発達障害のある子どもは、 服・髪・水・食事・匂い・音・温度 など、家庭の中で日常的に触れる刺激に対して、 強いストレスを感じたり、逆に気づきにくかったりすることがあります。
家庭は「安心できる場所」である一方で、 生活のすべてが詰まっている場所でもあるため、感覚の困りごとが最も表れやすい環境 です。
私は協会の事務局長として、延べ5万人以上の保護者・支援者が学ぶ場の運営に関わる中で、 家庭での困りごとは“毎日の積み重ね”になるため、保護者の負担が特に大きい領域だと実感してきました。
この記事では、児童発達支援士を受講した保護者や支援者の声をもとに、 家庭で起きる感覚過敏・鈍麻の困りごとと支援のポイントを体系的に整理します。
>学校・園で起きる感覚過敏・感覚鈍麻の困りごと|音・給食・制服・行事への影響と支援のポイント
目次
感覚過敏・鈍麻に関する調査概要
- 調査名:感覚過敏・鈍麻に関する調査概要
- 調査目的:発達障がい児の感覚過敏や鈍麻の実態を把握するとともに、適切な対応を知るため
- 調査対象:発達障害のある子どもを支援する保護者や支援者
- 有効回答数:90名
- 調査方法:Webアンケート調査
- 募集期間:2025年5月~2026年3月(継続的な調査)
- 調査主体:一般社団法人 人間力認定協会
- 作成責任者:事務局長 望月宏彰
家庭で起きる感覚過敏・鈍麻の困りごと

実際に児童発達支援士を受講した保護者や支援者からは、次のような経験談をいただいています。
① 服が着られない・素材がつらい
「柔らかい素材の服しか着られません」
「靴下を履くのに30分以上かかります」
「縫い目が気になり、決まった服しか着られません」
服の素材・縫い目・タグ・ゴムなど、 肌に触れるものすべてがストレスの対象 になるケースが多く見られました。
② 髪が結べない・触れない
「髪を縛ると“ボコボコする”と言って何時間も縛り直します」
「耳掃除ができず、散髪もバリカンが使えません」
髪・耳・首筋など、 敏感な部位への刺激が強い不快感につながる ケースが多いです。
③ 食べられるものが極端に少ない
「混ざる味が嫌で、同じものばかり食べています」
「給食の匂いが気持ち悪くて食べられません」
嗅覚・味覚過敏は、 偏食・食事拒否・食べられる量の低下 につながりやすい特徴があります。
④ お風呂がつらい・水が怖い
「お風呂で顔にお湯がかかると泣き続けていました」
「水の刺激が苦手で、洗髪ができません」
水・温度・肌への刺激が複合的に負担となり、 入浴が毎日の大きなストレス になることがあります。
⑤ 家電の音がつらい(掃除機・ミキサーなど)
「掃除機をかける間中泣き続けていました」
「フードプロセッサーを使う料理ができません」
家庭の中で避けにくい音が、 生活のしづらさにつながる ケースが多いです。
⑥ 温度に気づかない(触覚鈍麻)
「真冬でも半袖ハーフパンツで過ごします」
「室内に入っても暑さを感じず、上着を脱ぎません」
触覚鈍麻は、 熱中症・脱水・体調悪化のリスク が高く、家庭での見守りが特に重要です。
>外出・公共の場で表れやすい感覚過敏・感覚鈍麻|人混み・音・光・自然環境で起きる困りごとと支援のポイント
家庭で感覚の困りごとが強く出やすかった場面
| 家庭で起きやすかった困りごと | 背景にあった感覚負荷 |
| 決まった服しか着られない | 素材・縫い目・タグなど触覚刺激が強かった |
| 食べられるものが極端に少ない | 匂い・味・食感への過敏さが大きかった |
| 入浴や洗髪を嫌がる | 水・温度・肌刺激が複合的な負担になっていた |
| 掃除機や家電音で混乱する | 突然の大きな音刺激に強いストレスを感じていた |
| 暑さや寒さに気づきにくい | 温度感覚への鈍麻が安全面のリスクにつながっていた |
家庭で起きる感覚過敏・鈍麻とは何か
① 家庭は「感覚刺激が最も多い場所」です
家庭には、 光・音・匂い・温度・触覚刺激・食事・水 など、 あらゆる感覚刺激が存在します。
そのため、感覚過敏・鈍麻の子どもにとっては、 安心できる場所であると同時に、最も困りごとが表れやすい場所 でもあります。
② 家庭での困りごとは「生活の基盤」に直結します
- 服が着られない → 外出できない
- 食べられない → 栄養が偏る
- 入浴がつらい → 清潔の維持が難しい
- 音がつらい → 家事が進まない
- 温度に気づかない → 安全面のリスク
家庭での困りごとは、 生活の質(QOL)に直接影響する ため、保護者の負担が大きくなりやすいです。
③ 家庭では「複合的な過敏」が出やすい
家庭の中では、
- 音(掃除機)
- 匂い(調理)
- 温度(お風呂)
- 触覚(服)
- 視覚(光)
など、複数の刺激が同時に存在します。
そのため、 どの感覚が原因なのか分かりにくい という特徴があります。
④ 家庭での困りごとは「予測できない刺激」に特に弱い
- 突然の音
- 急な温度変化
- 予期しない触れられ方
- 匂いの変化
- 水が飛ぶ
家庭は“予測不能な刺激”が多いため、 見通しの共有が非常に効果的 です。
⑤ 家庭での困りごとは「成長とともに変化する」
保護者や支援者の声でも、
- 服が着られるようになった
- 入浴がスムーズになった
- 食べられるものが増えた
- 音への耐性がついた
など、 理解・工夫・経験の積み重ねによる変化 が多く見られました。
家庭での支援のポイント
① 服は“素材・縫い目・サイズ”を最優先
- 綿素材
- 縫い目が外側
- タグを切る
- 大きめサイズ
- 必ず試着する
「着られる服を探す」ことが最優先です。
② 食事は“食べられるものを基準”にする
- 無理に広げない
- 混ざらないように分ける
- 匂いの少ない調理法にする
- 食べられる形に工夫する
安心して食べられることが最も大切です。
③ 入浴は“刺激を減らす工夫”が効果的
- シャンプーハット
- 水の量を調整
- 温度を一定にする
- 顔に水がかからない方法を選ぶ
入浴は複合的な刺激が多いため、 一つずつ負担を減らす ことが重要です。
④ 家電の音は“予告+環境調整”
- 掃除機の時間を知らせる
- イヤーマフ
- 別室に移動する
- 音の少ない時間帯に行う
突然の音を避けるだけで負担が大きく減ります。
⑤ 温度鈍麻には“ルール化”が有効
- 室内に入ったら上着を脱ぐ
- 水分補給の時間を決める
- 温度計を見て服装を決める
- 大人がこまめに声をかける
鈍麻は本人が気づきにくいため、 環境とルールで補う ことが重要です。
子どもの家庭での困りごとを理解するために役立つ学び
家庭での困りごとは、 発達特性・環境・経験・予測可能性 が複雑に絡み合って起きます。
児童発達支援士では、
- 発達特性を理解するための基礎
- 感覚の違いを捉える視点
- 行動の背景を読み解く力
- 無理のない支援の判断軸
といった、日常の関わりに役立つ基礎的な理解を身につけることができます。

まとめ:家庭は“感覚の困りごとが最も表れやすい場所”です
- 家庭には多くの感覚刺激が存在します
- 服・食事・入浴・音・温度など生活全体に影響します
- 複合的な過敏が出やすい環境です
- 予測できない刺激に特に弱いです
- 成長とともに変化することがあります
- 支援は“刺激を減らし、見通しを作る”ことが基本です
家庭での困りごとを理解することは、 子どもの安心と生活のしやすさを大きく高める第一歩 です。
>感覚過敏・感覚鈍麻のすべて|種類別×シーン別で理解する完全ガイド【家庭・学校・外出の困りごとと支援】
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、 児童発達支援士の受講者アンケートなどに寄せられた 保護者・支援者の実際の声 をもとにまとめています。
感覚過敏・感覚鈍麻の感じ方や困りごとは 個人差 が大きく、 すべての子どもに同じ特徴や変化が当てはまるわけではありません。
感覚に関する困りごとが強く、 生活に支障が出ている場合や安全面が心配な場合 は、 医師・専門機関・学校や園の担当者など、 専門家と相談しながら対応を進めることが大切です。
この記事は、保護者が子どもの困りごとを理解し、 関わり方を考えるための参考情報としてご活用ください。

