「毎日のように忘れ物をしてしまう」
「持ち物の準備に時間がかかる」
「声をかけても動けない」
忘れ物の多さは、決して“だらしなさ”や“やる気の問題”ではありません。 私は協会の事務局長として、延べ5万人以上が学ぶ場の運営に関わる中で、 忘れ物の相談を数多く受けてきましたが、 忘れ物は“記憶力”ではなく“環境設計”で改善しやすい領域 だと感じています。
この記事では、 「忘れ物が起きる理由」「家庭でできる環境デザイン」「視覚化の方法」「独自データ」 を分かりやすくまとめました。
目次
忘れ物が多いのは“記憶力の問題”ではない
忘れ物が多い子は、次のような特性を持っていることが多いです。
① ワーキングメモリ(短期記憶)が不安定
「今やっていること」に意識が向くと、 「次にやること」が抜け落ちやすい。
② 視覚より聴覚の情報が残りにくい
「明日の持ち物は○○だよ」と口頭で言われても残りにくい。
③ 片付け・準備の“手順”が曖昧
「何からやればいいか」が分からないと、行動が止まる。
④ 物の定位置が決まっていない
探す → 見つからない → 準備が遅れる → 忘れる という流れが起きやすい。
実際の家庭で見られたケースと背景
実際に寄せられた保護者や支援者の声
実際に児童発達支援士を受講した保護者からは、次のような声がありました。
「学校に給食袋を忘れてくることがよくありました。ランドセルの見えるところに『きゅうしょくぶくろ』と書いて貼り、忘れてもいいようにストックも準備しました。持って帰ってくることがルーチン化されれば忘れることが少なくなり、ストックがあれば親もイライラしなくてすみました。」
背景と専門的な解説
- 視覚ラベルは“思い出すきっかけ”として非常に強い
- ストックの用意は「失敗しても大丈夫」という安心をつくる
- ルーティン化は忘れ物対策の最も強力な方法
協会の独自データ

当協会の調査(有効回答16件)では、 忘れ物への対応として、
- 環境整備・掲示:25%
- 視覚的支援・リスト化:25%
が最も多い結果となりました。
つまり、 忘れ物は“思い出す力”ではなく“思い出せる仕組み”で防ぐ ということです。
>発達障害の特性に応じた支援方策調査【調査報告書④】|一般社団法人 人間力認定協会
家庭でできる忘れ物支援

① 持ち物の“定位置”を決める
忘れ物の多くは、 「物の場所が決まっていない」 ことが原因です。
- 「ランドセルはここ」
- 「プリントはこの箱」
- 「上履き袋はこのフック」
というように、 “迷わない環境”をつくることが最優先。
② チェックリストで“視覚化”する
口頭での指示は忘れやすいため、 視覚化が圧倒的に効果的。
- 写真付きチェックリスト
- イラストの持ち物表
- ホワイトボードのToDoリスト
「見れば分かる」状態をつくると、 大人の声かけが減り、子どもが自分で動きやすくなります。
③ ルーティン化で“自動化”する
忘れ物は、 「毎日やることが毎日違う」 と起きやすい。
- 帰宅 → ランドセルを決まった場所へ
- プリント → 親に渡す箱へ
- 翌日の準備 → チェックリストを見る
このように、 行動の順番を固定するだけで忘れ物は激減 します。
④ “一緒にやる”から“見守る”へ
最初から「自分でやって」は難しい。
- 最初は一緒に準備
- 次に、親は横で見守る
- 最後は、チェックだけ親が行う
という 段階的なステップ が効果的。
⑤ 片付けやすい環境をつくる
忘れ物が多い子は、 片付けも苦手なことが多い。
- 物の量を減らす
- 分類をシンプルにする
- ラベルを貼る
片付けやすい環境は、 忘れ物の予防にも直結 します。
>片づけができない子への支援|行動科学とゲーム化で“動きたくなる仕組み”をつくる方法
⑥ 朝の準備は“前日夜”に終わらせる
朝は、
- 時間がない
- 気持ちが焦る
- 注意が散りやすい
という条件が重なるため、 忘れ物が最も起きやすい時間帯。
前日夜に準備を終わらせる仕組み をつくると、 忘れ物は大幅に減ります。
忘れ物が“減りやすかった家庭”に共通していた工夫
| 効果につながりやすかった工夫 | 背景にあった理由や効果 |
| 持ち物の定位置を固定した | 「どこにあるか探す負担」が減っていた |
| チェックリストで視覚化した | “見れば分かる状態”が行動につながっていた |
| 行動の順番をルーティン化した | 毎日の流れが自動化され忘れにくくなっていた |
| 前日夜に準備を終わらせた | 朝の混乱や焦りを減らせていた |
| 最初は親が一緒に準備した | 成功体験を積み重ねやすかった |
忘れ物の背景を整理する“ABC分析”
忘れ物が続くときは、 行動の前後を整理するABC分析 が役立ちます。
- A:前の状況(準備の環境)
- B:行動(忘れ物)
- C:後の結果(どうなったか)
例: A「物の場所が決まっていない」 B「持ち物を準備できない」 C「忘れ物が増える」
→ A(環境)を変えると改善しやすい。

※この記事の内容は、児童発達支援士の受講者アンケートに寄せられた実際の声をもとにまとめていますが、感じ方や変化には個人差があります
児童発達支援士の学びが役立つ理由
忘れ物の背景には、 ワーキングメモリ・注意の偏り・感覚特性・環境要因など、 複数の要素が重なっています。
そのため、 「なぜ忘れ物が起きるのか」を整理できる“考え方の軸” があると、 家庭での関わりが安定しやすくなります。
児童発達支援士では、 子どもの発達の捉え方や、家庭での関わり方の考え方など、 日々の子育てに活かしやすい基礎知識を学ぶことができます。
当協会の資格は延べ5万人以上が受講し、 大学や専門学校でも教材として採用されています。

相談すべきタイミングの目安
- 忘れ物が毎日のように続く
- 生活や学校に支障が出ている
- 注意が散りやすく、準備に時間がかかる
- 片付け・時間管理も同時に難しい
これらが重なる場合は、 専門機関に相談すると安心です。
まとめ:忘れ物は“仕組みで防げる”
忘れ物は、 決して“だらしなさ”でも“やる気の問題”でもありません。
- 定位置を決める
- 視覚化する
- ルーティン化する
- 段階的に自立を促す
- 前日準備を習慣化する
これらを積み重ねることで、 忘れ物は確実に減っていきます。
完璧を目指す必要はありません。 「昨日より少しスムーズだった」 その積み重ねが、子どもの自信につながります。

