多職種連携がうまくいくチームの条件|支援者が働きやすくなる“言いやすさ”と専門性の使い方

多職種が関わる療育・発達支援の現場では、同じ子どもを見ていても、職種によって“見えているもの”がまったく違います。だからこそ連携は難しく、同時に大きな可能性を秘めています。 「言いにくい」「否定されそう」「専門性の違いで話がかみ合わない」──そんな悩みは、どの施設でも起こり得るものです。

一方で、たった5分の立ち話や、誰かの小さな気づきが、次の支援の方向性を決めることもあります。 うまくいくチームには、特別な仕組みよりも“日常の空気”に共通点があります。

本記事では、支援者として現場に立つ筆者が、実際のエピソードをもとに 「多職種連携がうまくいくチームの条件」 を具体的にまとめました。 支援者同士が安心して意見を出し合い、子どもの育ちをチームで支えられる環境づくりのヒントをお届けします。

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この記事でわかること

  • 多職種連携がうまくいくチームの特徴
  • 支援者同士の“言いやすさ”が生む効果
  • 専門性を武器ではなく“橋渡し”として使う方法
  • チームで子どもを支えるためのコミュニケーション
  • 専門職が孤立しない理由とその対策
  • 意見がぶつかったときの向き合い方
  • 日常の5分がチームを強くする理由

多職種連携が求められる支援現場で

最近の療育や発達支援の現場では、さまざまな専門職が関わることが増えています。 しかし、働いてきた環境も学んできた内容も違うため、連携は簡単ではありません。私自身も連携に悩んできました。

ある日の振り返りで、職員が「今日の●●君、いつもと違う気がしました」と話してくれました。すると他の職員が「固有感覚の入力がなかったからかも」「そういえばお母さん疲れた顔してた」と次々に意見が出て、誰も否定せず、前向きな話し合いになりました。たった5分で次回の方向性が決まった瞬間でした。

多職種連携とは、特別な仕組みよりも 「気づいたことを言える」「言ったことを受け取ってもらえる」 この積み重ねだと感じています。

多職種連携がうまくいくチームの特徴

多職種連携がうまくいくチームの特徴

見えているものが違うことを理解する

発達支援の現場には、OT、ST、保育士、児発管など多様な専門職がいます。 それぞれが全く違う視点で子どもを見ており、どれも正しいけれど、どれか一つだけでは足りません。

うまくいくチームは 「見えているものが違う」ことを前提にしている ため、自分の視点を持ち寄ることに意味を感じられます。

気づきを言いやすい空気がチームを強くする

経験1年目の職員が「今日●●ちゃん、目が泳いでいた気がして…」と不安そうに話してくれたことがありました。私は「大事なことを伝えてくれてありがとう」と伝えました。

その気づきがきっかけで睡眠の課題に気づき、保護者と共有することにつながりました。

一方で、連携がうまくいかないチームでは 「言いにくい」「根拠は?と言われる」 という声が多く、情報が流れてもつながりません。

“些細な気づきを大切にする姿勢”を上の立場が示すことが、チームの空気をつくる鍵です。

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専門職が孤立しないために必要なこと

専門性に縛られすぎると視野が狭くなる

病院勤務や個別担当制など、1対1の環境で働いてきた専門職は、 「自分の考えが揺らいではいけない」と思い込み、孤立しやすくなります。

訓練中に笑ってはいけない、結果を出さなければいけない── そんな思い込みで余裕を失ってしまうこともあります。

私はよくこう伝えます。 「専門職である前に、この子にとって先生は一人の人間だよ」 「先生が楽しくないと、子どもも楽しくないよ」

子どもと楽しむ余白が専門性を支える

専門性を求められすぎると、子ども像を一方向でしか見られなくなります。 まずは肩の荷を下ろし、子どもと遊ぶこと。 そのうえで、チームの多様な視点が子どもを支える強みになることを伝えています。

多職種連携がうまくいくチームに共通していたこと

うまくいくチームの特徴現場で起きやすかった変化
小さな気づきを否定せず受け取る若手スタッフも意見を出しやすくなる
「見えているものが違う」を前提にする職種ごとの専門性が生きやすくなる
専門用語より“相手の感覚”を大切にする情報共有がスムーズになりやすい
日常的に短い会話を重ねる子どもの小さな変化に気づきやすくなる
「誰が正しいか」より「子どもに何が必要か」で話す意見の違いが対立ではなく学びになりやすい

専門性は“武器”ではなく“橋渡し”

専門用語が連携を妨げることがある

保育士が「椅子に座るのしんどそう」と言ったとき、 専門職が「前庭感覚と固有感覚の問題で…」と返してしまうことがあります。

専門的解釈は正しいかもしれませんが、 保育士が伝えたかったのは「頑張って座っている姿への心配」です。

専門性が“受け取る”ことを妨げてしまう瞬間です。

支援の目的は「できないを治す」ことではない

療育は訓練ではありません。 「楽しかった」「またやりたい」 と感じながら、自分のペースで育つことを支えるものです。

専門性は「私だけが正しい」を証明するためではなく、 気づきを深く理解するための橋渡しとして使われるときに力を発揮します。

日常の5分がチームをつなぐ

会議よりも価値がある“立ち話”

正式なカンファレンスは必要ですが、 私は昼休みの短い会話や立ち話の5分を大切にしています。

議題がなくても、子どもの話が自然と出てきて、 その一言で次の支援の方向性が変わることもあります。

文化としての「話す習慣」がチームを育てる

制度的な仕組みより、 文化として根付いた“話す習慣”のほうがチームを強くします。

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意見がぶつかったときのチームの向き合い方

正解を決めつけず、試して学ぶ

専門的なアセスメントでは意見が食い違うことがあります。 どちらも正しいことが多いからこそ、 「今の子どもにとって何が大事か」で話すことが重要です。

私はよく 「一回こっちでやってみて、来週振り返ろう」 と提案します。

試して学ぶ姿勢が、次の対話を生みます。

子どもの変化がチームをつなぐ

多職種連携の目的はチームがうまくいくことではなく、 目の前の子どもの育ちを支えることです。

「●●ちゃん、笑顔増えたね」 その一言で、バラバラだった職員の表情がほころび、会話が生まれます。

子どもの小さな変化を“みんなで喜べる”チームは最強です。

まとめ:小さな積み重ねが最強のチームをつくる

「ちゃんと聞いてもらえた」「一緒に考えられてよかった」 その小さな積み重ねが、 このチームでよかった という感覚を生み、支援の質を高めていきます。

よくある質問(Q&A)

Q1. 多職種連携がうまくいかない職場で最初に取り組むべきことは?

A.「言いやすさ」をつくることが最優先です。 否定されない経験が増えるほど、情報共有が自然に増えます。

Q2. 専門性の違いで意見がぶつかったときは?

A.「どちらが正しいか」ではなく「今の子どもに必要なのは何か」で話すこと。 一度試して振り返る方法が最も建設的です。

Q3. 若手スタッフが意見を言えないときは?

A. 小さな気づきを肯定的に受け取る経験を積ませること。 「ありがとう」「大事な視点だよ」と伝えるだけで空気が変わります。

Q4. 専門用語を使わずに連携するコツは?

A. 相手が“何を心配しているか”をまず受け取ること。 専門的解釈はその後で十分です。

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西田沙世

執筆者

児童発達支援管理責任者
西田 沙世

【プロフィール】
幼稚園教諭から療育の世界へ踏み出し、公立の通園施設・支援センターで発達支援の経験を積みました。「すべての子どもにその子に合った支援を」という思いのもと、民間の児童発達支援・放課後等デイサービス「こども遊育プレイス ぱれっと」を設立。遊びを通じて子どもの力を引き出す支援を日々実践しています。

【保有資格】
児童発達支援管理責任者、保育士、幼稚園教諭免許、臨床発達心理士、感覚統合認定士、児童発達支援士、発達障害コミュニケーションサポーター、SSTスペシャリスト、メンタルヘルス支援士、自閉症スペクトラム支援士

一般社団法人 人間力認定協会 事務局長 望月宏彰

この記事の監修

一般社団法人 人間力認定協会
監修責任者:事務局長 望月宏彰

当協会は、延べ5万人が学ぶ「児童発達支援士」等の資格認定をはじめ、専門家による調査報告書の提供、講演会、絵画コンクールの開催など、発達支援の普及と向上に向けた多角的な活動を行う専門機関です。「日本の資格・検定」アワードにおいて、2022年に「児童発達支援士」、2026年に「メンタルヘルス支援士」が受賞しており、業界から高い評価をいただいています。 本コラムは、協会の支援方針および倫理規定に基づき、正確な情報発信であるかを監修・確認しています。

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