「どうして私ばかりが、こんなに一人で悩んでいるんだろう……」
我が子の発達の特性や日々の行動に悩み、何とかして良い関わり方を模索しているとき、最も近くにいるパートナーや親族から、
- 「お前の育て方が悪いから甘えているだけだ」
- 「男の子なんだから、これくらい普通。神経質になりすぎだ」
- 「そのうち大きくなれば自然と治るよ」
といった、突き放すような言葉や、現実から目を背けるような対応をされたことはありませんか?
一番の理解者であってほしい家族に悩みを打ち明けても、返ってくるのは「理解不足」や「冷たい言葉」。家庭内という最も安心できるはずの場所で孤立してしまう苦しみは、子育てのエネルギーを大きくすり減らす深刻な課題です。
私は協会の事務局長として、日々多くの保護者の方々のご相談をお伺いしてきましたが、「夫や両親に子どもの特性を理解してもらえない」という壁は、多くの家庭で本当に頻繁に、そして根深く発生しています。
当協会が実施した受講生255人のアンケート(一次情報)の中にも、こうした「家族や身内からの無理解」に激しく葛藤し、そこから正しい知識を得ることで現状を打破していった先輩たちのリアルな足跡が残されています。
この記事では、先輩たちの切実な葛藤(一次情報)をご紹介しながら、なぜ「夫や親族」は理解してくれないのかという背景にある心理と、家庭内を孤立した戦場から『ひとつのチーム』へと変えていくための、具体的なコミュニケーション術について詳しく解説していきます。
目次
本記事で紹介している一次情報について
本記事では、当協会が認定する児童発達支援士資格または、発達障害コミュニケーションサポーター資格に合格され、認定支援士に登録された方から寄せられた声を紹介しています。一次情報の詳細は下記のとおりです。
| 項目 | 詳細 |
| 回答者 | 児童発達支援士または発達障害コミュニケーションサポーター合格者 |
| 属性 | 保護者、療育施設スタッフ、保育士、教員など |
| 有効回答数 | 255件 |
| 情報取得日 | 2022年7月~2026年5月 |
| 質問1 | 児童発達支援士の資格を取ろうと思ったきっかけは? |
| 質問2 | 発達障がい児支援をしていて最も辛かったことは何ですか? |
| 質問3 | 発達障害に関する知識を習得したことで、何か変化はありましたか? |
| 質問4 | ご自身と似た境遇で悩んでいる方に何かアドバイスはありますか? |
| 質問5 | 発達障がい児の支援を行う上で大切だと感じていることは何ですか? |
255人の一次情報が明かす「家族の無理解」というリアルな葛藤

受講生アンケートに寄せられた「最も辛かったこと(Q2)」や「受講のきっかけ(Q1)」を紐解くと、社会的な孤立だけでなく、「身内からの言葉」に深く傷ついた経験を持つ方が非常に多いことが分かります。
① 身内からの「しつけが悪い」という心ない言葉
1番辛かったのは、周りの人たちからの理解のなさと冷たい言葉でした。「親のしつけが悪い」「甘やかしているからだ」と身内や近所の人から言われ、どこにも我が子の居場所がないように感じて、当時は毎日のように一人で泣いていました。
特性によるかんしゃくやパニックを、身内から「しつけのせい」「親の教育不足」と決めつけられてしまう葛藤です。本来であれば一緒に支え合うべき存在からの批判は、保護者を二重に苦しめる原因となります。
② パートナー(夫・妻)との「認識の温度差」に悩む日々
夫は子どもの特性に対して『ただのわがままだ』『厳しく言えば直る』というスタンスで、家庭内での対応が完全にバラバラでした。子どもは混乱してパニックが酷くなり、私は夫へのイライラと子どもへの申し訳なさで、毎日が限界でした。客観的な知識を元に話し合いたいと思い、受講を決めました。
身近なパートナーとの「対応の不一致」に悩む声も多く見られます。片方が寄り添おうとしても、もう片方が厳しすぎる指導をしてしまうことで、子どもが一番の被害者になってしまうという構造的な課題です。
③ 「大きくなれば大丈夫」という現実逃避と専門機関への拒絶
実家の両親から「あんたの時もそうだった」「男の子はみんなそう、神経質になりすぎ」と言われ、専門機関に相談することを反対されました。身内に隠さなければいけないような空気感があり、誰にも相談できず孤独でした。
「認めたくない」という心理から、病院や療育への相談をストップさせてしまう親族の壁。周囲の「悪気のない否定」が、結果として早期支援のタイミングを遅らせてしまうケースは少なくありません。
家族の無理解で起きやすかった“孤立”の共通点
| 家庭内で起きやすかったこと | 背景にあった心理や課題 |
| 「しつけの問題」と言われてしまう | 発達特性への知識不足があった |
| 夫婦で対応がバラバラになる | 子どもの特性理解に温度差があった |
| 専門機関への相談を反対される | 「認めたくない」という不安が強かった |
| 保護者だけが孤立して抱え込む | 家庭内で共通言語が不足していた |
| 子どもが混乱やパニックを起こしやすくなる | 大人側の対応が一致していなかった |
なぜ夫や親族は「理解してくれない」のか?背景にある心理学
家族が子どもの発達特性を理解しようとしない背景には、決して「愛情がないから」という理由だけではありません。そこには、人間の心理的な防衛本能や、認知の歪みが関係しています。
- 「障害受容」のステップにおける拒絶・否認:
我が子の発達に凹凸があるという事実は、親にとって非常にショックの大きい出来事です。心理学では、ショックを受け止めるまでに「否認(認めない)」「怒り」「妥協」といったプロセス(障害受容のプロセス)を辿るとされています。母親が日々の生活の中で現実と向き合い「受容」の段階に進んでいるのに対し、仕事などで子どもと接する時間が短い父親は、まだ「否認(認めたくない)」の段階で心がストップしているケースが非常に多いのです。 - 「自分の遺伝・育て方のせい」という潜在的な恐怖と自責:
「自分の子どもに障害があるかもしれない」という現実に直面したとき、人間は無意識に「自分の遺伝のせいではないか」「自分の関わり方が間違っていたのか」という強い恐怖や罪悪感を抱きます。その恐怖に耐えられないため、脳が防衛反応として「ただのわがままだ」「しつけの問題だ」と片付け、問題を小さく見せようとしてしまうのです。 - 「主観(自分の経験則)」だけで判断している:
「俺の子供時代もそうだった」「昔はそんな言葉はなかった」と言う親族は、現代の発達障害に関する科学的なデータを持ち合わせていません。自分の狭い経験則(主観)だけを正解だと思い込んでいるため、客観的な情報が入ってこない状態にあります。
つまり、彼らが理解してくれないのは、意地悪をしているのではなく、「正しい知識を持っておらず、心が現実を受け止める準備ができていないから」なのです。
家庭内をチームに変える!3つのコミュニケーション術
家族の心理背景を理解した上で、孤立した家庭環境を「共に戦うチーム」へと変えていくための、実践的なコミュニケーションアプローチをご紹介します。
- 「私の主観」ではなく「公的な資格・データ(客観)」を間に挟む:
妻が夫に向かって「この子はADHDの傾向があるから優しくして」と言っても、夫側は「お前の考えすぎだ」と感情的な反発を招きがちです。これを、「児童発達支援士のテキストに書いてあったんだけど、脳の特性でこういう仕組みらしいよ」「専門のチェックシートでやったら、ここに凹凸があるみたい」というように、公的な第三者の視点(資格やデータ)を間に挟んで伝えます。これにより、感情論のぶつかり合いから「客観的な事実への対策」へと話し合いの質が変わります。 - 「困りごと」と「具体的な対策」をセットで、タスクとして伝える:
「もっと子どもを理解して」「優しく声をかけて」という抽象的な要望は、何をすればいいか分からず家族を困惑させます。「今この子は、耳からの指示が3つ以上重なると脳がフリーズしてパニックになる特性がある。だから、伝えるときは『1回に1つの行動だけ』を言ってほしい。これをやるとパニックが減って、結果的にお父さんも楽になるよ」というように、理由・具体的な行動・メリットをセットで伝える(構造化して伝える)ことが大切です。 - 「味方・仲間」として巻き込むステップを作る:
夫や親族を「理解してくれない敵」として責めるのではなく、「私一人じゃ限界だから、あなたの力(冷静な視点など)が必要」というスタンスで巻き込みます。例えば、テキストの短い動画を一緒に数分だけ見る、簡単な○×クイズを一緒にやってみるなど、ハードルの低いところから共通の知識を持つ体験を共有していきましょう。
家庭での関わりを整えるために役立つ学び
子どもの困りごとは、発達特性だけでなく、環境・関わり方・本人の感じ方や経験など、さまざまな要因が複雑に関係しています。
そのため、「どう対応すればいいのか分からない」「毎日怒ってしまい自己嫌悪になる」と感じたときは、保護者や支援者だけで抱え込まず、発達支援に関する知識や考え方を少しずつ学んでいくことも大切です。
実際には、
・発達障害や感覚特性に関する書籍を読む
・療育施設や支援機関に相談する
・保護者会や経験者の声を参考にする
・専門資格や研修で体系的に学ぶ
など、さまざまな学び方があります。
大切なのは、「子どもを無理に変える方法」を探すことではなく、子どもの特性や困りごとの背景を理解し、少しでも生活しやすくなる視点を持つことです。
一般社団法人 人間力認定協会の「児童発達支援士」でも、
・発達特性の理解
・行動の背景を読み解く視点
・環境調整(構造化)の基本
・保護者支援やコミュニケーション
など、家庭や支援現場で活かしやすい内容を体系的に学ぶことができます。
「完璧な支援」を目指す必要はありません。
まずは、“なぜこの行動が起きるのか”を知ることが、支援を穏やかに変えていく第一歩になります。

Q&A|家族の無理解と家庭内コミュニケーションに関するよくある質問
Q1:夫が「障害」という言葉自体を嫌がり、話し合いにすら応じてくれません
その場合は、無理に「障害」や「診断」という言葉を使う必要はありません。「この子の『個性』や『今の特徴』について、もっと関わりやすくなるコツを一緒に共有したい」というニュアンスで伝えましょう。大切なのは病名をつけることではなく、日々の家庭内での「具体的な対応(声かけや環境調整)」を一致させることです。
Q2:同居している義理の両親から「甘やかしすぎ」と言われたとき、どう対処すべきですか?
正面から反論すると角が立ちます。まずは「そう見えますよね、いつも気にかけてくださりありがとうございます」と相手の心配を受け止めた上で、「実は専門の機関(または資格の講座)で、このタイプの特性の子には、一度叱るのをやめて行動を視覚化する方が効果が出やすいと教わったんです。試しに今このやり方で実験しているので、少し見守っていただけますか?」と、専門性を後ろ盾にして伝えるのがスマートです。
Q3:夫に児童発達支援士のテキストを読ませたいのですが、全く興味を持ってくれません
分厚いテキストを渡しても、忙しいパートナーは読んでくれません。「この1ページ(または1章)のチェックリストだけでいいから、5分だけ一緒にやってくれない?」と、ピンポイントで短時間で終わる部分から誘ってみましょう。また、妻側が楽しそうに勉強し、子どもへのイライラを減らしている姿(ポジティブな変化)を見せること自体が、夫が興味を持つ最大のきっかけになります。
Q4:家族間でどうしても対応が統一できない場合、子どもへの影響は大丈夫でしょうか?
もちろん統一できるのがベストですが、どうしても難しい場合でも、「お母さん(またはメインの支援者)だけは、自分の特性を100%理解して、常に一貫した安心できる対応をしてくれる」という絶対的な安全基地が1つあれば、子どもの心は折れずに二次障害を防ぎやすくなります。まずはご自身の関わりを正しい知識で整えることに集中してください。
Q5:家族の無理解に疲れ果て、離婚を考えてしまうほど精神的に辛いです
そこまで追い詰められるのは、あなたが本当に一人で頑張りすぎてしまった証拠です。家族に理解してもらうためのエネルギーすら残っていないときは、まずは家族を説得することを諦め、専門の相談機関や、同じ資格を学ぶ受講生コミュニティ、放デイのスタッフなど「家庭の外の理解者」を頼ってください。外に味方を作ることで、あなたの心のコップを先に満たすことが最優先です。
まとめ|「正しい知識」を盾に、孤独な子育てからチームの療育へ
身近な夫や親族からの無理解は、心に深い傷を負うとても辛い経験です。しかし、255人の先輩受講生たちの歩みが示してくれているように、それはあなたの努力不足でも、子どものわがままでもありません。ただ、家庭の中に「客観的な正しい知識(共通言語)」がまだ不足しているだけなのです。
「あなたが間違っている」と家族を責める根性論のぶつかり合いは終わりにして、
- 家族の「認めたくない」という不安な心理を理解すること
- 感情論ではなく「資格やデータ」をベースに客観的に話すこと
- 「こう変えて」ではなく「この具体的なタスクをお願い」と構造化すること
これらのスマートで実践的なコミュニケーション術を取り入れることで、頑なだった家族の態度が、少しずつ「なるほど、そういうことか」と軟化し、やがて頼もしい味方へと変わっていくケースを、私たちはたくさん見てきました。
一人で暗闇の中を歩む必要はありません。当協会が提供する学びは、子どもへのアプローチだけでなく、大人同士が繋がり、家庭内を温かいチームへと再構築するための知恵でもあります。あなたと、あなたの大切な家族が、もう一度笑顔で手を携えて進める未来のために。その第一歩となる確かな知識を、ぜひ一緒に学んでみませんか?
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、児童発達支援士の受講者アンケートなどに寄せられた保護者・支援者の実際の声をもとにまとめています。
子どもの特性や発達の状況、支援との相性、感じ方には個人差があり、すべての子どもに同じ変化や結果が見られるわけではありません。
支援方法や対応について判断する際は、必要に応じて医師・専門家・支援機関などと相談しながら進めてください。この記事は、保護者や支援者が理解や選択の参考にするための情報としてご活用ください。

