発達障害のある子どもにとって、受験期は「学習」だけでなく、 メンタル・生活リズム・親子関係 に大きな揺れが出やすい時期です。
反抗期と受験期が重なる、スマホ依存が悪化する、ストレスで体調を崩す──。 親にとっても、これまでで最も難しい関わりが求められる場面が続きます。
私は協会の事務局長として、延べ5万人以上の保護者・支援者が学ぶ場の運営に関わる中で、 受験期のメンタルの揺れは「性格」ではなく「特性と環境の負荷」が原因であることを何度も見てきました。
この記事では、実際に受験に関するさまざまな困りごと経験された保護者の声をもとに、受験期に起きやすいメンタル面の困りごとと、そこから見える支援の方向性を整理します。
>発達障害の子どもに合う受験方式の選び方|推薦・AO・通信制・チャレンジスクールという多様な進路
目次
発達障がい児の受験時に関する困った経験に関する調査概要
- 調査名:発達障がい児の受験時に関する困った経験に関する調査概要
- 調査目的:発達障害の特性を持つ方が、受験時にどういった困難があるのか把握するため
- 調査対象:発達障害のある子どもを支援する保護者
- 有効回答数:11名
- 調査方法:Webアンケート調査
- 募集期間:2023年10月~2025年7月(継続的な調査)
- 調査主体:一般社団法人 人間力認定協会
- 作成責任者:事務局長 望月宏彰
受験期に起きやすいメンタルの揺れ

実際に児童発達支援士を受講した保護者からは次のような経験談をいただいています。
① スマホ依存・昼夜逆転・反抗期が重なる
「昼夜逆転を防ぐためにスマホを預かったら、投げつけられるようになった」
受験期はストレスが高まり、 スマホ依存・反抗・生活リズムの乱れ が一気に表面化しやすくなります。
② ストレスで体調を崩す・不安が強くなる
「受験ストレスで体調を崩しやすかった」
発達特性のある子どもは、 環境変化やプレッシャーに敏感で、身体症状として現れることも多いです。
③ 親の言葉が“圧”になり、関係が悪化する
「親のエゴにならないよう、どんな状況でも本人の希望を優先しようと覚悟した」
受験期は、親の焦りが子どもに伝わりやすく、 親子関係の緊張がピークになる時期 でもあります。
>ミスマッチを防ぐ進路選び|発達障がい児の特性を生かす学校選択の考え方
※この記事の内容は、児童発達支援士の受講者アンケートに寄せられた実際の声をもとにまとめていますが、感じ方や変化には個人差があります
受験期にメンタルが不安定になりやすかった背景の共通点
| 受験期に起きやすかったこと | 背景にあった負荷や状態 |
| スマホ依存や昼夜逆転が強くなる | ストレス発散手段がスマホに集中していた |
| 親子関係が悪化しやすい | 親の焦りや不安が“圧”として伝わっていた |
| 反抗的な態度が増える | 自立への葛藤と受験ストレスが重なっていた |
| 体調不良や不安症状が出やすい | 環境変化やプレッシャー負荷が大きかった |
| 声かけ次第で落ち着き方が変わる | 感情的な言葉が刺激になりやすかった |
受験期のメンタルを理解するための知識
① 受験期のストレスは「特性 × 環境負荷」で増幅する
- 自閉スペクトラム症(ASD):予定変更・曖昧さ・プレッシャーに弱い
- 注意欠如多動症(ADHD):生活リズムが乱れやすい、衝動性が強まる
- 学習障害(LD):学習負荷が高まると自己否定が強くなる
受験期はこれらの特性が重なり、 普段よりも不安・怒り・混乱が出やすい 時期です。
② 親の声かけは「短く・具体的・感情をのせない」が基本
- 「早く勉強しなさい」→ ×
- 「今日は30分だけ一緒にやろうか」→ ○
- 「なんでできないの」→ ×
- 「ここはどう工夫しようか」→ ○
感情的な言葉は、子どもにとって“圧”として伝わりやすく、逆効果になりがちです。
③ スマホ依存は「取り上げる」より「環境を整える」
- 充電場所をリビングに固定
- スマホを使う時間帯を一緒に決める
- 勉強の前後に短い休憩として使う
- 代わりのストレス発散手段を用意する
“取り上げる vs 取り上げない” の二択ではなく、 使い方の設計 が重要です。
④ 反抗期と受験期が重なるのは珍しくない
反抗期の本質は「自立への準備」。 受験期の本質も「自分で選ぶこと」。
この2つが重なると、 親の言葉がすべて否定されるように感じる時期 が生まれます。
これは“悪いこと”ではなく、 自立の前段階として自然なプロセス です。
⑤ 親が背負いすぎないために
- 学校の教育相談
- 心理士・支援員
- 家庭以外の相談先
- オープンスクールでの情報収集
- 受験方式の選択肢を広げる
親が一人で抱え込むほど、 子どものストレスも増えていきます。
家庭での関わりを整えるために役立つ学び
受験期のメンタルの揺れは、 発達特性・環境・ストレスの影響が複雑に重なる ことで起こりやすくなります。
児童発達支援士では、
- 発達特性を理解するための基礎知識
- 子どもの行動の背景を捉える視点
- 家庭での関わり方を考えるための土台
- 子どもの成長を支えるための考え方
といった “親が判断するための軸” を身につけることができます。
受験期の揺れに直面したとき、 「なぜ今この反応が起きているのか」 を理解できるだけで、 親子の関わりは大きく変わります。

まとめ:受験期は“親子で揺れる時期”であり、揺れていい
児童発達支援士を受講した保護者の声から見えてくるのは、 受験期のメンタルの揺れは「性格」ではなく「負荷の大きさ」が原因だということです。
- スマホ依存は“逃げ”ではなく“ストレス反応”
- 反抗は“拒絶”ではなく“自立の前段階”
- 親の焦りは子どもに伝わりやすい
- 受験方式は多様化しており、道は一つではない
受験期は、親子ともに揺れて当然の時期です。 その揺れを“問題”と捉えるのではなく、 一緒に乗り越えるプロセス として向き合うことが大切です。

