頼ることは、いけないことではない。児発管が伝えたい「保護者と事業所の連携」でより良い支援を作る3つのコツ

皆さんは、子育てや日常生活の中で何か悩みに直面したとき、どのように対処していますか

  • パートナー(配偶者)に相談する
  • 自分の親(父母)に相談する
  • 自治体などの無料の相談窓口を使う
  • 誰にも言わず、自分で解決する

現代の日本では、「自分のことは自分で解決すべき」「個人の問題で他人を巻き込みたくない」「相手の忙しい時間を奪ってしまっては申し訳ない」といった考え方が先行し、どうしても一人で抱え込んでしまう方が非常に多いように感じられます。これは、日本の文化的価値観だけでなく、それぞれが育ってきた家庭環境も少なからず関係しているのかもしれません。

決して「相談することが100%正しくて、自分で解決することが間違っている」という二元論ではありません。筆者自身も、かつては「自分のことは自分で解決する」という想いを胸に生活してきました

しかし、放課後等デイサービス(放デイ)の現場で児童発達支援管理責任者(児発管)や管理者としての経験を重ねてきたことで、その考え方は大きく変わりました

今の私が個人的にたどり着いた答えは、「他人に頼ることは、決して悪いことではない」ということです。「自分で解決したい」という強い気持ちも素晴らしいものですが、周囲にいる支援者や仲間からすれば、頼りにされることはむしろ嬉しいことなのです。

今回は、家庭と事業所が「連携」し、上手に周囲を頼ることで、お子さんへの支援や保護者自身の心の安定がどのように変わっていくのか、その大切さと相談のコツについて詳しく記述していきます

>うちの子に合っている放デイとは?児発管が考える「失敗しない相性」6つの見極め方

この記事でわかること

  • 100人居れば100通り存在する、放デイ利用保護者の多様な悩みの分類
  • 相談をスムーズにするための、関係機関への情報共有における事前の確認事項
  • 信頼関係を築くための「小さな悩み(相談の練習)」から始めるメリット
  • 完璧な解決策が出なくても、周囲の意見を聞くことで「視野と気持ちの余裕」を広げるアプローチ
  • 窓口の責任者にこだわらず、性別や年齢、相性で相談相手を選ぶ重要性
  • 大人が「相談する姿」を見せることが、子どもの社会性や発育に与える好影響

保護者が抱える悩みの多様性と「情報共有」のルール

保護者が抱える悩みの多様性

放デイを利用されている保護者の方々が抱える悩みは、決してお子さんの療育のことだけにとどまりません。100人の保護者がいれば100通りの悩みが存在し、その対象は多岐にわたります

保護者の悩みの分類

  • 放デイを利用している我が子について:
    日々の行動、お友達関係、発達のスピード
  • 利用児のきょうだいについて:
    きょうだい児への接し方、時間の割き方
  • 家庭環境について:
    夫婦間の教育方針のズレ、親族からの理解
  • 職場環境について:
    就労時間と送迎のやりくり、仕事との両立のストレス
  • 学校への対応について:
    担任の先生との連携、通常学級や支援学級での過ごし方
  • 放デイや関係機関について:
    事業所の支援内容への疑問、相談支援事業所とのやり取り
  • 保護者同士の関係について:
    ママ友・パパ友との付き合い方、コミュニティでの悩み

このように、あらゆる環境が複雑に絡み合って保護者の心の負担となっています

※相談時の重要な注意点 困りごとを放デイのスタッフに相談する際は、「この内容を、学校や相談支援事業所などの他の関係機関に対して共有しても良いか否か」を、あらかじめ明確にスタッフへ伝えておきましょう。お預かりした大切な情報は秘密保持が原則ですが、お子さんの療育方針を話し合う「担当者会議」などでは、他の機関とも共有した方がより一貫した手厚いサポートに繋がるケース(必要な情報)となる場合があるからです。

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実践|より良い支援へ繋げるための「相談・共有」3つのコツ

事業所との信頼関係を深め、より良い家族支援へと繋げていくために、以下の3つのステップを意識してみてください

① まずは、身近な悩み(小さな悩み)から相談してみる

利用を開始して間もない時期は、お互いの信頼関係がまだ未熟であるため、「こんなことを相談してもいいのだろうか」と心理的ハードルを高く感じてしまいがちです。しかし一方で、新しい生活がスタートする新年度などは、お子さんの環境変化に伴って保護者側の悩みが爆発しやすい時期でもあります

  • 「朝起きるのが遅くて、学校の登校班に間に合わない」
  • 「学校からのお便りをカバンから出さずに溜めてしまう」
  • 「とにかく忘れ物が多くて、毎日忘れ物を取りに帰っている」
  • 「朝、学校への行き渋りがあり、玄関から動かなくなってしまう」

「こんな家庭内の小さなことは、自分たちでなんとか解決しないと……」と抱え込む必要はありません。例え些細なことだと感じる内容であっても、「我が子の未来のため」、そして何より「事業所に相談する練習」だと思って、まずはフランクに話を振ってみてください。

新年度に発生する悩みのほとんどは、多くのご家庭が一度は経験する王道の困りごとです。お子さんによって個性や行動の違いはあれど、現場のスタッフは何度も同じ悩みを受け入れ、一緒に乗り越えてきた経験(療育のノウハウ)を持っています。だからこそ、家庭だけでは思いつかなかった適切なアドバイスが期待できるのです。

② 解決するか分からないことでも、とりあえず相談してみる

この世のすべての悩みに対して、一発で完璧な対応(正解)を出せる人など存在しません。しかし、「こんなことを話しても、どうせ解決しないだろう」と諦めてしまうのはもったいないことです

たとえすぐに解決の糸口が見えない複雑な悩みであっても、周囲(支援者)に打ち明けてその意見を聞くことで、「なるほど、第三者からはそういう風に見えるのか」「そういった考え方やアプローチもあるのか」と、保護者自身の視野がパッと広がります

視野が広がることは、我が子に対する日々の接し方にポジティブな変化をもたらすだけでなく、悩み続けていた保護者自身の「気持ちの余裕」へと直接的に繋がっていきます。「話してよかった、心が軽くなった」という精神的な安定は、何よりも家庭内の雰囲気をあたたかく変えていきます。 また、一家庭の悩みにとどまらない課題である場合は、事業所内での全体会議や、関係機関を巻き込んだ大きな話題として取り上げ、同じ課題をみんなで共有し、明確な目的を持って日々の療育へと繋げていくきっかけにもなります

③ 児発管以外のスタッフに相談してみる

放デイにおける相談窓口は、決して児童発達支援管理責任者(児発管)だけではありません。 事業所には「虐待防止窓口」や「苦情窓口」などが設置されており、その対応責任者は児発管や管理者が兼任していることが多いですが、だからといって「すべての相談を必ずその責任者にしなければならない」というルールはありません

相談する側と相談を受ける側には、人間としての「相性」が必ず存在します

スタッフの要素相談しやすさに与える影響 PDF選び方のヒント PDF
性別・年齢同性のスタッフの方がデリケートな話をしやすい、同世代や子育て経験のある先輩スタッフの方が共感してもらいやすいなど「責任者だから」という肩書に縛られる必要はありません
日頃の関わり毎日お迎えのときに笑顔でお子さんのエピソードを話してくれる、直接療育に入っているなど保護者自身が直感的に「話しやすい」と感じる相手がベストです

日々の送り迎えや様子を見る中で、「このスタッフさんなら、なんとなく安心して本音を話せるかもしれない」と思えるタイミングができたら、その相手に思い切って話を振ってみて良いのです。そこから現場のチーム内で情報が共有され、結果としてさらに手厚く質の良い支援へとしっかりと繋がっていきます

>集団生活で一歩リードするための感覚アプローチ|感覚を知ることがその子を知る第一歩

さいごに|児発管が伝えたい「保護者と事業所の連携」でより良い支援を作る3つのコツ

「相談すること=我が子へのより良い支援(家族支援)」

この考え方を、ぜひ心の片隅に大切に持っておいてください。親が誰かを頼り、相談するという行動は、実は子どもにとっても素晴らしい「生きたお手本」になります。

子どもたちは、大人の行動を「見ていないようで、実はよく見て、感じて、多くのことを吸収して発育しています」。親が周囲の信頼できる大人に相談し、助けてもらいながら笑顔になっていく姿を見ることは、子どもたち自身の社会性や、「困った時は人に気持ちを伝えて頼っていいんだ」という感情の表出、ひいては自己理解といった心の育ちに、非常に良い影響を与えてくれるのです。

世の中には、悩みのほとんどをパートナーや身内にも口外できず、誰にも頼れないまま孤独に苦しんでいる人々がたくさん居ます。だからこそ、私たち療育スタッフも、保護者の方々が「今よりもさらに相談しやすい、あたたかい環境作り」を全力で目指していかなければならないと、日々身が引き締まる思いです

小さなことからで構いません。私たちをチームの一員として頼っていただき、ご家族みんなが笑顔になれる未来を、一緒に作っていきましょう

Q&A|よくある質問

Q1. 「相談の練習」として本当に些細な家庭内の困りごと(例えば、ゲームの時間を守れないなど)を話しても、放デイの先生たちは迷惑に思ったり、療育に関係ないと切り捨てたりしませんか?

A. 決して迷惑に思うことはありませんし、それどころか「家庭での様子を知るための極めて重要な手がかり」として大歓迎します。 一見、放デイの施設内とは直接関係のない「家庭内でのゲームのルール」であっても、それはお子さんの「欲求のコントロール力」や「視覚的な約束事の理解度」、そして「気持ちの切り替えの特性」を測る最高の療育材料です。放デイのスタッフは、そうした小さな困りごとを聞くことで、「では、園や放デイでのタブレット学習の切り替えの工夫(タイマーの使用など)をご家庭でも応用してみましょうか」といった、具体的な連携アドバイスを提案することができます。まずは相談のハードルを下げるための「練習」として、どんどんお気軽に話を振ってみてください

Q2. 解決するか分からない悩み(例えば、将来の就労や、親亡き後の生活の不安など)を相談した場合、放デイの事業所内では具体的にどのように扱われ、どう療育に繋がっていくのでしょうか?

A. お子さんの「現在の療育目標(スモールステップ)」をより明確にするための長期的なコンパス(指針)として、事業所全体や関係機関と共有されます。 こうした遠い将来の大きな不安は、一つの放デイだけで即座に「解決」できるものではありません。しかし、その課題を保護者と事業所で共有しておくことで、「将来の自立(就労など)を見据えて、今はまず『自分の持ち物を自分で管理する力』や『困った時に他人に助けを求めるスキル(ヘルプサイン)』を日々のプログラムの中で最優先で育てていこう」といった、今やるべき具体的な療育の目的・方向性がカチッと定まります。また、必要に応じて相談支援専門員などを含めた担当者会議の議題とすることで、地域全体でお子さんを支えるネットワークを動かすきっかけにもなります

Q3. お迎えの際、現場のパートの若いスタッフの方が一番話しやすいのですが、児発管の先生を飛び越えて、その若いスタッフの方に家庭の深い相談(夫婦間の教育方針の悩みなど)を打ち明けても大丈夫でしょうか?

A. 全く問題ありません。保護者様が一番「安心できる、話しても良いかな」と感じるスタッフに打ち明けるのがベストな選択です。 コラム内にある通り、相談には人間同士の「相性」が深く関係します。年齢が近かったり、日頃の関わりが多かったりするスタッフの方が、緊張せずに本音を話せるのは当然のことです。深い相談を受けたスタッフは、責任を持ってその内容を児発管や管理者にしっかりと報告・共有します。児発管は裏方として、その情報を基に全体の支援計画を見直したり、スタッフへ関わり方の指示を出したりして、事業所全体でバックアップ体制を整えます。お預かりした大切なプライバシーは守られますので、まずは肩書を気にせず、一番心が許せるスタッフに「ちょっとお話を聞いてほしくて」と声をかけてみてください

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【注意事項】

本記事は、児童発達支援管理責任者、心理カウンセラー、言語聴覚士をはじめとする専門家個人の知見や経験、学術的背景に基づいて執筆・監修されたものです。子どもの特性や発達の状況、支援との相性には大きな個人差があり、すべての子どもに同様の効果や変化を保証するものではありません。また、本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断や医療行為、個別の療育指導に代わるものではありません。実際に支援方法や対応を判断される際は、必要に応じてお子様を普段から知る主治医や専門家、支援機関などにご相談の上、ご自身の判断のもとで参考情報としてご活用いただきますようお願いいたします。

山崎彩人

執筆者

児童発達支援管理責任者
山崎 彩人

【プロフィール】
保育士養成校卒業後、児童発達支援事業所・放課後等デイサービスの開所に携わる。基本資格となる保育士資格を基に、児童発達支援管理責任者として[大人も子どもも楽しく]という思いを大切に日々支援を提供。

【保有資格】
保育士資格、幼稚園教諭二種免許状、日本スポーツ協会 スポーツリーダー、児童発達支援管理責任者、児童発達支援士、発達障害コミュニケーションサポーター

一般社団法人 人間力認定協会 事務局長 望月宏彰

この記事の監修

一般社団法人 人間力認定協会
監修責任者:事務局長 望月宏彰

当協会は、延べ5万人が学ぶ「児童発達支援士」等の資格認定をはじめ、専門家による調査報告書の提供、講演会、絵画コンクールの開催など、発達支援の普及と向上に向けた多角的な活動を行う専門機関です。「日本の資格・検定」アワードにおいて、2022年に「児童発達支援士」、2026年に「メンタルヘルス支援士」が受賞しており、業界から高い評価をいただいています。 本コラムは、協会の支援方針および倫理規定に基づき、正確な情報発信であるかを監修・確認しています。

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