発達障害のある子どもは、 視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚・温度・痛み など、複数の感覚に同時に困りごとを抱えることがあります。
感覚の問題は、 外出・学校生活・医療・家庭生活・社会参加 に直接影響するため、 「何が原因で困っているのか」が分かりにくく、保護者や支援者が悩みやすい領域です。
私は協会の事務局長として、延べ5万人以上の保護者・支援者が学ぶ場の運営に関わる中で、 複合的な過敏・鈍麻は“気づかれにくいのに困りごとが大きい”テーマだと実感してきました。
この記事では、児童発達支援士を受講した保護者や支援者の声をもとに、 日常生活に影響する複合的な感覚の困りごとを体系的に整理します。
>家庭で表れやすい感覚の困りごと|服・食事・入浴・家電音の過敏・鈍麻と支援
目次
感覚過敏・鈍麻に関する調査概要
- 調査名:感覚過敏・鈍麻に関する調査概要
- 調査目的:発達障がい児の感覚過敏や鈍麻の実態を把握するとともに、適切な対応を知るため
- 調査対象:発達障害のある子どもを支援する保護者や支援者
- 有効回答数:90名
- 調査方法:Webアンケート調査
- 募集期間:2025年5月~2026年3月(継続的な調査)
- 調査主体:一般社団法人 人間力認定協会
- 作成責任者:事務局長 望月宏彰
日常生活に影響する複合的な過敏・鈍麻

実際に児童発達支援士を受講した保護者や支援者からは、次のような経験談をいただいています。
① 医療が難しい(歯医者・耳掃除・診察)
「耳掃除ができず、耳鼻科でお願いしています」
「歯医者に行けず、治療が進みません」
触覚・聴覚・嗅覚など複数の感覚が同時に刺激される医療行為は、 最もハードルが高い場面の一つ です。
② 外出が難しい(落ち葉・虫・人混み・音)
「落ち葉やどんぐりが怖くて外出できません」
「人混みのザワザワ音で疲れてしまいます」
視覚・聴覚・触覚が同時に刺激される外出は、 複合的な負担がかかりやすい です。
③ 学校生活で困りごとが重なる
「校内放送でパニックになり、授業に戻れません」
「給食の匂いと食感が無理で食べられません」
学校は、 音・匂い・光・人の動き・食事 が一度に存在する環境のため、 複合的な過敏が出やすい場面です。
④ 服薬ができない・健康管理が難しい
「甘いシロップも粉薬も全部吐き出してしまいます」
「味覚過敏で薬が飲めず、自然治癒に頼っていました」
味覚・嗅覚・触覚(舌触り)が同時に刺激されるため、 服薬は複合的な過敏が最も出やすい行為 です。
⑤ 職場・社会生活で困りごとが続く(大人のケース)
「職場でカーテンを閉め続け、エアコンも切ってしまいます」
「地下鉄の空気が苦しくて乗れません」
大人になっても、 視覚・触覚・嗅覚・空気の質 など複数の感覚が影響し、 社会生活に困りごとが続くケースがあります。
>学校・園で起きる感覚過敏・感覚鈍麻の困りごと|音・給食・制服・行事への影響と支援のポイント
複数の感覚が重なることで負担が大きくなりやすかった場面
| 日常で起きやすかった困りごと | 同時に重なっていた感覚負荷 |
| 歯医者や診察を強く嫌がる | 音・匂い・痛み・触覚刺激が重なっていた |
| 人混みや外出で疲弊しやすい | 視覚・聴覚・触覚への情報量が多すぎた |
| 学校でパニックになる | 放送・匂い・人の動きなど複数刺激が同時に存在していた |
| 薬を飲めない | 味・匂い・舌触りへの過敏さが重なっていた |
| 社会生活で強い疲労を感じる | 光・空気感・音・温度など環境刺激の負荷が大きかった |
日常生活に影響する複合的な過敏・鈍麻とは何か
① 複合的な過敏・鈍麻は「複数の感覚が同時に負担になる状態」です
感覚過敏・鈍麻は、 1つの感覚だけで起きるわけではありません。
- 光がまぶしい(視覚)
- 匂いがつらい(嗅覚)
- 音が大きい(聴覚)
- 服が痛い(触覚)
これらが同時に起きることで、 生活全体が“しんどい”状態 になります。
特徴
- 原因が一つに見えない
- 行動の背景が複雑に見える
- 周囲から誤解されやすい
- 本人も説明が難しい
複合的な過敏は、 「何がつらいのか分からない」状態を生みやすい のが特徴です。
② 複合的な過敏は「生活のあらゆる場面」に影響します
外出
- 光+音+人混み
- 落ち葉+虫+風
- 匂い+温度+視界の情報量
学校
- 校内放送+ザワザワ音
- 給食の匂い+食感
- 体育の音+触覚刺激
医療
- 匂い+音+触覚
- 痛み+緊張+予測不能な刺激
家庭
- 服の素材+温度
- 調理の匂い+音
- 入浴の温度+水の刺激
複合的な過敏は、 「生活のどこでも困りごとが起きる」 という特徴があります。
③ 複合的な過敏は「予測できない刺激」に特に弱いです
- 突然の音
- 予期しない匂い
- 触れられる
- 光が反射する
- 虫が飛ぶ
複数の刺激が同時に起きると、 脳が処理しきれずパニックにつながる ことがあります。
④ 複合的な過敏は「安全面のリスク」が高い(鈍麻の場合)
- 暑さに気づかない
- 脱水に気づかない
- ケガに気づかない
- 体調悪化に気づかない
触覚鈍麻・痛覚鈍麻は、 本人が危険に気づけない ため、周囲のサポートが特に重要です。
⑤ 複合的な過敏は「成長とともに変化する」ことがあります
保護者や支援者の声でも、
- 外出ができるようになった
- 服薬ができるようになった
- 学校生活が安定した
- 医療が受けられるようになった
など、 理解・工夫・経験の積み重ねによる変化 が多く見られました。
複合的な過敏・鈍麻への支援のポイント
① 刺激を“分解”して理解する
- 光
- 音
- 匂い
- 触覚
- 温度
「どの刺激が負担なのか」を一つずつ見ていくことで、 支援の方向性が見えやすくなります。
② 事前予告・見通しを徹底する
- 外出前にルートを確認
- 校内放送の時間を共有
- 医療は写真や動画で説明
- 給食のメニューを事前に確認
予測できるだけで、負担が大きく減ります。
③ 環境調整が最も効果的
- 遮光レンズ
- イヤーマフ
- 柔らかい服
- 静かな席
- 落ち葉の少ない道
- 匂いの少ない場所
複合的な過敏は、 環境を整えるだけで生活が大きく変わる ことがあります。
④ 本人の“感覚の地図”を理解する
- 何が苦手か
- どの程度か
- どんな場面で強まるか
- どうすれば落ち着くか
複合的な過敏は、 本人の感覚の特徴を理解することが最も重要 です。
子どもの複合的な過敏・鈍麻を理解するために役立つ学び
複合的な過敏・鈍麻は、 発達特性・環境・経験・予測可能性 が複雑に絡み合って起きます。
児童発達支援士では、
- 発達特性を理解するための基礎
- 感覚の違いを捉える視点
- 行動の背景を読み解く力
- 無理のない支援の判断軸
といった、日常の関わりに役立つ基礎的な理解を身につけることができます。

まとめ:複合的な過敏・鈍麻は“生活全体のしんどさ”につながります
- 複数の感覚が同時に負担になる状態です
- 外出・学校・医療・家庭などあらゆる場面に影響します
- 予測できない刺激に特に弱いです
- 鈍麻は安全面のリスクが高いです
- 成長とともに変化することがあります
- 支援は“刺激を分解して理解する”ことが基本です
複合的な過敏・鈍麻を理解することは、 子どもの生活全体を支えるための大切な一歩 です。
>感覚過敏・感覚鈍麻のすべて|種類別×シーン別で理解する完全ガイド【家庭・学校・外出の困りごとと支援】
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、 児童発達支援士の受講者アンケートなどに寄せられた 保護者・支援者の実際の声 をもとにまとめています。
感覚過敏・感覚鈍麻の感じ方や困りごとは 個人差 が大きく、 すべての子どもに同じ特徴や変化が当てはまるわけではありません。
感覚に関する困りごとが強く、 生活に支障が出ている場合や安全面が心配な場合 は、 医師・専門機関・学校や園の担当者など、 専門家と相談しながら対応を進めることが大切です。
この記事は、保護者が子どもの困りごとを理解し、 関わり方を考えるための参考情報としてご活用ください。

