保育や療育、そしてご家庭の日常の中で、子どもたちのこんな行動に頭を悩ませたことはありませんか?
- 「何度注意しても、椅子にじっと座っていられず立ち上がってしまう」
- 「給食やにぎやかな場所に行くと、突然泣き出したりパニックになったりする」
- 「お友達と遊ぶとき、叩く力が強すぎていつもトラブルになってしまう」
こうした姿を前にしたとき、私たちはつい「どうして言うことを聞いてくれないのだろう」「なぜわかってくれないの?」と、大人の物差しで考えてしまいがちです。
しかし、「感覚統合(かんかくとうごう)」という視点から子どもたちを見つめ直すと、景色はガラリと変わります。これらの行動のほとんどは、わがままや反抗ではなく、子どもの脳と神経系が必死に発している「感覚のSOS」であることが多いのです。
脳に飛び込んでくる様々な感覚の処理がうまくいかないために、子ども自身の意思とは関係なく、脳が「もっとこの刺激をくれ!」「この刺激が強すぎて苦しすぎる!」と悲鳴を上げ、行動としてサインを出し続けています。
今回は、児童発達支援管理責任者(児発管)の現場視点から、代表的な5つの「困り感」の背景にある感覚のメカニズムと、それを遊びのなかで楽しく適切に満たしていく具体的なアプローチを詳しく解説します。
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目次
この記事でわかること
- じっとしていられない子の脳内で起きている「前庭覚・固有覚の慢性的な不足」
- 大きな音でパニックになる子が感じている、工事現場の真横にいるような苦痛の正体
- 触られるのを極端に嫌がる「触覚防衛反応」と、愛着問題との正しい切り分け
- 激しい偏食の裏にある口腔内の感覚凸凹と、食事を楽しい遊びに変える前段階アプローチ
- かんしゃくや気持ちの切り替えができない子の脳の「オーバーヒート」を鎮める体の動かし方
- お友達を強く叩いてしまう子に力加減を教える、体の「感覚地図」の書き換え遊び

【困り感】じっとしていられない・椅子からすぐ立ち上がる
①背景にある感覚の要因:前庭覚と固有覚の「感覚探求」
この行動の多くは、「前庭覚(ぜんていかく)」と「固有覚(こゆうかく)」が慢性的に不足していることが原因です。
- 前庭覚とは:
耳の奥にある三半規管などで感じる感覚。体の動き、スピード、傾き、重力に対して自分がどこにいるかという位置情報を脳に送っています。 - 固有覚とは:
筋肉や関節で感じる感覚。「自分の体がいまどこにあり、どのくらい曲がっているか」「どのくらいの力を使っているか」を脳に伝えます。
これらの感覚入力が不足している(脳のセンサーが鈍い)と、脳は自分が今どんな姿勢でどこにいるのか不安になり、「もっと動きの情報をくれ!」とサインを出し続けます。これが「感覚探求(かんかくたんきゅう)」と呼ばれる状態です。
つまり、動き回ったり、何かに体をぶつけたりする行動は、落ち着きがないのではなく、「脳のパニックを防ぐために、脳の要求に忠度に応えている行動」なのです。
②感覚を補う遊びのアプローチ
「座りなさい!」と言葉で制止する前に、あらかじめ脳に欲しい刺激をたっぷりと先渡しして満たしてあげることが、結果として集中に繋がります。
- トランポリン:
リズミカルな上下のジャンプは、前庭覚と固有覚を同時に、かつ強力に刺激して脳を整えます。活動や勉強の前に5〜10分取り入れるだけで、その後の落ち着きが明らかに改善するケースが少なくありません。サーキット遊びのコースに組み込むのもおすすめです。 - おしくらまんじゅう:
お互いに押し合う中で、筋肉や関節にギューッと強い圧がかかり、固有覚を一気に満たすことができます。自分の体の輪郭(ここまでが自分の体だという感覚)を確認し、力加減を体に書き込んでいくのに最適な、昔ながらの優れた遊びです。 - 荷物運び競争・タオルの引っ張り合い:
砂袋や水の入ったペットボトル、重い積み木の箱などを運ぶ遊びです。筋肉と関節に強い負荷がかかるほど固有覚への入力が強くなり、活動後にすっきりとして落ち着きが出やすくなります。バスタオルの上に子どもを乗せて大人が引っ張る、あるいはロープを引っ張り合う動き(綱引き)への展開も有効です。
【困り感】大きな音でパニックになる・耳をふさぐ
①背景にある感覚の要因:聴覚のフィルタリング機能の弱さ
これは「聴覚の過反応(聴覚過敏)」が主な要因です。
定型発達の脳は、周囲にあふれる音のなかから「今聞くべき重要な音(先生の声など)」と「無視していい背景音(エアコンの音や周囲のガヤガヤ)」を無意識に遮断・フィルタリングして振り分けています。
しかし、聴覚過敏を持つお子さんの脳は、この遮断機能がうまく働きません。部屋の中にあるすべての音が、ほぼ同じ音量・同じ緊急度で脳にダイレクトに飛び込んできてしまうのです。
私たちが「激しい工事現場の真横で必死に会話をさせられているような状態」が、子どもたちにとっては毎日の給食の時間、体育館、にぎやかな電車の中で起こっています。パニックになるのはわがままではなく、神経系が耐え難い苦痛を感じているサインです。「慣れさせよう」として大きな音に無理にさらすことは、感覚統合の観点からほぼ確実に逆効果になります。
②感覚を補う遊びのアプローチ
何よりまず「本人が安心できる環境を整えること」が最優先です。イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホンの使用を、環境への参加のための「合理的配慮」として周囲が認め、安心の基地を作った上でアプローチを始めます。
- 自分でコントロールできる楽器遊び:
太鼓やタンバリン、手拍子など、自分で音を出すリズム遊びが有効です。「自分が出している音」は、脳がこれから鳴る音を事前に予測できるため、過敏反応が起きにくいという特徴があります。自ら音を出して楽しむ体験が、聴覚系の調整能力を少しずつ育てていきます。 - ささやき声ゲーム(伝言ゲーム):
周囲が静かな環境をあえて作り、小さな音に耳をすませる遊びです。「なんて言っているか当てる」というゲーム性を持たせることで、たくさんの音の中から特定の音を「選択して聞く力」や、不要な音を「遮断する力」を育てる基礎になります。 - 音探しクイズ散歩:
自然の中(風の音、水のはじける音、鳥の声など)をお散歩します。自然音は人工音に比べて穏やかで、脳にとって予測しやすい心地よい刺激です。「今、何の音が聞こえたかな?」とクイズにしたり、同じ音を見つけたりすることで、聴覚を優しく刺激し、神経系を落ち着かせます。
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【困り感】触られるのを極端に嫌がる・衣服のタグを嫌がる
①背景にある感覚の要因:防衛的な警戒系のオーバーヒート
これは「触覚防衛反応(触覚過敏)」と呼ばれる状態です。
人間の皮膚には、大きく分けて2つの触覚系が備わっています。
- 識別的な触覚:
どこを、どんな素材で触られているかを冷静に識別するシステム。 - 保護的な触覚:
虫が這ったときや危険を察知したときに、瞬時に身体をこわばらせる警戒システム。
触覚過敏を持つお子さんは、この「保護的な警戒システム」が常に過剰に活性化しています。そのため、後ろから不意に肩をポンと叩かれたり、衣服のタグや袖口がチクチクと皮膚に擦れたりするだけの軽いタッチを、脳が「痛い!危険だ!攻撃された!」と誤認識してしまいます。
赤ちゃんの頃に「抱っこを嫌がる」姿を見て、愛着形成の問題や親の育て方のせいにされがちですが、これは純粋に感覚神経系の問題であり、愛情不足とは全く別の次元の話です。
②感覚を補う遊びのアプローチ
触覚過敏へのアプローチにおける絶対的な鉄則は、「子どもが自分から、自分のペースで触れる体験を積むこと」です。他者から突然触られるのは恐怖でも、自分で触る刺激は脳が予測できるため、受け入れやすくなります。
- 感触遊び(スライム、砂場、小麦粉・片栗粉粘土):
どろっとした、あるいはサラサラした様々な感触に触れる遊びです。最初はヘラなどの道具を使って、次は指先1本だけ、大丈夫そうなら手のひら全体へ、と子ども自身にコントロールさせます。強制は絶対にNGです。大人が隣で楽しそうに触っている姿を見せることで、「触ってみたい」という自然な動機づけを促します。粉から粘土に変わる過程で感触の違いを感じることも脳に良い刺激を与えます。 - しっかりゴシゴシタオルマッサージ:
乾布摩擦のように、タオルを使って皮膚を少し強めにゴシゴシとこするマッサージです。触覚過敏の脳は、「フェザータッチ(軽い皮膚への接触)」を嫌がりますが、「深圧(ギュッと圧迫される強い刺激)」はむしろ心地よく感じて受け入れやすいという特性があります。子ども自身が自分で自分の体をゴシゴシするとさらに効果的です。タオルの素材(綿、麻など)を徐々に変えていくのも良い練習になります。 - 全身すっぽり包まれ遊び(シーツブランコ・ハンモック):
布団の中にくるまったり、大きなシーツやハンモックに包まれて優しく揺られたりする遊びです。かくれんぼの隠れ家として取り入れるのも楽しいですね。全身にくまなく心地よい「深圧刺激」が入ることで、過敏になって尖っていた神経系全体が、嘘のようにスーッと落ち着いていきます。
【困り感】偏食が激しい・特定の食感を口に入れられない
①背景にある感覚の要因:口腔内の過敏と危険予測
偏食の背景には、わがままや味の好き嫌いだけでなく、「口腔内(口の中)の触覚過敏や固有覚の処理の難しさ」が潜んでいることが多々あります。
口の中は、手のひらや足の裏と同様に、非常に細かい触覚センサーが密集している繊細な場所です。口腔内が過敏なお子さんにとって、
- トマトやナスの「ぐにゃっとした食感」
- 葉物野菜などの「繊維質で口の中でバラバラばらける食感」
- おかゆの中に具材が入っているような「水分と粒が混在する食感」
これらは、口に入れた瞬間に脳の中で「得体の知れない、耐え難い不快な異物(危険物)」として体験されています。
「食べたら美味しいから一口だけ試して」という言葉かけが一切響かないのは、本人の意志の強さの問題ではなく、脳が本気で命の危険を感じて拒絶しているからです。食事の場で無理に戦うよりも、事前の「遊び」の中で口や手の感覚を育て、恐怖心を解いていくアプローチが根本的な支援になります。
②感覚を補う遊びのアプローチ
食事の時間以外のリラックスした場面で、お口の周りや中の感覚を楽しく動かし、慣らしていきましょう。
- お口のコントロール遊び(シャボン玉・吹き戻し・ストロー):
シャボン玉を優しく吹いたり、お祭りの吹き戻しピロピロを吹いたり、机の上のピンポン玉をストローで吹いてゴールに入れるゲームなどをします。しっかり息を吐いてコントロールする遊びは、口の周りの筋肉を育てると同時に、口腔内へ「固有覚」の適度な刺激を送り、過敏さを和らげる調整に繋がります。 - お口をギュッとリセット(ガム・スルメ噛み):
(園での実施は難しい場合がありますが、ご家庭などで有効です)ガムやスルメ、干し肉など、何度も噛み応えのあるものをしっかり咀嚼(そしゃく)します。顎の筋肉をしっかり使うことで、口腔内に強い固有覚入力が入り、神経系をグッと落ち着かせる効果があります。これらを食前に行うと、お口の中のセンサーが適正化され、その後の食事の受け入れがスムーズになることがあります。 - 食材に触れる遊び(野菜スタンプ・クッキング):
食べる前段階として、季節の野菜を使ってスタンプを押したり、匂いを嗅いだり、調理の手伝いで食材をちぎったり捏ねたりします。口に入れる前に「手や目で触って、正体を知っている」という安心の体験を積み重ねることで、いざ食卓にその食材が並んだときの脳の「恐怖の警戒アラーム」が少しずつ和らいでいきます。 - お顔の真似っこあそび:
大人の顔を見て、同じように真似をする遊びです。「口をぷーっと膨らませる」「舌を左右にペロッと出す」など、変顔を真似し合うゲームの中で、お口全体の感覚を楽しく意識し、脳の発達を促します。
【困り感】かんしゃくが激しい・気持ちの切り替えができない
①背景にある感覚の要因:感覚のバケツがあふれたオーバーヒート
激しいかんしゃくや、次の活動へ移れない切り替えの難しさの背景には、「感覚調整の困難による、脳の慢性的なオーバーヒート」があります。
日々生活しているだけで、周囲の音、光、触覚、姿勢の維持など、あらゆる感覚の処理に定型発達の子の何倍もの膨大なエネルギーを使い続けている子どもたちがいます。彼らの脳のキャパシティ(バケツ)は、常に限界ギリギリの満水状態で稼働しています。
そのため、大人から見れば「そんな些細なことで?」と思うような小さなつまずき(オモチャがうまくはまらない、順番が変わった等)であっても、すでに余裕がない子どもにとっては、バケツから水があふれ出る「最後の一滴」になってしまうのです。「切り替えが下手なワガママな子」なのではなく、感覚のバケツがすでに限界を超えて決壊している状態です。
また、前庭覚や固有覚の不足は、自律神経(興奮とリラックスのスイッチ)の調整にも悪影響を及ぼします。一度興奮状態(交感神経が暴走)に入ってしまうと、自力でブレーキをかけてクールダウンするための脳の神経回路が未発達なため、長い時間泣き叫び続ける悪循環に陥ってしまいます。
②感覚を補う遊びのアプローチ
かんしゃくを起こして大爆発している真っ最中の子どもに、「落ち着きなさい!」「何が嫌だったの?」と言葉で話しかけるのは逆効果です。脳が緊急事態(過覚醒状態)にあるとき、言語を処理する脳の部屋はシャットダウンしているからです。まずは言葉ではなく、「身体への心地よいアプローチ」を通じて、神経系のブレーキを物理的に踏んであげることを優先しましょう。
- ゆっくりとした揺れ遊び(ハンモック・ブランコ):
ハンモックやブランコ、大人の膝の上などで、規則的かつゆっくりとした一定のリズムで揺らしてあげます。前庭覚への穏やかで規則的な入力は、リラックスを司る「副交感神経」を活性化させ、脳の過剰な興奮状態を優しく引き下げてくれます(※激しい揺れは逆に興奮を煽るので注意します)。 - 感情のエネルギーを逃がす壁押し・クッション押し(力いっぱいゲーム):
壁を全力で押す、みんなで大きなクッションを力いっぱいギューッと押す、悪者の人形(の設定のクッション)を押し倒す、といった遊びです。感情が高ぶっているとき、筋肉を最大出力で使う「強い固有覚入力」を与えることで、暴走した感情のエネルギーを安全な別の出口へと逃がし、神経系をリセットすることができます。他者との競争にすると勝敗でさらに興奮が強まってしまうため、「みんなで一つの目標に向かって力を合わせる」設定がベストです。 - ふーっと息を吐く遊び(ろうそく消し・タンポポ吹き):
「深呼吸して!」と言われても興奮している時はできません。そこで、「目の前にある本物のろうそく(または見立てたおもちゃ)の火を消してみよう!」「タンポポの綿毛を遠くまで飛ばそう!」と遊びに誘います。息を「長〜くふーっと吐く」動きをすると、人間の身体は解剖学的に副交感神経が優位になり、心拍数が下がって自然と落ち着きを取り戻しやすくなります。 - ビリビリ新聞破り・ブロック豪快崩し:
新聞紙を力いっぱいビリビリに引きちぎって破る、あるいは高く積み上げられた柔らかい大きなブロックのタワーに体当たりしてドカンとつぶすゲームです。自分の手や身体を直接使って「物を破壊する(でも怒られない)」という分かりやすい感覚フィードバックを得ることで、胸の中に溜まったモヤモヤしたストレス感覚を一気に発散・調整することができます。
【困り感】痛みに鈍感・お友達を強く叩いてしまう
①背景にある感覚の要因:固有覚の低反応(力加減の迷子)
怪我をしても痛がらない、あるいは、本人は優しく触るつもりなのに、お友達の肩をドスンと強く叩いたり、強く噛みついてしまったりするケースです。一見すると乱暴な行動に思えますが、この背景には「固有覚の低反応(脳に感覚が返ってこない状態)」による運動プランニングの困難が関係しています。
筋肉や関節からのフィードバック信号が非常に微弱なため、自分がいま「どのくらいの強さで筋肉を動かしているか」がリアルタイムで体感として分かりません。
お友達に「ねえねえ」と手を置くつもりなのに、自分の中で「触った」という感覚が脳に返ってこないため、無意識のうちに感覚を求めてどんどん力が強くなってしまうのです。「優しくしなさい!」と言葉で何度伝えても直らないのは、意地悪だからでも反抗しているからでもなく、感覚のフィードバックがないために、適切な力加減のグラデーションを身体が学習できていないからです。
②感覚を補う遊びのアプローチ
「優しく」という曖昧な言葉を教える前に、まずは筋肉をたくさん使って、自分の身体の正確な「感覚の地図」を脳に書き直していく遊びを行います。
- 日々の保育・生活のなかでの「重いもの運びお手伝い」:
遊びの中だけでなく、日常のなかで「お水の入った重いペットボトルを運んでくれる?」「絵本の箱をあっちまで押して移動させてくれる?」といった重労働のお手伝いを定期的にお願いします。筋肉と関節に強い抵抗(圧)がかかることで、脳の感覚地図が鮮明になり、自分の身体をコントロールしやすくなります。 - 力加減のグラデーション遊び(そっとゲーム):
粘土や柔らかいスポンジ、あるいは「強く握ると潰れてしまう豆腐や風船」などを使って、大人が手本を見せながら「アリさんの力(弱い)」「ウサギさんの力(普通)」「ライオンさんの力(強い)」を意識して触り分ける遊びです。段階的な力のグラデーションを、手のひらの触覚と固有覚を通じて視覚的・体感的に学んでいきます。 - 重さ比べゲーム・新聞粘土づくり:
見た目は同じくらいの箱の中に、それぞれ異なる重さの砂袋を入れておき、「どっちが重いかな?」「軽い順に並べてみよう!」と比べるゲームです。持ち上げるときに自然と腕の筋肉の張りを調整するため、固有覚のトレーニングになります。また、細かくちぎった新聞紙を水に溶かし、ギュッと力を込めて絞って形を作っていく「新聞粘土」も、思い切り力を入れないと固まらないという特性があるため、段階的に力を込めていく良い練習になります。 - 大根抜きゲーム:
子どもたちがマットに寝転んでお互いに腕を組んで「大根」になり、大人がそれを「うんとこしょ」と引っ張る(または子ども同士で引っ張り合う)遊びです。引っ張られないように全身の筋肉をこわばらせて耐える力と、引き抜く力の入れ具合を全力で調整する中で、固有覚が強烈に満たされます。- リトミック・ストップゲーム:
ピアノや音楽の音に合わせて、ゾウさんになってドスンドスン(強い・大きい)と動いたり、小鳥になってパタパタ(弱い・小さい)と動いたり、音楽が止まった瞬間にピタッと姿勢を止める(椅子取りゲームやストップゲーム)遊びです。音の刺激に合わせて「動く・止まる」「強く・弱く」を切り替えることで、身体の調節面・感覚面のコントロール力を楽しみながら養うことができます。
- リトミック・ストップゲーム:
感覚統合アプローチが“うまく機能しやすかった子ども”の共通点
| 効果につながりやすかった関わり | 背景にあった理由や効果 |
| 「困った行動」の背景を理解していた | 叱責より適切な支援につながりやすかった |
| 子どもが楽しめる遊びを取り入れていた | 無理なく感覚経験を積み重ねやすかった |
| 感覚特性に合わせて環境を調整していた | ストレスやパニックを減らしやすかった |
| 結果を急がず継続していた | 少しずつ感覚の整理や適応につながっていた |
| 「できないこと」より成長に注目していた | 自信や安心感を育みやすかった |
さいごに
感覚統合理論を学んで、私たちの支援や子育ての現場が最も大きく変わるのは、大人側の「子どもを見る目(視点)」です。
目の前で暴れている子、言うことを聞かない子を見たとき、 「私たちを困らせている子」という視点から、 「強い感覚の凸凹のなかで、本人が一番困っている子」へ。
この180度のパラダイムシフトが起きたとき、大人からの感情的な叱責や制止の言葉は消え、「この子の脳は、いま一体どんな感覚を求めてSOSを出しているのだろう?」という、愛に満ちた建設的な問いかけが自然と生まれてくるはずです。
遊びは、決して退屈しのぎの「ただ楽しいだけの時間」ではありません。子ども自身が「生きやすさ」を求めて自ら感覚を探求し、脳をアップデート(統合)していくための、生物として最も自然で本質的なプロセスです。
大人が無理やり「させる」訓練ではなく、子どもが思わず「したくなる」魅力的な環境と活動の選択肢を用意してあげること。それこそが感覚統合アプローチの本質であり、私たち支援者や保護者が子育てに関わる中での一番の醍醐味だと感じています。
「困った行動」の奥にある、子どもたちの健気なサインに気づいたとき、あなたとお子さんとの関わり方の選択肢は、きっと無限に広がっていくと信じています。
>集団生活で一歩リードするための感覚アプローチ|感覚を知ることがその子を知る第一歩
Q&A|よくある質問
Q1. 保育園や幼稚園の集団行動の中で、椅子に座っていられない子にはどう対応すればいいですか?
A. 「座りなさい」と叱る前に、活動の直前に固有覚・前庭覚を満たす役割(お手伝い)をお願いしたり、座る環境に工夫を凝らしてみましょう。 集団の中で一人だけ動き回ってしまうと焦りますよね。しかし、脳が刺激を求めている状態(感覚探求)のときに言葉で制止しても効果は薄いです。活動の直前に「絵本の箱を一緒に運んでくれる?」と重労働のお手伝いを頼んで固有覚を満たしたり、椅子の脚に太いゴムバンドを巻き付けて「足をパタパタ(ゴムを引っ張る)させて刺激を入れながら座れる」ようにする環境設定が有効です。また、サーキット遊びの中にトランポリンを組み込み、脳をすっきりさせてから一斉活動に入るスケジュールを組むのもおすすめです。
Q2. 偏食の激しい子に対して、園の給食や家庭の食事で「一口だけでも食べさせる」のは本当にダメですか?
A. 感覚過敏が原因の場合、「一口だけ」の無理強いは食事そのものへの恐怖感を植え付け、逆効果になります。 口の中の触覚が過敏な子にとって、特定の食感は脳内で「危険物」と判断されています。そこへ無理やり食べさせようとすると、食事の時間が「感覚の拷問」になってしまい、偏食が悪化する原因になります。食事の場で戦うのではなく、調理前の食材に触れる野菜スタンプやクッキングなど、「食べる前段階の遊び」でお口や手の感覚を育て、恐怖心を解いていくアプローチを優先してください。まずは「お皿に乗っていてもパニックにならない」「匂いを嗅げた」という一歩をたくさん褒めてあげましょう。
Q3. お友達を強く叩いてしまう子に、どうやって「やさしい力」を教えればいいでしょうか?
A. 曖昧な言葉で注意するのではなく、ぬいぐるみ等のロールプレイや「力加減のゲーム」を通して、体感としてグラデーションを学ばせましょう。 固有覚のフィードバックが弱い子は、自分が出している力の強さがリアルタイムで分かっていません。そのため、「やさしくね」と言われても、具体的にどう筋肉を動かせばいいのか迷子になってしまいます。大人が隣でやって見せながら「ぬいぐるみをこれくらいでギュッと抱っこすると、やさしい力だよ」と実況したり、スポンジや粘土を使って「アリさんの力、ウサギさんの力、ライオンさんの力」と力の段階を分けて触る「そっとゲーム・力いっぱいゲーム」で、身体が覚えるまで丁寧に力加減を教えていくのが効果的です。



