子どもの怒りに向き合う大人自身も、 イライラ・焦り・怒りの衝動 を抱えることがあります。
思い通りに動いてくれない、何度言っても変わらない、突然の癇癪に巻き込まれる──。 こうした状況が続くと、大人の心も疲れ、怒りが噴き出しやすくなります。
私は協会の事務局長として、延べ5万人以上の保護者・支援者が学ぶ場の運営に関わる中で、 大人の怒りは「我慢が足りない」のではなく、 負荷・特性・状況の積み重ねで起きる自然な反応 だと感じてきました。
この記事では、児童発達支援士を受講した保護者や支援者からいただいたアンガーマネジメントに関する声、 大人自身の怒りとの向き合い方と、そこから見える実践的なポイントを整理します。
>発達障がい児の怒りの爆発にどう向き合うか|癇癪・パニック時の支援の実例
目次
アンガーマネジメントに関する調査概要
- 調査名:アンガーマネジメントに関する調査概要
- 調査目的:発達障がい児の怒りの対処法や支援者の怒りの対象の実態を把握するため
- 調査対象:発達障害のある子どもを支援する保護者や支援者
- 有効回答数:6名
- 調査方法:Webアンケート調査
- 募集期間:2024年5月~2024年12月(継続的な調査)
- 調査主体:一般社団法人 人間力認定協会
- 作成責任者:事務局長 望月宏彰
大人の怒りの爆発事例

実際に児童発達支援士を受講した保護者や支援者からは、次のような経験談をいただいています。
① 自閉スペクトラム症(ASD)傾向があり、怒るとすぐ口に出してしまう
「怒るとすぐに口に出してしまい喧嘩に発展するため、一旦我慢して口を開けないようにしている」
② 現実逃避でクールダウン
「鼻歌を歌う、掃除をする、携帯ゲームを無心でする、草取りをする。怒りのもとから目を背ける」
③ 子どもに怒りをぶつけないために距離を取る
「イライラするから別室で休んでくるね、と言って離れるのが理想だが、説明まではできなかった」
大人の怒りは、 衝動・疲労・特性・環境負荷 が重なったときに強く出やすい傾向があります。
>発達障害のある子どもの「誤解から生まれる怒り」への支援|無視された・順番が守れないなどのケース
※この記事の内容は、児童発達支援士の受講者アンケートに寄せられた実際の声をもとにまとめていますが、感じ方や変化には個人差があります
保護者や支援者が怒りを強く感じやすかった背景
| 大人側に起きやすかったこと | 背景にあった負荷や状態 |
| 大人側に起きやすかったこと | 背景にあった負荷や状態 |
| 子どもに強く言いすぎてしまう | 疲労やストレスが限界に近づいていた |
| 衝動的に言葉が出てしまう | 特性や感情調整の難しさが重なっていた |
| 「もう無理」と感じる瞬間がある | 一人で抱え込む状況が続いていた |
| 別室に離れると落ち着きやすい | 距離を取ることで刺激負荷が下がっていた |
| 怒りの背景を整理すると冷静になれる | 不安・疲れ・焦りなど一次感情が隠れていた |
大人の怒りの背景を理解するための知識
① 大人も“怒りの前兆”を持っています
怒りは突然爆発するように見えて、実際には次のような前兆があります。
- 呼吸が浅くなる
- 体が熱くなる
- 眉間に力が入る
- 心の中で否定的な言葉が増える
この段階で気づけると、怒りの爆発を防ぎやすくなります。
② 怒りは“自分を守るための反応”です
怒りは悪い感情ではなく、次のような役割があります。
- 自分の限界を知らせる
- 危険や負荷を知らせる
- 心のSOSを伝える
怒りを「抑え込むべきもの」と捉えるのではなく、 “自分の状態を知らせるサイン”として理解することが大切です。
③ 特性によって怒りの出方が変わります
保護者や支援者の声にもあったように、大人自身がASD傾向を持つ場合、
- 衝動的に言葉が出やすい
- 状況の変化に弱い
- 相手の意図を読み違えやすい
といった特徴があり、怒りが強く出やすいことがあります。
これは性格ではなく、 脳の特性による反応 です。
大人の怒りへの支援の実例
① その場を離れて距離を取る
保護者や支援者の声でも最も多かった対応です。
- 別室に移動する
- 深呼吸できる場所に行く
- 子どもから一時的に距離を取る
距離を取ることは逃げではなく、 怒りを安全に扱うためのスキル です。
② 現実逃避でクールダウンする
保護者や支援者の声では、次のような方法が使われていました。
- 鼻歌
- 掃除
- 携帯ゲーム
- 草取り
これらは「怒りの対象から注意をそらす」ための行動で、 衝動を抑えるための有効なクールダウン です。
③ 衝動を抑えるために“口を開かない”
ASD傾向のある大人のケースでは、
- 怒りが出そうなときは口を開かない
- 反射的に言葉を出さないようにする
という工夫がありました。
これは、 衝動的な言葉で関係が悪化するのを防ぐための高度な自己調整 です。
④ 自分の感情の背景を探る
保護者や支援者の声では、
- 「体調不良かも」
- 「自分のマイナス感情が何かを見つける」
といった“内省”が行われていました。
怒りの背景には、
- 疲れ
- 不安
- 予定の乱れ
- 過去の経験
などが隠れていることが多く、 背景に気づくことで怒りが弱まりやすくなります。
大人の怒りを整えるために役立つ学び
大人の怒りは、 特性・疲労・環境負荷・状況の複雑さ が重なって生まれます。
児童発達支援士では、
- 発達特性を理解するための基礎
- 子どもの行動の背景を捉える視点
- 大人自身の感情を扱うための考え方
- 落ち着いた関わりを続けるための判断軸
といった、日常の関わりに役立つ基礎的な理解を身につけることができます。

まとめ:大人の怒りは“弱さ”ではなく“サイン”として扱う
保護者や支援者の声から見えてくるのは、 大人の怒りは「我慢が足りない」のではなく、 負荷が限界に達したときの自然な反応 だということです。
- 大人にも怒りの前兆がある
- 怒りは自分を守るためのサイン
- 特性によって怒りの出方が変わる
- 距離を取ることは安全な対処
- 現実逃避は衝動を抑える有効な方法
- 背景の感情に気づくことで怒りは弱まる
大人が自分の怒りを理解し、 安全に扱う方法を身につけることは、子どもの安心にも直結します。

