着替え、片付け、靴を履くこと——毎日の生活習慣は、発達障害のある子どもにとって、思った以上に高いハードルになることがあります。スモールステップの考え方は、こうした日常の場面でこそ、具体的な力を発揮します。
たとえば、
- 着替えを、選択肢を示しながら少しずつ進める工夫がある
- 片付けを、「見せる→一緒に→一人で」の3段階で身につけた例がある
- 靴を履くことへの抵抗感を、時間を少しずつ延ばして克服した例がある
- 大人が「やってあげる」から「見守る」へ、少しずつ手を離していく視点が大切
といった実例です。
生活習慣のスモールステップは、「できるようにする」ことだけでなく、「自分でできた」という自信を積み重ねることが目的です。
この記事では、着替え・片付け・靴を履くことを中心に、生活習慣をスモールステップで身につける工夫について、当協会に寄せられた保護者の方々の体験談をもとに整理していきます。
>スモールステップとは?発達支援における基本の考え方|スモールステップ実践ガイド
目次
本記事で紹介している情報について
本記事は、生活習慣づくりに関する一般的な知識を中心に、当協会が収集した体験談(療育施設利用に関するエピソード、困りごとを乗り越えた成功エピソード、感覚過敏・鈍麻に関するエピソード)の中から、具体的な実践例に関する記述を交えて構成しています。
| 項目 | 内容 |
| 情報の性質 | 生活習慣づくりに関する一般的な知識+当協会体験談アンケートより抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 参照した体験談 | 療育施設利用エピソード、困りごとを乗り越えた成功エピソード、感覚過敏・鈍麻エピソードの中から、生活習慣に関する記述を抽出 |
| 注意点 | 子どもの特性や状況には個人差があり、一つの方法がすべての子どもに合うとは限りません |
着替え・身支度を、選択肢を示しながら少しずつ
着替えなどの身支度は、本人に選択肢を与えることで、気持ちを切り替えやすくすることができます。
実際の体験談にも、そうした工夫に関する声が見られました。
3才の時は発語もなく認知も乏しかったので、言って聞かせることは出来ず。見通しが立つように施設の写真を見せたり、行く前に何かを選ばせる(例えば、靴下を3組ぐらい用意してどれにするか?など)、気分を調整してました。
この声からは、言葉での説明が難しい子どもでも、選択肢を示すことで、本人が納得しながら身支度に取り組める工夫があることが分かります。
- 「やりなさい」という指示より、「どれにする?」という選択肢が、気持ちの切り替えを助ける
- 選択肢を2〜3個に絞ることで、選びやすくなる
- 見通しを示す工夫(写真など)と組み合わせることで、より効果的になる
- 本人の意思を尊重する関わりが、身支度への抵抗感を減らす
選択肢を示す工夫は、特別な道具がなくても、日常の中ですぐに取り入れられるスモールステップの実践方法です。
片付けを、「見せる→一緒に→一人で」の3段階で
片付けの習慣は、いきなり一人でやらせるのではなく、段階を踏んで身につけていくことで、着実に定着していきます。
実際の体験談にも、そうした段階的な取り組みに関する声が見られました。
玩具の後片付けができない。セラピストがお手本を見せる、次に一緒に片付ける、次に一人で片付けてみることを促す。最初はなかなか一緒にしてくれることも難しかったけど、母親やセラピストに誉められる経験を積んだことで、最終的に片付けの声かけ(促し)で一人でできるようになった。
物の家を細かく決めて写真、イラストを貼ってわかりやすくする。靴下、上の服、下の服、ハンカチ。おもちゃもブロック、車と分け一緒にしない。細かく表示することで、迷うことなく出したり、しまうことが出来る。何度も繰り返せば1人で出来るようになる。1人で出来ると誉める事ができ、自己肯定感が上がる。
これらの声からは、「お手本を見せる」「一緒にやる」「一人でやる」という3段階のプロセスと、物の置き場所を視覚的に分かりやすくする工夫が、片付けの習慣化を支えていることが分かります。
- 「見せる→一緒に→一人で」という3段階が、片付けの定着に有効
- 物の置き場所を写真やイラストで示すことで、迷わず片付けられる
- 繰り返すことで、少しずつ声かけだけでできるようになっていく
- 「できた」という経験と、褒められる経験が、自己肯定感の向上につながる
片付けのスモールステップは、道具(写真、イラストなど)と、関わり方の段階(見せる→一緒に→一人で)を組み合わせることで、効果的に進めることができます。
>片付けができない子どもへの関わり方|発達障害の特性を理解した支援のポイント
靴を履くことへの抵抗感を、時間を少しずつ延ばして克服
感覚過敏などにより靴を履くことが難しい子どもに対して、時間を少しずつ延ばしていく方法が効果的だった例もあります。
実際の体験談にも、そうした取り組みに関する声が見られました。
足の裏の感覚が敏感で、靴下や靴が履けない。当時の主治医から「履かせなければ一生履けない」と言われ、トレーニングのために家の中でも靴を履かせ、時間を10分→20分→30分と少しずつ長くしていった。(ゲームをしているときなど他のことに集中している時間にやるようにしました)
この声からは、いきなり長時間履かせようとするのではなく、少しずつ時間を延ばしていくことと、本人が他のことに集中している時間を活用する工夫が、抵抗感を減らす助けになったことが分かります。
- 「10分→20分→30分」というように、具体的に時間を区切って延ばしていく
- 本人が他のことに集中している時間を活用すると、抵抗感が薄れやすい
- 感覚過敏がある場合、無理に一気に慣れさせようとすると逆効果になることがある
- 専門家のアドバイスを受けながら、家庭で継続的に取り組むことが助けになる
時間を少しずつ延ばしていく方法は、感覚面の困難がある子どもへのスモールステップとして、特に有効な工夫の一つです。
生活習慣のスモールステップ整理

| 場面 | 実践のポイント |
| 着替え・身支度 | 選択肢を示しながら、本人の意思を尊重する |
| 片付け | 「見せる→一緒に→一人で」の3段階と、視覚的な物の置き場所の工夫 |
| 靴を履く | 時間を少しずつ延ばし、集中している時間を活用する |
児童発達支援士について
ここまで、生活習慣をスモールステップで身につける工夫についてご紹介してきました。
こうした考え方への理解を深めることと合わせて、保護者の方やご家族、現場で働く支援員の方々の間でも、発達障害への理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「児童発達支援士」は、発達特性の理解や、行動の背景を読み解く視点、家庭や支援現場で活かしやすい関わり方などを、体系的に学べる民間資格です。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、お子さまと日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|生活習慣のスモールステップに関するよくある質問
Q1:着替えを嫌がるとき、まず何をすればよいですか?
「どれを着る?」といった選択肢を示すことから始めてみることをおすすめします。言葉での説明が難しい場合は、実物や写真を見せる工夫も有効です。
Q2:片付けの習慣は、どのくらいの期間で身につきますか?
子どもによって差がありますが、「見せる→一緒に→一人で」という段階を、焦らず繰り返すことが大切です。数週間から数ヶ月かけて、少しずつ定着していく例が多く見られます。
Q3:靴を履くことを嫌がる場合、無理に履かせてもよいですか?
感覚過敏が背景にある場合、無理に長時間履かせようとすると逆効果になることがあります。時間を少しずつ延ばす方法や、専門家への相談をおすすめします。
Q4:スモールステップがうまくいかないとき、どうすればよいですか?
段階の刻み方が大きすぎる可能性があります。さらに小さな段階に分け直すことや、療育施設・専門家に相談することをおすすめします。
Q5:生活習慣のスモールステップは、家庭だけで行うべきですか?
家庭だけでなく、療育施設や学校と情報を共有しながら進めることで、一貫した支援につながりやすくなります。
まとめ|小さな段階の積み重ねが、生活習慣を育てる
着替え・片付け・靴を履くことといった日常の生活習慣は、スモールステップの考え方を取り入れることで、着実に身につけていくことができます。
- 着替え・身支度は、選択肢を示しながら本人の意思を尊重する
- 片付けは、「見せる→一緒に→一人で」の3段階と視覚的な工夫で身につく
- 靴を履くことへの抵抗感は、時間を少しずつ延ばすことで和らぐことがある
小さな段階を一つずつクリアしていく積み重ねが、子どもにとって「自分でできた」という自信につながっていきます。次回は、集団生活・対人関係をスモールステップで広げる工夫について取り上げます。
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、生活習慣づくりに関する一般的な知識と、当協会が収集した体験談の一部をもとにまとめています。子どもの特性や状況には個人差があり、一つの方法がすべての子どもに合うとは限りません。支援方法については、必要に応じて専門機関にご相談ください。


