母子登校は、単なる“甘え”や“わがまま”として片付けられるものではありません。
発達障害のある子どもの中には、学校という環境に強い不安や負担を感じ、保護者と一緒でなければ登校できなくなるケースがあります。
ただ実際には、
- 「無理にでも行かせた方がいいのでは」
- 「このまま不登校になるのでは」
- 「自分の関わり方が悪いのでは」
と、保護者自身が強いプレッシャーを抱え込んでしまうことも少なくありません。
私は協会の事務局長として、延べ5万人以上の保護者・支援者が学ぶ場の運営に関わる中で、学校へ行けなくなった子どもたちや、母子登校が長期化する家庭の悩みに数多く触れてきました。
協会が保有する一次情報(支援士インタビュー)を見ていくと、そこには「ただ学校へ行きたくない」という単純な話ではなく、不安・疲労・自己否定感・周囲とのズレなど、さまざまな背景が見えてきます。
>学校を休ませる判断に悩む保護者へ|無理をさせる?休ませる?
目次
本記事で紹介している一次情報について
本記事では、当協会が認定する児童発達支援士資格または、発達障害コミュニケーションサポーター資格に合格され、認定支援士に登録された方から寄せられた声を紹介しています。一次情報の詳細は下記のとおりです。
| 項目 | 詳細 |
| 回答者 | 児童発達支援士または発達障害コミュニケーションサポーター合格者 |
| 属性 | 保護者、療育施設スタッフ、保育士、教員など |
| 有効回答数 | 255件 |
| 情報取得日 | 2022年7月~2026年5月 |
| 質問1 | 児童発達支援士の資格を取ろうと思ったきっかけは? |
| 質問2 | 発達障がい児支援をしていて最も辛かったことは何ですか? |
| 質問3 | 発達障害に関する知識を習得したことで、何か変化はありましたか? |
| 質問4 | ご自身と似た境遇で悩んでいる方に何かアドバイスはありますか? |
| 質問5 | 発達障がい児の支援を行う上で大切だと感じていることは何ですか? |
母子登校が続く家庭で見られた声

実際に協会へ寄せられた声からは、子どもの不安だけでなく、保護者自身の疲弊や孤立も見えてきました。
① 子どもの不安が非常に強い
「学校へ行こうとすると腹痛や頭痛が出ていた」
「玄関で泣き崩れて動けなくなっていた」
「母親が一緒なら何とか学校へ行ける状態だった」
母子登校が続く子どもの中には、「学校へ行きたくない」というより、“行こうとすると心も体も止まってしまう”ような状態になっているケースがあります。
周囲からは見えにくいのですが、本人の中ではかなり強い不安や緊張が積み重なっていることも少なくありません。
特に、
- 大きな音
- 人間関係のストレス
- 失敗経験
- 強い叱責
などが重なると、「学校=怖い場所」になってしまう子どももいます。
② 保護者が「休ませてはいけない」と抱え込む
「休ませることに罪悪感があった」
「無理をさせた方が将来のためになると思っていた」
「学校へ行かせなければと思い続けていた」
保護者側も、「行かせなければ」という思いを強く抱えていることがあります。
特に真面目な保護者ほど、
- 「自分の育て方が悪いのでは」
- 「ここで休ませたら甘えになるのでは」
- 「将来もっと困るのでは」
最初は「この子のために」と踏ん張れていても、それが毎日続くと、保護者自身の心と体が限界に近づいていくこともあります。
③ 周囲に理解されず孤立していく
「甘やかしと言われた」
「周囲に相談しても理解されなかった」
「学校との温度差がつらかった」
母子登校は、外から見ると実態が見えにくい支援です。
そのため、
- 「そこまでして行かせる必要ある?」
- 「結局は甘やかしでは?」
- 「朝だけ頑張れば行けるのでは?」
と誤解されてしまうこともあります。
実際には、毎朝ギリギリの状態で支えている家庭も多く、周囲に理解されないことで、さらに孤立感が強まっていくケースも少なくありません。
④ 母子登校が長期化すると家庭全体が疲弊しやすい
「毎朝の緊張で保護者も限界だった」
「仕事との両立が難しかった」
「家庭全体がピリピリしていた」
母子登校は“登校支援”である一方、長期化すると家庭全体に大きな負担がかかってきます。
特に、
- 朝の付き添い
- 学校との連絡
- 帰宅後のフォロー
- 兄弟児への配慮
など、“見えにくい負担”が積み重なりやすいのが特徴です。
子どもを支えるために頑張っていたはずなのに、気づけば家庭全体が疲れ切っていた――そんなケースも珍しくありません。
>学校を休ませる判断に悩む保護者へ|無理をさせる?休ませる?
母子登校が続く家庭で積み重なりやすかった負担
| 母子登校で起きやすかったこと | 背景にあった不安や負担 |
| 子どもが母親と離れられない | 学校への強い不安や緊張があった |
| 「休ませてはいけない」と抱え込む | 将来への不安や罪悪感が強かった |
| 周囲から「甘やかし」と言われる | 母子登校の苦しさが外から見えにくかった |
| 毎朝の付き添いで疲弊する | 保護者側も限界に近づいていた |
| 家庭全体がピリピリしやすくなる | 長期化による心身負担が積み重なっていた |
母子登校の背景にあるもの
ここからは、母子登校の背景にある不安や支援の視点について整理していきます。
① “学校そのもの”が強いストレスになっていることがある
- 感覚過敏
- 対人関係のストレス
- 失敗経験の積み重ね
- 強い緊張状態
発達障害のある子どもの中には、「勉強が嫌」というより、“学校という空間そのもの”に強い疲労を感じている子もいます。
例えば、
- 教室のざわざわした音
- 人との距離感
- 急な予定変更
- 注意されるかもしれない緊張感
こうしたものが一日中続くことで、学校へ向かうだけで心も体も限界になってしまうことがあるんです。
周囲からは普通に見えていても、本人の中ではかなり無理をしている場合があります。
② 「行かなければ」が不安を強めることもある
- 無理な励まし
- 叱責
- 比較
- プレッシャー
もちろん、登校を支えること自体は悪いことではありません。
ただ、“学校へ行かせること”だけが目的になると、子どもはどんどん追い詰められてしまうことがあります。
特に、
- 「頑張ればできる」
- 「みんな行っている」
- 「逃げちゃダメ」
といった言葉は、本人が一番苦しんでいる時ほど強いプレッシャーになりやすいんですね。
実際には、「行けない自分」を子ども自身が一番責めているケースも少なくありません。
③ 保護者自身が限界に近づきやすい
- 送迎負担
- 仕事との両立
- 周囲の無理解
- 兄弟児への影響
母子登校は、実は“付き添って終わり”ではありません。
朝の緊張感の中で学校へ送り出し、その後も学校からの連絡を気にしながら仕事や家事をこなし、帰宅後は子どものフォローも続きます。
気づかないうちに、保護者側の心身がかなり消耗していることも少なくないんですね。
さらに、「弱音を吐ける相手がいない」という状況が続くと、孤立感も強くなりやすくなります。
④ “学校に戻すこと”だけがゴールではない
- 安心感の回復
- 自己否定感の軽減
- 居場所づくり
- 安心して過ごせる時間を増やす
母子登校の支援では、“今すぐ普通に登校できるようにする”ことだけをゴールにしない視点も大切です。
まず必要なのは、
- 「学校=怖い場所」だけにならないこと
- 安心できる時間を増やすこと
- 「自分はダメだ」という感覚を減らしていくこと
だったりします。
遠回りに見えるかもしれませんが、その安心感が結果的に“次の一歩”につながっていく子どもも少なくありません。
学校と連携するときに大切な視点
① 「怠け」前提で見ない
行きしぶりや母子登校が続く子どもの中には、強い不安や感覚的負担を抱えているケースがあります。
「気持ちの問題」「甘え」だけで整理してしまうと、子どもの自己否定感がさらに強くなってしまうことがあります。
まずは、「なぜ今つらくなっているのか」という背景を丁寧に見ていくことが大切です。
② 朝だけで判断しない
朝は、不安や緊張が最も強く出やすい時間帯です。
家では元気に見えても、登校時間になると、
- 腹痛
- 頭痛
- 涙
- パニック
などが出ることがあります。
朝の様子だけを見るのではなく、一日の疲労感や学校での過ごしづらさも含めて考えていく必要があります。
③ 別室登校・短時間登校も選択肢になる
「教室に戻ること」だけを目標にすると、本人の負担が強くなってしまうことがあります。
- 別室登校
- 短時間登校
- 保健室利用
- オンライン活用
など、“安心して学校とつながり続ける方法”を探していくことも大切です。
「完全登校か不登校か」の二択ではなく、その子に合った中間的な支援が安心につながるケースもあります。
④ 保護者だけに負担を集中させない
母子登校が長期化すると、保護者の疲弊も深刻になりやすくなります。
学校・家庭・支援機関が役割を分担しながら、「保護者だけが頑張り続ける状態」を避けることが大切です。
特に、保護者が倒れてしまうと支援全体が苦しくなってしまうため、“保護者を支える視点”も欠かせません。
>朝になると学校へ行けない子への対応|不安・感覚過敏・疲労との関係
家庭での関わりを整えるために役立つ学び
子どもの困りごとは、発達特性だけでなく、環境・関わり方・本人の感じ方や経験など、さまざまな要因が複雑に関係しています。
そのため、「どう対応すればいいのか分からない」「毎日怒ってしまい自己嫌悪になる」と感じたときは、保護者や支援者だけで抱え込まず、発達支援に関する知識や考え方を少しずつ学んでいくことも大切です。
実際には、
・発達障害や感覚特性に関する書籍を読む
・療育施設や支援機関に相談する
・保護者会や経験者の声を参考にする
・専門資格や研修で体系的に学ぶ
など、さまざまな学び方があります。
大切なのは、「子どもを無理に変える方法」を探すことではなく、子どもの特性や困りごとの背景を理解し、少しでも生活しやすくなる視点を持つことです。
一般社団法人 人間力認定協会の「児童発達支援士」でも、
・発達特性の理解
・行動の背景を読み解く視点
・環境調整(構造化)の基本
・保護者支援やコミュニケーション
など、家庭や支援現場で活かしやすい内容を体系的に学ぶことができます。
「完璧な支援」を目指す必要はありません。
まずは、“なぜこの行動が起きるのか”を知ることが、支援を穏やかに変えていく第一歩になります。

Q&A|母子登校に関するよくある質問
Q1:母子登校は甘やかしになりますか?
必ずしも甘やかしではありません。強い不安や感覚的負担がある子どもにとって、保護者の存在が“安心材料”になっているケースがあります。
Q2:無理にでも学校へ行かせた方がいいですか?
無理な登校刺激によって、不安や自己否定感が強まってしまうことがあります。子どもの状態を見ながら、まず安心感を回復することも大切です。
Q3:母子登校はいつまで続きますか?
期間には個人差があります。不安の強さ・学校環境・支援体制によって変化するため、「いつまで」と一律には言えません。
Q4:学校が理解してくれません
発達特性や不安の背景が十分に共有されていないケースもあります。必要に応じて、医療・支援機関・スクールカウンセラーなど第三者と連携することも有効です。
Q5:母親しか対応できない状態です
安心の対象が特定の保護者に集中することは珍しくありません。ただし、保護者の疲弊を防ぐためにも、少しずつ関われる人を増やしていくことが大切です。
Q6:別室登校は逃げになりますか?
別室登校は“安心して学校とつながるための方法”のひとつです。無理に通常教室へ戻すより、安心できる場所を確保する方が安定につながるケースもあります。
Q7:不登校になる前にできることはありますか?
小さな行きしぶりや疲労サインを早めに受け止めることが大切です。
- 朝の不調
- 強い疲労
- イライラ
- 腹痛・頭痛
など、“SOSのサイン”を見逃さないことが予防につながります。
まとめ|母子登校は“甘え”ではなくSOSのサイン
母子登校が続く背景には、強い不安や感覚的負担、失敗経験の積み重ねなど、さまざまな要因があります。
そして、その支援を続ける保護者自身も、孤立や疲弊の中で必死に頑張っていることが少なくありません。
- 「学校へ行けるか」だけで判断しない
- 安心感を回復する
- 保護者だけに負担を集中させない
- 学校と柔軟に連携する
こうした視点を持ちながら、“その子に合った形”を探していくことが大切です。
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、児童発達支援士の受講者アンケートなどに寄せられた保護者・支援者の実際の声をもとにまとめています。
子どもの特性や発達の状況、支援との相性、感じ方には個人差があり、すべての子どもに同じ変化や結果が見られるわけではありません。
支援方法や対応について判断する際は、必要に応じて医師・専門家・支援機関などと相談しながら進めてください。この記事は、保護者や支援者が理解や選択の参考にするための情報としてご活用ください。

