「遊びをやめられない」
「帰るよと言うと泣き出す」
「次の活動に移れず固まってしまう」
切り替えの難しさは、癇癪やパニックと深くつながっています。
私は協会の事務局長として、延べ5万人以上の保護者・支援者が学ぶ場の運営に関わる中で、多くの「切り替えができない」「スムーズに移行できない」という悩みの声に触れてきましたが、 切り替えの難しさは“性格”ではなく、発達段階と環境の影響が大きい ことが分かっています。
この記事では、 「切り替えが苦手な理由」「家庭でできる声かけ」「環境調整」「予防の工夫」 を分かりやすくまとめました。
目次
切り替えが苦手な理由
見通しが立たないと不安が強くなる
「次に何が起きるか分からない」 これは大人が思う以上に大きなストレスです。
今の活動に“没頭しやすい”特性
発達障害のある子は、興味のあることに深く集中する傾向があります。 そのため、急な切り替えは負担が大きくなります。
感覚特性が影響している
音・光・触覚の刺激が強い場面では、 切り替えの負荷がさらに高まります。
言葉で気持ちを整理するのが難しい
「まだ遊びたい」「終わりたくない」 こうした気持ちを言葉で表現できず、行動に出やすくなります。
実際の家庭で見られたケースと背景
実際に寄せられた保護者や支援者の声
実際に児童発達支援士を受講した保護者からは、次のような声がありました。
「保育園において、遊びの時間から食事、排泄など次の活動に切り替えることができない子どもがいました。遊びの前にホワイトボードで活動の流れをイラスト付きで予告し、『何時になったら片付け』かを伝え、5分前にも『あと5分で片付けだよ』と知らせるようにしました。」
背景と専門的な解説
- 切り替えの難しさは「突然の終了」と深く関係
- 事前予告と5分前予告は、心の準備時間をつくる
- 見通しがあると、切り替えへの抵抗が大きく減る
① 見通しを作る
「あと○分で終わりだよ」と予告する
時間の見える化は非常に効果的です。
「次は○○するよ」と順番を伝える
「今 → 次」の2ステップだけでも十分。
写真・絵カードを使う
視覚情報は理解しやすく、安心感につながります。
② 声かけは“短く・具体的”に
- 「そろそろ帰るよ」より「あと3分で帰るよ」 の方が伝わりやすい
- 「片付けて」より「ブロックを箱に入れよう」 の方が伝わりやすい
- 「ダメ!」より「次はこうしようね」の方が伝わりやすい
③ 環境調整で“切り替えやすい場”をつくる
刺激を減らす
テレビ・音・人の多さは切り替えの負荷を上げる。
片付けやすい環境にする
「どこに戻せばいいか」が分かると切り替えがスムーズ。
好きな物が視界に入らないようにする
次の活動に集中しやすくなる。
④ 子どもの気持ちを代弁する
切り替えがうまくいかないときは、 気持ちを言葉にしてあげると落ち着きやすくなります。
- 「まだ遊びたかったんだよね」
- 「終わるのが嫌だったんだよね」
- 「もっとやりたかったよね」
気持ちを受け止めてもらえると、 切り替えの負担が軽くなります。
⑤ 代替案を提示する
(“終わり”ではなく“次”を見せる)
- 「帰ったらジュース飲もうか」
- 「お風呂のあとに絵本読もうね」
- 「片付けたらブロックで遊ぼう」
“終わり”だけを伝えると不安が強くなるため、 “次の楽しみ”をセットで伝える のがポイント。
⑥ 予防的対応
切り替えが苦手な子は、 疲れやすい時間帯・刺激の多い場所・予定変更 に弱い傾向があります。
家庭でできる予防としては、
- 予定を詰めすぎない
- 事前にスケジュールを伝える
- 苦手な場面を把握しておく
- クールダウンできる場所を用意する
などがあります。
切り替え支援が“うまくいきやすかった家庭”の共通点
| 効果につながりやすかった工夫 | 背景にあった理由や効果 |
| 事前予告をしていた | “突然終わる不安”を減らせていた |
| 活動の流れを見える化していた | 「次に何があるか」が分かり安心につながっていた |
| 声かけを短く具体的にしていた | 情報量を減らすことで動きやすくなっていた |
| 気持ちを代弁していた | 「分かってもらえた安心感」が落ち着きにつながっていた |
| 次の楽しみをセットで伝えていた | “終わり”への抵抗感を減らしやすかった |
ABC分析で“切り替えのつまずき”を整理する
切り替えがうまくいかないときは、 行動の前後を整理するABC分析 が役立ちます。
- A:前の状況(きっかけ)
- B:行動(切り替えられない・癇癪)
- C:後の結果(どうなったか)
例: A「急に帰ると言われた」 B「泣き叫ぶ」 C「帰るのが遅れた」
→ この場合、 A(予告不足)を変える ことで改善しやすい。

※この記事の内容は、児童発達支援士の受講者アンケートに寄せられた実際の声をもとにまとめていますが、感じ方や変化には個人差があります
児童発達支援士の学びが役立つ理由
切り替えの難しさは、 発達段階・感覚特性・環境・経験など、 複数の要因が重なって起きます。
そのため、 「なぜ切り替えが難しいのか」を整理できる“考え方の軸” があると、 家庭での関わりが安定しやすくなります。
児童発達支援士では、 子どもの発達の捉え方や、家庭での関わり方の考え方など、 日々の子育てに活かしやすい基礎知識を学ぶことができます。
当協会の資格は延べ5万人以上が受講し、 大学や専門学校でも教材として採用されています。 こうした学びを通じて、 「切り替えの背景が分かり、怒鳴る回数が減った」 という声も多く寄せられています。

相談すべきタイミングの目安
次のような場合は、 専門機関に相談すると安心です。
「切り替えができず、毎日のように癇癪が起きる」 「園や学校でも対応に困っていると言われる」 「こだわりが強く、生活に支障が出ている」 「言葉の遅れや感覚過敏も気になる」
早めの相談は、 子どもにとっても保護者にとっても負担を軽くします。
まとめ:切り替えは“練習で育つ力”
切り替えが苦手なのは、 決して“わがまま”でも“甘え”でもありません。
- 見通しを作る
- 声かけを短く・具体的に
- 環境を整える
- 気持ちを代弁する
- 代替案を提示する
- 予防的に手を打つ
これらを積み重ねることで、 切り替えは確実に育っていきます。
完璧を目指す必要はありません。 「昨日より少しスムーズだった」 その一歩が、子どもの安心と成長につながります。

