場面で活用できます。本人の興味・関心を把握しておくことが、工夫のきっかけになります。
Q5:感覚過敏は、成長とともに和らぎますか?
個人差がありますが、小さな工夫の積み重ねによって、少しずつ和らいでいく例が多く見られます。焦らず継続することが大切です。
まとめ|苦手をなくすより、付き合い方を見つける
感覚過敏のある子との関わりでは、苦手な感覚をなくすことを目指すのではなく、本人が安心して挑戦できるペースを見つけていくことが大切です。
- 選択肢や興味を通じて、少しずつ挑戦を促す
- 本人のタイミングを尊重しながら、環境を整えておく
- 負担を軽減する工夫を積み重ね、少しずつ慣れていく
これでスモールステップ実践ガイドは、次回の「療育・支援の現場に見る、スモールステップの実践例」で最終回となります。施設のデータから見えてきた、具体的な実践の姿を紹介していきます。
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、感覚過敏への対応に関する一般的な知識と、当協会が収集した体験談の一部をもとにまとめています。子どもの特性や状況には個人差があり、一つの方法がすべての子どもに合うとは限りません。支援方法については、必要に応じて専門機関にご相談ください。


