吃音とは、発話時に同じ音を繰り返したり、音を引き延ばしたり、言葉が詰まったりする症状を指します。幼児期に発症する吃音の多くは、その後自然に改善すると考えられていますが、学齢期や成人期まで吃音が続く方もいます。幼児期から学齢期、そして成人期に至るまでの取り組みは、お子様の年齢や、吃音への気づき・困り感によってさまざまです。
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年齢別の対応
幼児期から思春期以降にかけて、お子様の成長や吃音への意識の変化に伴い、必要とされるアプローチも段階的に変化していきます。ここでは、それぞれの時期における特徴と支援の方向性を整理しておきましょう。
| 時期 | 特徴・直面しやすい課題 | 支援の方向性 |
| 幼児期 | 発症時期。自然に改善するケースも多い。 | 家庭での環境調整を優先し、流暢に話せる経験を増やす。 |
| 学齢期 | 吃音を自覚し、発話を減らすなどの二次的問題が生じやすい。 | 楽な話し方の技法や、困った場面での対処法(コーピングスキル)を学ぶ。 |
| 思春期以降 | 予期不安や、人前で話すことへの社交不安が課題になる。 | 認知行動療法を組み合わせ、日常生活の困り感を減らす。 |
幼児期
幼児期は、2021年に公表された幼児吃音臨床ガイドラインに基づき、まず家庭での環境調整を行います。そのうえで、DCM(Demands and Capacities Model)やリッカムプログラムなど、科学的根拠のある方法を取り入れます。 日常では、周囲の人が接し方や会話の速度をゆっくりにする、言葉の長さが長くならないように調整するなど、吃音のあるお子様が話しやすく、負担を感じずに過ごせる環境を整える取り組みを行います。 吃音を使う回路を学習する時間を少なくし、流暢に話すことができる時間をたくさん作ります。この時期は、できるだけ流暢に話せる経験を増やし、吃音が出にくい環境を整えることが重要になります。
学齢期
小学校に入る頃になると、子ども自身が吃音を自覚し、意識するようになります。ただし、発話意欲や困り感には個人差があります。 困り感に対しては、流暢性形成法など、楽に話すための話し方の技法を学ぶこともあります。ただ、困り感が出てくると、他の言葉に言い換える、または発話そのものを減らすといった二次的な問題が生じやすくなることもあります。 そのため、吃音について正しく理解し、困った場面での対処法(コーピングスキル)を身につけたり、学校や周囲の理解を得たりする支援が大切になります。 周囲は吃音に積極的に触れ、お子様が今感じていることに耳を傾け、正しい知識や対応方法を学ぶ機会を与える必要があります。
思春期以降
思春期以降は、これまで経験してきたことから「言えないかもしれない」という予期不安により、より吃音が出やすくなったり、人前で話すことへの不安や社交不安が大きな課題になったりする場合があります。 そのため、認知行動療法などを組み合わせながら、実際の生活場面を想定した練習を行い、日常生活での困り感を減らしていく支援が行われます。そして、生活の質を向上させることを目指します。
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吃音はなぜ早期介入が必要か
全人口における吃音のある人は100人に1人です。幼児期の発症率は8%前後であり、約7~8割は自然に改善・消失すると言われています。 吃音に対応できる医療機関や施設は増えてきていますが、まだ十分とは言えません。また、「本人が困っていないので様子を見ましょう」と言われるケースも少なくありません。
多くのお子さんは自然に改善する可能性があります。吃音は2~3歳頃に発症することが多く、発症から1年~1年半程度の間に変化がみられ、その間に吃音が消失するお子さんもいます。一方で、その後も吃音が継続する場合があります。 ただし、この1年~1年半程度を何もしないで過ごすのではなく、お子さんが話しやすい環境を整え、より良い関わり方を行うことも大切です。
その後も吃音が続く場合には、積極的に言語聴覚士による適切な支援を受けることが推奨されています。 子どもは日々の会話の中で話し方を学習しています。だからこそ、幼児期から流暢に話しやすい環境を整え、その経験を積み重ねていくことが、その後の発達に良い影響を与えると考えられています。
吃音を支援する具体的な取り組みとは
幼児期の支援では、まず保護者の関わり方など、環境を整えることが重要です。 吃音は、発話速度がゆっくりになることで、基本的には減る傾向にあります。お子様自身が発話をコントロールすることは困難です。そのため、周りがゆっくり話すことで、お子様の発話速度が低下するように関わります。
また、単語よりも短文、短文よりも長文というように、発話の長さが長くなるにつれて、吃音は出やすくなります。 長い文章や複雑な内容は、幼児にとって言語的な負荷が高く、吃音が出やすくなることがあります。そのため、お子さんの発達段階に合わせた会話を心掛けることも大切です。
幼児期に周囲の大人が意識すべきポイント

- ゆっくり話す:
1秒間に3~4音節程度でゆっくり話しかける。 - 言葉の長さを調整する:
簡単な語や短い文を選ぶ。 - 現前の話題に絞る:
目の前にあるものについて話す。 - 関わり方の基本:
肯定的・受容的・共感的な関わりを心掛ける。
周囲の大人は基本的に、「肯定的・受容的・共感的」な関わりを心掛け、「1秒間に3~4音節程度でゆっくり話す」「簡単な語・短い文・現前の話題(目の前にあるものについて話す)」などを意識し、吃音が出にくい環境を作ることが大切になります。
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科学的根拠のある支援方法
| プログラム名 | アプローチの考え方 | 支援の具体例 |
| RESTART-DCM | 「子どもの能力」と「周囲から求められること」のバランスを整える。 | 単語なら流暢に話せるお子さんには、大人も単語で答えられる質問を増やす。 |
| リッカムプログラム | 日常生活の中で保護者が直接関わり、流暢な発話経験を積む。 | 毎日10~15分、1対1で遊び、流暢に話せたら褒め、吃音には温かく前向きに指摘する。 |
RESTART-DCM
DCM(Demands and Capacities Model)は、「子どもの能力」と「周囲から求められること」のバランスを整える考え方です。 発話運動・言語・社会情緒・認知の4つの側面から、お子さんが無理なく話せる環境を整えていきます。 例えば、単語なら流暢に話せるお子さんには、大人も単語で答えられる質問を増やすなど、お子さんが成功体験を積みやすい会話を行います。
リッカムプログラム
リッカムプログラムは、オーストラリア吃音研究センターが開発した、幼児を対象とした世界的にも広く用いられている支援方法です。 毎日10~15分程度、保護者と1対1で遊びや会話を行い、流暢に話せたときにはしっかり褒めます。吃音がみられた場合には、優しく指摘をしながら、流暢な発話経験を積んでいきます。「指摘」と聞くと厳しい印象がありますが、例えば逆上がりの練習で「惜しい、もう一回やってみよう」と声をかけるような、温かく前向きなフィードバックに近いイメージです。
DCMもリッカムプログラムも、どちらも細かい段階が設定されています。取り組む際には、言語聴覚士の適切な指導のもとで取り組む必要があります。
Q&A|よくある質問
Q1. 子どもが吃音を気にしている様子がない場合でも、親として何か特別な対応をしたほうがよいのでしょうか?
A. お子様自身が気にしていない場合でも、発話から1年〜1年半の間は、無理に直そうとせず「話しやすい環境づくり」を意識することが大切です。 吃音は2~3歳頃に発症することが多く、発症から1年~1年半程度の間に自然に消失するお子さんもいれば、継続するケースもあります。この時期を何もしないで過ごすのではなく、大人が会話の速度をゆっくりにしたり、短く簡単な言葉で話しかけたりすることで、お子さんが負担を感じずに流暢に話せる経験を積み重ねていくことがその後の発達に良い影響を与えます。
Q2. 科学的根拠があるとされる「リッカムプログラム」での「指摘」とは、具体的にどのようなものですか?厳しい叱責になってしまわないか心配です。
A. 厳しい叱責ではなく、逆上がりの練習で「惜しい、もう一回やってみよう」と声をかけるような、温かく前向きなフィードバックのイメージです。 リッカムプログラムでは、毎日10〜15分程度の1対1の遊びや会話の中で、流暢に話せたときはしっかり褒め、吃音がみられた場合には優しく指摘をしながら流暢な発話経験を積んでいきます。決して子どもを追い詰めるような厳しいものではなく、言語聴覚士の適切な指導のもとで行われる、温かい励ましに近い関わり方ですのでご安心ください。
Q3. 学齢期や思春期になってから吃音が強くなったり、人前で話すことを極度に怖がるようになったりした場合は、どのような支援が行われますか?
A. 話し方の技法の習得や、認知行動療法などを組み合わせた実践的な練習を通じて、日常生活の困り感を減らしていく支援が行われます。 小学校に入る頃になると、子ども自身が吃音を自覚し、言葉の言い換えや発話そのものを減らすといった二次的な問題が生じやすくなります。さらに思春期以降は「言えないかもしれない」という予期不安や社交不安が大きな課題になるため、楽に話すための技法(流暢性形成法)や困ったときの対処法(コーピングスキル)を学び、認知行動療法なども組み合わせながら生活の質の向上を目指します。
まとめ|吃音は個性の一つ。でも支援には意味がある
吃音への取り組みとして、年齢に応じて取り組む内容は異なります。また、早期から環境調整を行い、幼児期には言語聴覚士の指導のもとでDCMやリッカムプログラムに取り組むことは、とても有効です。 とくに、親子で関わる時間を意図的に作ることは、親子の関わりそのものを通して、吃音にも良い影響があると言われています。
吃音は、話し方の一つの特徴であり、それだけで良い・悪いと判断できるものではありません。
走るのが速い子もいれば、遅い子もいる。 泳ぐのが得意な子もいれば、苦手な子もいる。 話し方にも、さまざまな個性があります。
一方で、「もっと楽に話せるようになりたい」「学校生活を送りやすくしたい」という可能性を広げるために、早期から適切な支援を受けることには大きな意味があります。 家庭での関わり方を工夫し、必要に応じて言語聴覚士による専門的な支援を受けることで、お子さんが安心して話せる経験を積み重ねていくことができます。 吃音を「治すこと」だけを目標にするのではなく、お子さんが自分らしく、安心して話せる毎日を支えていくことが、何より大切ではないでしょうか。
【注意事項】
本記事は、児童発達支援管理責任者、心理カウンセラー、言語聴覚士をはじめとする専門家個人の知見や経験、学術的背景に基づいて執筆・監修されたものです。子どもの特性や発達の状況、支援との相性には大きな個人差があり、すべての子どもに同様の効果や変化を保証するものではありません。また、本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断や医療行為、個別の療育指導に代わるものではありません。実際に支援方法や対応を判断される際は、必要に応じてお子様を普段から知る主治医や専門家、支援機関などにご相談の上、ご自身の判断のもとで参考情報としてご活用いただきますようお願いいたします。



