「こんなことで怒るなんて、わがままでは?」
「どうして急にパニックになるの?」
発達障害のある子どもと関わる中で、こうした疑問や戸惑いを感じたことがある方は多いのではないでしょうか。
しかし結論から言えば、多くの場合それは“わがままではなく、特性に基づいた反応です。
そして対応のポイントは、「止めること」ではなく「理解して整えること」にあります。
本記事では、当協会の調査報告(支援者66名の実践データ)と現場の知見をもとに、パニック・癇癪に寄り添うための「3ステップ」を解説します。
>発達障害の特性に応じた支援方策調査【調査報告書④】|人間力認定協会
目次
Instagramにて動画配信中
癇癪・パニックを起こした時の対応をテーマに、Instagramにてライブ配信を行いました。その際の動画をリール動画にて配信しております。下記よりご覧いただけます。
なぜパニックや癇癪は起こるのか?
行動の裏には必ず理由がある
子どもの行動は、偶然ではありません。「きっかけ(前)」→「行動」→「結果」という流れで成り立っています。
いわゆるABC分析と呼ばれる考え方です。
- A(Antecedent):何がきっかけだったか
- B(Behavior):どんな行動をしたか
- C(Consequence):その後どうなったか
例えばこんな場面です。
- スーパーでお菓子を欲しがる
- いつもの服が着られず怒る
これらは「わがまま」ではなく、見通しのなさ・感覚の過敏さ・こだわりといった特性が関係している可能性があります。つまり大切なのは、「行動を止める」ではなく「背景を理解する」ことです。

ステップ① 環境を整える(まず安全・安心をつくる)
調査でも最も多かったのが「環境調整(47%)」でした。
パニック時、子どもはすでにコントロールが難しい状態です。そのため、最初にやるべきは「指導」ではなく環境の調整です。
具体例
- 人混みから離れる
- 静かな場所へ移動する
- 刺激(音・光・視覚情報)を減らす
「まずは抱えて静かな場所へ移動し、落ち着くまで待つ」
ここでのポイントは「落ち着かせる」のではなく「落ち着ける状態を作る」ことです。
ステップ② 気持ちに寄り添う(否定しない)
次に重要なのが「感情受容(39.4%)」です。
パニック時にありがちなNG対応はこれです。
- 「ダメでしょ!」
- 「泣かないの!」
こうした言葉は、子どもにとって「気持ちを否定された」と感じやすく、逆効果になります。
有効な関わり
- 「欲しかったんだね」
- 「悲しかったね」
- 「びっくりしたよね」
つまり、感情を代弁することです。
「正解かどうかではなく、自分の頭の中を整理することが大切」
子どもも同じで、気持ちを“言葉にしてもらう”ことで整理が進みます。
ステップ③ 落ち着いてから伝える(行動を教える)
3つ目が「具体的な指導(34.8%)」です。
ここで注意したいのは、タイミングは“落ち着いた後”であることです。パニック中に説明しても、ほとんど届きません。
落ち着いた後に行うこと
- なぜダメだったか説明
- 次にどうすればよいか提示
- 代替行動を教える
例:
- 「欲しいときは“買って”って言おうね」
- 「投げる代わりに先生に教えてね」
このプロセスによって、「行動の選択肢」を増やすことができます。
うまくいく支援は“1つじゃない”
調査では他にも以下の対応が見られました。
- 冷静対応(25.8%):あえて反応しない
- スキンシップ(18.2%):安心感を与える
- 予防的対応(18.2%):事前に見通しを伝える
重要なのは、子どもによって合う方法は違うということです。
「答えは一つではない。試行錯誤が大切」
パニック・癇癪対応が“うまくいきやすかった家庭”の共通点
| 効果につながりやすかった関わり | 背景にあった理由や効果 |
| まず環境を整えていた | 刺激を減らすことで安心しやすくなっていた |
| 気持ちを否定せず受け止めていた | 「分かってもらえた感覚」が落ち着きにつながっていた |
| 落ち着いてから短く伝えていた | パニック中より理解しやすくなっていた |
| 大人が冷静さを意識していた | 興奮の連鎖を防ぎやすかった |
| 事前に見通しを伝えていた | “予測できない不安”を減らしやすかった |
癇癪を「わがまま」と決めつけないことが、支援の第一歩
パニックや癇癪は、決して「困らせるための行動」ではありません。
むしろそれは「困っている」というサインです。
- うまく伝えられない
- 予想外のことが起きた
- 感覚的に耐えられない
こうした背景を理解したとき、対応は大きく変わります。
>SST(社会生活技能訓練)|友だちとのトラブルを減らすために。療育施設で行われるSSTとは
まとめ|寄り添うための3ステップ
最後にもう一度整理します。
① 環境を整える→安全・安心を最優先に
② 気持ちに寄り添う→否定せず、言葉にする
③ 落ち着いてから伝える→ 行動の選択肢を増やす
子どもの行動の見え方が変わると、関わり方も自然と変わっていきます。そしてその積み重ねが、「パニックを減らす支援」へとつながっていきます。
もし今、悩んでいる方がいれば、まずは「わがままかどうか」ではなく、「この子は何に困っているのだろう?」そう考えるところから始めてみてください。
支援に迷ったときの「もう一つの選択肢」
パニックや癇癪への対応は、子どもによって正解が異なります。
だからこそ大切なのは、状況に応じて考えられる力と引き出しの多さです。
今回ご紹介したような
- 環境調整
- 感情への寄り添い
- ABC分析による見立て
といった考え方は、体系的に学ぶことでより実践しやすくなります。
児童発達支援士という学び
「児童発達支援士」は、発達障害のある子どもへの関わりを、現場視点で学べる資格です。
当協会の5万人以上の受講者の実践知をもとに、日々の支援にすぐ活かせる内容が体系化されています。子どもの特性を理解できると、関わりは変わります。
「もっと知りたい」と感じた方は、ひとつの学びの選択肢として、ぜひご覧ください。



