「周りの子と少し違う気がする」
「これって個性なのかな、それとも苦手さなのかな」
幼児期になると、集団で取り組む活動が増え、子どもの様子をほかの子と比べる場面も増えてきます。
そのため、子どもの発達や行動について気になり始める保護者の方も少なくありません。
特にその不安を感じやすくなるのが、小学校入学を意識し始める時期ではないでしょうか。
今回は、就学に向けた時期に、保育園で子どもたちと関わる中で感じてきたことや、実際に必要だと感じた支え方についてお伝えします。
>小さな変化を見逃さない!加配保育士が実践する「支援の記録」と成長の捉え方
目次
5歳児の発達と、園での過ごし方
5歳ごろになると、子どもたちは心も体も大きく成長していきます。
運動機能が発達し、なわとびや鉄棒、ボール遊び、ハサミを使った製作など、複雑な動きが必要な遊びにも取り組むようになります。
また、理解力・記憶力・思考力・言語能力も育ち、言葉でやりとりする力もぐんと増えていきます。
さらに、社会性も育ち、
- 身の回りのことを自分で行う
- 相手を意識しながら遊ぶ
- ルールのある遊びを楽しむ
- 集団の中で行動する
といった姿が見られるようになります。
園によっては、就学を意識した活動として、
- 持ち物を自分で管理する
- 時間を意識して動く
- 人の話を聞く
- 順番を守る
- 自分で考える
といったことを、日々の保育の中で少しずつ取り入れている場合もあります。
また、椅子に座って集中して遊ぶことや、ひらがなに親しむ活動なども、遊びの延長として取り入れられていきます。
こうした経験を通して、子どもたちは自然に「学校生活の土台」を育てていきます。
5歳ごろに見えやすくなる「得意」と「苦手」
その一方で、5歳児(年長)になると、できることが増えるからこそ、苦手なことも目立ちやすくなる時期でもあります。
たとえば、
- 運動面で苦手さがある
- 友達との関わりがうまくいかない
- ひらがなを書くのが苦手
- 言葉での説明が伝わりにくい
- 席にじっと座っていることが難しい
など、さまざまな姿が見られることがあります。
もちろん、苦手なことはどの子にもあります。
少し頑張ればできるようになることもあります。
でも、頑張ってもなかなかうまくいかないことが続くと、子ども自身が
「自分はできない」
「また怒られる」
「どうせうまくいかない」
と感じてしまうこともあります。
大人の側も、つい苦手なことに目が向きやすくなり、
「もっと練習した方がいいのかな」
「育て方が悪いのかな」
「園での関わり方がよくないのかな」
と悩んでしまうことがあります。
けれど、実際には、先生の関わり方や保護者の育て方だけが原因ということはほとんどありません。
その背景には、
- ある発達機能がまだ育ち途中であること
- 感覚の特性が関係していること
- 環境が合っていないこと
などが関わっていることがあります。
たとえば、「じっとしていられない」という姿ひとつを見ても、
- 文字が読めなくて不安だった
- 言葉だけでは理解しにくかった
- 周囲がざわざわして集中しにくかった
- 光や音などの環境が合っていなかった
ということもあります。
だからこそ、困っている行動だけを見るのではなく、その背景を知ることが大切です。
そうすることで、学校へ行くまでにどんな支援が必要か、どんな環境が合っているのか、家庭でどう向き合えばよいのかが少しずつ見えてきます。
>【園・担任との連携編】加配保育士と「クラス担任」はどう連携している?チームで子どもを育てる工夫
就学前に知っておきたい相談先・使える支援
「苦手の背景を知りたい」
「学校生活が始まる前に相談しておきたい」
そんなときは、保育園や幼稚園の先生に相談することが、まず大切な一歩です。
毎日の集団生活の中での様子を見ている先生は、気づきやヒントを持っていることが多いです。
また、必要に応じて、
- 発達支援を専門にした医療機関
- 市区町村の発達相談
- 児童発達支援センター
- 療育機関
などにつながることもあります。
就学前の時期には、次のような仕組みも役立ちます。
就学相談
入学前年度の4月〜9月ごろを目安に、発達面や就学先について相談できる場です。
学校で特別な配慮が必要かもしれない、進学先について迷っている、という場合に利用できます。
支援シート
学校生活を送るうえで、
- 知っておいてほしいこと
- 配慮してほしいこと
- 子どもに合う関わり方
などを、保護者と園・幼稚園の先生が一緒に整理し、学校へ伝えるためのものです。
こうした仕組みを活用することで、入学後のスタートが少し安心しやすくなります。
園・家庭・療育でつながっていく支援
5歳児クラスでは、園で「支援が必要かもしれない」と感じたお子さんについて、個人面談などで保護者に園での様子を伝えながら、必要に応じて就学相談につながることがありました。
その後、
- 医療機関を受診する
- 児童発達支援センターに相談する
- 定期的に療育を受ける
といった流れになることもあります。
大切なのは、園・家庭・療育が別々に動くのではなく、情報を共有しながら関わっていくことです。
園で見えている姿。
家庭で困っていること。
療育の場で取り組んでいること。
それぞれをつなげていくことで、子どもにとってわかりやすく、一貫した支え方につながっていきます。
エピソード|Bくんと就学前の1年間
ここで、実際にあったエピソードをご紹介します。
4〜5歳ごろ、クラスの子どもたちは、支援が必要な子に対して少し距離を感じている様子がありました。
嫌いなのではなく、どう関わったらいいかわからないのです。
先生たちもまた、関わり方を日々手探りで考えていました。
園では、その子の好きなことにしっかり付き合い、自己肯定感が高まるよう関わっていきました。
心が落ち着かない場面では、無理に切り替えさせようとせず、落ち着くのを待つ。
そして、好きなことをきっかけにしながら、さまざまな活動へつなげていく工夫をしていました。
保護者の理解が進んだこと
保護者の方が就学相談をしたことをきっかけに、月1回の療育に通うようになりました。
すると、すぐに大きく変わったのが、親御さんの理解でした。
家庭でも園でも、やる気が出ずにごろごろしてしまうこと、好きなことに夢中になると切り替えが難しいこと、当時はベイブレードやYouTubeに強く興味を持っていたことなどが、少しずつ整理されていきました。
園では、やりたくないわけではないけれど気持ちの切り替えが難しい場面で、
- タイマーや時計を使って時間を見える化する
- 何時まで好きなことをするかを子どもと一緒に決める
- 満足したら次の活動へ移る流れを作る
といった工夫を取り入れました。
その結果、子ども自身が目標を決めて、少しずつ気持ちを切り替えられるようになっていきました。
その様子を保護者に伝えると、家庭でも「ベイブレードをしたらお風呂に入る」など、好きなことをきっかけに生活の流れをつくる工夫を試してくださり、効果があったそうです。
療育での取り組みが園にもつながった
療育では、少人数の友達とゲームをしながら楽しく通っていました。
一方で園では、ブロック遊びの中で、自分のやり方へのこだわりが強く出る場面もありました。
「そのやり方だと回らない」「こわれちゃう」と伝えたい思いが強いけれど、うまく聞いてもらえず、友達とのトラブルにつながってしまうこともありました。
そこで園では、
- 質問カードゲームなどを使って「話す人」「聞く人」の役割を意識する
- 療育で行っている遊びを園にも取り入れる
- トラブルが起きたときは、本人にも友達にも気持ちを聞き取る
- 必要に応じて大人が代弁する
といった工夫をしていきました。
あるとき、大人が
「Bくんは、わかってもらえなくて怒っているんだって」
と代弁すると、
「え?ぼくもママが聞いてくれなくて怒っちゃう」
「先生もある!」
「みんな同じだね!」
と会話が広がっていきました。
そこから、「怒りのバロメーターが100だとしたら、今はいくつ?」という話題になり、子どもたち同士が自分の気持ちを考えたり、相手の気持ちに気づいたりするきっかけになりました。
大人が一方的に教えるのではなく、子どもたちと一緒に考えていくことが有効だったのだと思います。
友達が育っていたこと
卒園間近の3月、Bくんが久しぶりにパニックになったことがありました。
そのとき、以前「怒りのバロメーター」の話をしていた友達が、
「どうしたの?」
「怒っていてもわからないから、落ち着いて」
「話してくれないとわからないよ」
と声をかけ、落ち着くのを待ってくれたのです。
その姿は、まさに普段大人がBくんにしていた関わり方でした。
落ち着いたあと、Bくんも
「ごめんね。○○が気になっちゃったんだ」
と伝えることができました。
この場面を通して感じたのは、周りの子どもたちはBくんが嫌いだったのではなく、本当は一緒に遊びたかったのだということです。
そして、大人の関わり方は、周りの子どもたちにも伝わっていくのだと改めて感じました。
>小1プロブレムを防ぐ|元幼稚園教諭が教える「小学校入学後につまずきやすい子」の特徴と家庭でできる2つの準備
就学までに本当に大切にしたいこと
就学前になると、
「ひらがなで名前を書けるようにした方がいいですか?」
「できていないことは練習しておいた方がいいですか?」
と相談を受けることがあります。
もちろん、練習しておくことが学校生活での自信につながることもあります。
でも私は、それと同じくらい、あるいはそれ以上に、
学校で安心して過ごせる力
を大切にしたいと感じています。
たくさんのクラスメートの中で、先生が一人。
そんな環境の中で、
- 困ったときにどうするか
- 気持ちをどう切り替えるか
- どんな工夫があれば安心できるか
- 友達とどう関わるか
を、少しずつ自分なりに身につけていくことは、とても大切です。
何かを「できるようにしてあげる」ことだけでなく、
困っているときに寄り添いながら、
「どうしたらやりやすいかな」
「どんな工夫なら安心できるかな」
と、子どもと一緒に考えて試していくことが、就学前の支えとして大きな意味を持つのだと思います。
実際にBくんは、学校でも「集中が難しいときは部屋の後ろでクールダウンしてもよい」というルールのもと過ごしていると聞きました。
園で一緒に考えてきた対応が、学校生活の土台にもなっていたのだと感じています。
家庭でできること
最後に、家庭で大切にしてほしいことをお伝えします。
学校に行く前に心配なことがあるときは、一人で抱え込まず、人の手を借りて相談することです。
身近な人には話しにくいこともあるかもしれません。
そんなときは、市区町村の相談機関や専門機関を利用してもいいのです。
そしてこの時期は、子どもとどのように向き合うかを、たくさん考えて、試してみてほしいと思います。
すぐにすべてがうまくいかなくても大丈夫です。
その積み重ねは、必ず子どもの土台になっていきます。
まとめ
就学前の時期は、子どもの育ちの中でも、保護者が不安を感じやすい時期です。
けれど、その不安は「準備不足」ではなく、子どもを大切に見ているからこそ生まれるものでもあります。
大切なのは、
- 苦手な行動だけを見るのではなく、背景を知ろうとすること
- 園・家庭・療育で情報を共有すること
- できることを増やすだけでなく、安心して過ごせる工夫を考えること
- 子どもと一緒に、やりやすい方法を探していくこと
です。
就学はゴールではなく、新しい生活のスタートです。
その子らしく学校生活を始められるように、今の時期にできる準備を少しずつ重ねていけたらよいですね。
よくある質問
Q1. 就学前に、ひらがなや数の練習はどこまで必要ですか?
ある程度親しんでおくことは自信につながる場合があります。ただし、できることを増やすことだけでなく、学校で安心して過ごせることや、困ったときに工夫できることも同じくらい大切です。
Q2. じっと座れない、切り替えが苦手な場合は、練習で改善しますか?
練習だけでなく、その子に合った環境や関わり方を見つけることが大切です。言葉だけでは伝わりにくい、時間の見通しが持ちにくい、感覚的に疲れやすいなど、背景に別の理由があることもあります。
Q3. 就学相談は、どんなときに受けたらよいですか?
学校生活に不安があるとき、配慮が必要かもしれないと感じるとき、進学先について迷いがあるときなどに相談を検討できます。早めに相談することで、入学後の支援につながりやすくなります。
Q4. 家庭でできる一番大切なことは何ですか?
一人で抱え込まず、園や専門機関とつながること、そして子どもと一緒に「どうすればやりやすいか」を考えていくことです。すぐに答えが出なくても、その積み重ねが土台になります。


