発達障害のある子どもは、 雷・花火・掃除機・ミキサー・校内放送・ザワザワ音 など、 日常の音に対して強いストレスを感じることがあります。
これは単なる「音が苦手」という話ではなく、 脳が音の刺激をどのように処理するか に関わる特性です。
私は協会の事務局長として、延べ5万人以上の保護者・支援者が学ぶ場の運営に関わる中で、 聴覚過敏は、生活・学習・外出・人間関係に大きな影響を与えることを実感してきました。
この記事では、児童発達支援士を受講した保護者や支援者の声をもとに、 聴覚過敏の特徴・困りごと・支援のポイントを体系的に整理します。
>肌ざわりや温度に敏感な子どもの困りごと|服・髪・水・温度の過敏・鈍麻と支援
目次
感覚過敏・鈍麻に関する調査概要
- 調査名:感覚過敏・鈍麻に関する調査概要
- 調査目的:発達障がい児の感覚過敏や鈍麻の実態を把握するとともに、適切な対応を知るため
- 調査対象:発達障害のある子どもを支援する保護者や支援者
- 有効回答数:90名
- 調査方法:Webアンケート調査
- 募集期間:2025年5月~2026年3月(継続的な調査)
- 調査主体:一般社団法人 人間力認定協会
- 作成責任者:事務局長 望月宏彰
聴覚過敏に関する経験談

実際に児童発達支援士を受講した保護者や支援者からは、次のような経験談をいただいています。
① 雷・花火が怖い
「雷が鳴り出すと天気アプリの雷レーダーから目が離せません」
雷や花火のような突然の大きな音は、 「来る」と分かっていても強い恐怖を感じやすいです。 特に雷は避けようがなく、常に警戒状態になってしまう 子もいます。
② 掃除機・ミキサーが無理
「掃除機をかける間中泣き続けていました」
「フードプロセッサーを使う料理が子どものいる部屋ではできません」
家庭の中で日常的に使う家電の音が、 子どもにとっては“耐えがたい刺激” になっているケースが多く見られました。
③ 音酔いで映画館にいられない
「観たい作品でも、映画館で最後まで座っていられたことがありません」
「必ず途中で一時退席します」
大きな音・響く音・長時間の音刺激が続くことで、 頭痛・吐き気・強い疲労感(音酔い) を感じる子もいます。
④ ザワザワ音で集中できない
「外に出ると、いろんな人の声が一緒に耳に入ってきてすぐ疲れてしまいます」
「教室の雑音で落ち着けず、友達を押してしまうことがあります」
一つ一つの音が大きいわけではなくても、 複数の音が重なる環境そのものが負担 になっているケースも多いです。
>光・反射・視界の情報に敏感な子ども|視覚過敏の特徴と生活の困りごと
聴覚過敏で生活に影響しやすかった困りごと
| 日常で起きやすかった困りごと | 背景にあった聴覚負荷 |
| 雷や花火を極端に怖がる | 突発的な大きな音への警戒が強かった |
| 掃除機やミキサーでパニックになる | 機械音を強い刺激として感じていた |
| 映画館やホールで途中退席する | 長時間の音刺激で音酔いしやすかった |
| 教室のザワザワ音で集中できない | 複数の音を同時に処理する負荷が大きかった |
| サイレンや放送で耳をふさぐ | 高音・突然音への反応が強かった |
聴覚過敏とは何か
① 聴覚過敏は「音を強く感じすぎる状態」です
聴覚過敏は、 脳が音の刺激を“必要以上に拾いすぎる”状態 を指します。
一般的には気にならない音でも、本人にとっては
- 痛み
- 恐怖
- 脅威
- 強い不快感
として感じられることがあります。
脳の処理の特徴
- 音のフィルター機能が弱く、必要な音と不要な音を分けにくいです。
- 音の大きさを調整する機能が弱く、突然の音に強く反応しやすいです。
- 予測できない音に対して、過剰に警戒しやすいです。
誤解されやすいポイント
- 「気にしすぎ」ではありません。
- 「慣れれば大丈夫」という問題ではありません。
- 「わがまま」ではありません。
脳の処理の仕方が違うだけです。
② 聴覚過敏は「音の種類ごとに反応が違う」特徴があります
一次情報から見えてきた共通点として、 聴覚過敏は“音の種類”によって反応が大きく変わります。
- 突発音(雷・花火・警報音)
- 機械音(掃除機・ミキサー・フードプロセッサー)
- 高音・金属音(チャイム・放送)
- ザワザワ音(人混み・教室の雑音)
- 低音の振動(風の音・重機の音)
同じ「音が苦手」でも、 どの音が苦手かによって支援方法が変わります。
③ 聴覚過敏は「予測できない音」に特に弱いです
保護者や支援者の声でも、
- 雷
- 花火
- 校内放送
- 突然の大きな音
に強い恐怖を感じるケースが多く見られました。
これは、 予測できない刺激に対して脳が過剰に反応するため です。
そのため、
- 事前予告
- 見通しの共有
- 音の発生源の説明
といった工夫が非常に効果的です。
④ 聴覚過敏は「生活のあらゆる場面」に影響します
家庭
- 掃除機がかけられない
- ミキサーが使えない
- 料理の音でパニックになる
- 雷で動けなくなる
学校・園
- 校内放送でパニックになる
- 音楽会・集会がつらい
- ザワザワ音で集中できない
- 映画鑑賞が最後までできない
外出・公共の場
- 映画館で音酔いする
- ホールで途中退席する
- 人混みで疲れやすい
- サイレンで耳をふさぐ
聴覚過敏は、 生活・学習・社会参加に直結する大きなテーマ です。
⑤ 聴覚過敏は「成長とともに変化する」ことがあります
保護者や支援者の声でも、
- 小さい頃は掃除機が無理だった
- 高校生になったらイヤーマフなしで掃除機がかけられるようになった
- 音酔いが事前準備で改善した
という変化が多く見られました。
これは、 慣れというよりも、理解・工夫・経験の積み重ねによる変化 と考えられます。
聴覚過敏への支援のポイント
① 事前予告で“突然”を減らします
- 掃除機をかける前に知らせる
- 校内放送の時間や内容を共有する
- 雷アプリで見通しを持つ
予測できるだけで、恐怖が大きく減ることがあります。
② 環境調整が最も効果的です
- イヤーマフ
- ノイズキャンセリング
- 静かな席を選ぶ
- 音の少ない時間帯を選ぶ
ただし、 イヤーマフや耳栓が合わない子もいる ため、無理に使わせないことが大切です。
③ 音酔いには「事前の情報共有」が有効です
- 会場の構造
- 出入口
- 休憩スペース
- 所要時間
- パンフレットでの事前確認
「知っている」というだけで、安心感が大きく変わります。
④ 本人の“音の地図”を理解します
- どの音が苦手か
- どの程度か
- どんな状況で強まるか
- どうすれば落ち着くか
これを把握することで、支援が格段にしやすくなります。
子どもの聴覚過敏を理解するために役立つ学び
聴覚過敏は、 脳の処理・環境・経験・予測可能性 が複雑に絡み合って起きます。
児童発達支援士では、
- 発達特性を理解するための基礎
- 感覚の違いを捉える視点
- 行動の背景を読み解く力
- 無理のない支援の判断軸
といった、日常の関わりに役立つ基礎的な理解を身につけることができます。

まとめ:聴覚過敏は“音の問題”ではなく“脳の処理の違い”です
- 聴覚過敏は音を強く感じすぎる状態です。
- 音の種類ごとに反応が違います。
- 予測できない音に特に弱いです。
- 生活のあらゆる場面に影響します。
- 成長とともに変化することがあります。
- 支援は“無理をさせない”ことが基本です。
聴覚過敏を理解することは、 子どもの安心と生活のしやすさを大きく高める第一歩 です。
>感覚過敏・感覚鈍麻のすべて|種類別×シーン別で理解する完全ガイド【家庭・学校・外出の困りごとと支援】
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、 児童発達支援士の受講者アンケートなどに寄せられた 保護者・支援者の実際の声 をもとにまとめています。
感覚過敏・感覚鈍麻の感じ方や困りごとは 個人差 が大きく、 すべての子どもに同じ特徴や変化が当てはまるわけではありません。
感覚に関する困りごとが強く、 生活に支障が出ている場合や安全面が心配な場合 は、 医師・専門機関・学校や園の担当者など、 専門家と相談しながら対応を進めることが大切です。
この記事は、保護者が子どもの困りごとを理解し、 関わり方を考えるための参考情報としてご活用ください。

